こころはきみによりにしものを 103(完結)

一番の君。









大事で大切な人。
絶対に自分が守らなければならない人。

「とても……大事な人なんですね。スザク、優しい顔してます」
自分の時には決して見せてくれなかった顔。
「惚気に来たのに反対に惚気を聞かされるなんて。本当に酷いです」
ユフィはつんと横を向いたがくすくすと笑いだした。
「でも来て良かった。スザク、あなたと出会って良かったと思ってるの」
父親によって強制的に決められた婚約者。その婚約さえも「父の為」「皆の為」であり、決して自分達の為ではなかった。見ず知らずの人間が婚約者というとんでもない状況に、最初から反発しあった。心が通うことなどない、そう思っていた。いつの間にかスザクに惹かれていく自分が信じられなくて、更に反抗的な態度に出た。あの時、素直になっていたらどうなっていたのだろう。

───父は自分の罪など知らずにあのままだっただろう。だからいいのだ。微笑んでいる母がそこにいるのだから。

「スザク、あの小さな男の子は元気?」
自分が決して入ることの許されなかった場所にいた男の子。スザクの笑い声を聞いたあの時もあの子がいた。あの事件の時、ニュースの画面を見てすぐに分かった。先生は悪くないと叫んでいたあの子が自分の電話に出た子供なのだと。
「もう小さくないよ。高校生だから」
「あら! やだわ、そうなの?」
「さっき言った僕の大事な人だ」
「え…………?」
ユフィはそのままスザクの顔を見る。この人はこんな顔をしていただろうか。さっきは優しい顔をしていると思ったが、今は愛おしいものを守る顔をして……。
そうなの。あなたをこんな風に変えたのはあの男の子なのね。
少しだけ後ろに下がりユフィはゆっくりと頭を下げた。
「帰ります。話が出来て良かった」
「ユフィ、有り難う。お幸せに」
「私がお礼を言うべきなのに。スザクも幸せにね。さよなら」

片手を小さく振るとユフィはその場を立ち去る。もう後ろは見ない。私が見るのは明日なのだ。



「ルルーシュ」
スザクが振り返ると戸惑ったような顔のルルーシュが出てくる。
「先生、どうして……オレが」
「来客があって君が出てこない訳がないからね」
チャイムが鳴れば玄関まで出て対応するのはいつもルルーシュだった。小さな主婦さんはこんな事まで引き受けてくれていたから。
「僕の生活は全部ルルーシュだったからなあ」
「先生」
ルルーシュの伏せた睫が揺れている。
「もう少しだけでいいから大人にならないでいてくれる? まだ守っていたい」
「オレも先生に甘えたい」
子供から思春期にかけての一番中途半端な時期に、出来もしないのに背伸びしてみたり、離れてしまったり。無駄な時間を過ごしてしまったから今からでもいい、何でもない一日を過ごしてみたい。あのごく当たり前の毎日がどれほど暖かくて胸締め付けるものだったのか知った今は何よりもそれが嬉しくて。
「…………一番大切で一番大事なルルーシュ」
「っ、先生っ」
「君に出会えて良かった」
大きく見開かれた紫水晶。ああ、この瞳に初めから引き付けられていたんだ。
「オレも先生に会えて良かっ……うわあっ!」
「ルルーシュ?」
後ろを見ればこっそり覗いているジノにアーニャ、患者達。

「スザク、お前もうちょっと場所考えてさあ」
「そう言いながら一番覗いてたのはジノ」
「いいぞーセンセ。その先もどうぞどうぞ」
「可愛いわあ、ルルくん」
真っ赤になって家に入っていくルルーシュとまいったなあと苦笑いのスザク。

カタンと受付開始の札をかける。
「じゃあ始めましょうか」

くるるぎクリニックの忙しい時間が今日も始まる。



*****************
一応完結です。

センセにもルルーシュにもあたたかいお言葉有り難うございました。年齢差もあるし、どうしようか悩んで、でも書いて良かったです。きっとこの先も皆に見守られながら過ごしていくことでしょう。
その後は番外編で。



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