Sweet hearts’ Christmas

くるるぎクリニック番外










どうしていたらわからないルルーシュはホテルのロビーに置かれたクリスマスツリーを眺める。色とりどりに飾ったクリニックのツリーとは違い、シルバーの飾りだけのシックなものだ。こういうのもいいかな、と思うが小さな子供の患者も多いくるるぎクリニックではやはり赤や青や金色で飾った華やかなものがいいだろう。
そのままロビーに視線を巡らすとクリスマスということで人々の装いも華やかに感じる。
その奥、フロントのカウンターでチェックインしていたスザク先生がこちらを見て微笑んだ。


ルルーシュの計画としては、今年のクリスマスはささやかなパーティーをしようと思っていたのだ。12月に入る頃、クリニックの外回りに電飾を飾り付けていた時にスザク先生から「プレゼントは何がいい?」と聞かれ「オーブンレンジが欲しい」と答えたら一緒にいたジノ先生が大笑いをするという場面があり、しかしまあその後ルルーシュ大満足のオーブンがキッチンに鎮座した。そのオーブンを眺め、メニューを色々と考えていたルルーシュだった。が、その計画はあっさり消える。ジノ先生達が「2人で出掛ければいいだろ、クリスマスだし」と2人を追い出したからだ。

ルームボーイの後を2人で歩いていく。小さな鞄が一つきり、だが申し訳ないほど丁寧に扱われる。一通り部屋の説明をしたルームボーイはゆっくりと頭を下げた。
「お食事の方はご予約通りレストランにお取りしてございます」
そのルームボーイが下がった後、2人は黙って部屋を見回した。
「ジュニア・スイートだ……」
いわゆる一般の客室とは違いホワイエとベッドルームの2部屋からなる広々とした空間。ベッドルームには大きなダブルベッドが設置されしかもスカイビューで夜景もばっちりである。
「……先生、これって」
「ちょっと……凄いよね。僕も聞かされてなかったからフロントで確認されたとき驚いた」


「スカイビューの部屋とイタリアンレストラン!?」
クリスマスパーティーとは名ばかりの玉城の店ではそれでもお馴染みメンバーがそこにいた。アーニャがぐさり、とハンバーグにフォークを突き立てる。
「……ルルーシュのご飯……」
「お兄ちゃんのご飯っ!!」
同じくタコさんウインナーをメッタ刺ししているのはナナリーである。その隣で「いいじゃん、2人にしてやれば」とぶつぶつ言いながらパンをちぎっているのはジノだ。せっかくご馳走を作るとルルーシュが張り切っていたのにジノが持ち込んだホテルのチケットでそれがパーである。
「あの2人は場所なんて関係なくいちゃつくんだから別に舞台設定なんて必要ないと思う」
アーニャにしては長いセリフを述べたあとにジノの皿にプチトマトを転がした。いつもなら「自分で食え!」と突っ返すジノだが今日は甘んじて受け止めている。
「お兄ちゃん、七面鳥に挑戦しようって言ってたのにぃ」
むすっとしたナナリーは相変わらず「ナポリタンスパゲティー・ナナリースペシャル」を食べている。
クリスマスらしいのはカウンターのすみっこでチカチカしているちっちゃいツリーだけだ。
「後でジェレミアさんとこでケーキ買ってくるからさあ、そう怒るなよ」
よしよしと宥めるジノに対して玉城がでもさ、と聞き返す。
「こんな時期によくそんな部屋やレストラン予約出来たよなあ」
そんな場所ずいぶん前から予約しなくては無理だろう。アーニャがそこでようやくぐさぐさとハンバーグを苛めていた手を止めた。
「ジノ、自分用だったんだけどフられたから」
「だあああああっ! 言うなっ!」
全員がふーんとジノを見る。
「クリスマス前にフられたの?」
「それをセンセ達に譲ったということか」
面白がる面々の中、カウンターの中にいたカレンが振り返った。
「それじゃ、ジノ先生今はフリーなの?」
「フリーって言うなよ……あーあ」
「じゃあ、告白してもいい?」
「はい?」
全員が硬直し、その後絶叫したのは言うまでもない。


2人で向かい合って食事というのも初めてだろう。
メインが運ばれてくる。説明を受けて頷けばウェイターは恭しく頭を下げて戻っていく。
「美味しい?」
「あ、うん……でもなんか緊張して」
確かに美味しいのだが、味わうということが出来ずにいる。周りの雰囲気にすっかり飲まれているのだ。なにせクリスマス・イブ。周りはカップルばかりである。
スザクはグラスの水を一口飲むと僕もなんだ、と笑った。
「実はこういうクリスマスって初めてなんだよ」
「……先生が?」
スザクはそれどういう意味?と苦笑するが、スザクは縁談話に事欠かない時期があったと聞いているし、学生の頃は自分よりもモテていたとジノからも聞いている。交際相手とこうしたイベントをしていてもおかしくない。
「誰とも長続きしなかったんだ。確かに好きでもない相手では長続きなんてする訳がないよね」
結局誰にも本気になれなかった。本気になったのは、自分を本気にさせたのは目の前の紫の瞳の持ち主だけだ。心から守りたい、失いたくないと願い、そして誰にも渡したくないとそう思わせたのはルルーシュ一人。
「君が相手だと───どんな事も特別になる」
ルルーシュが顔を赤くして俯く姿がキャンドル越しに揺れる。デザートのスプーンを置くとスザクは手を差し出した。
「おいで」
こうして誘うことや口説くことが、こんなにも胸が高鳴るものだとは知らなかったよ。

初めての時は羞恥の顔しか見せなかったルルーシュが近頃では妖艶な顔をちらりちらりと見せるようになってきた。
セックスというのは2つの体を繋げるということだ。それがこんなにも深く何もかもを解け合わせるものだとは。
ずっと声を押し殺しているルルーシュにスザクが低く笑う。
「ここでは大丈夫だよ」
「あ……」
それでも自分の指を噛んで吐息をこらえている姿はひどく艶めかしい。細い首やうなじをキスで埋め尽くす。
ルルーシュから漏れる喘ぎ声は甘さを伴い一つの言葉を紡ぎ出す。
───スザク
いつも「先生」と呼ぶその唇が自分の名を呼ぶ。
それだけで僕がどれほど幸せになるか君は知っているだろうか。

先生はこうやって抱き合う時に顔が変わってくる。優しいことは変わらない。だが時々むさぼるように求めてくる。でもその求めにまだ応えられない事の方が多い。あんなに傍にいたくて、でも離れて、こうして誰よりも近い場所に今自分はいる。
───ルルーシュ
切羽詰まったように耳元で囁かれるその声が涙が出るほど幸福感を覚えるんだ。傍にいてもいいとそう言われているようで。

「先生、オレは」
「愛してるよルルーシュ」
「っ! オ、オレが今日は言おうと……」
「じゃあ、言って」
笑いながら体を絡ませ、ルルーシュは小さな声でそっと告げる。スザク、愛してる。その一言が再び大きな律動への始まりの合図となる。

幸せなクリスマスを。






**********
帰ってきたら大騒ぎ。
この後は後日(新年)から始める番外編で。



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