お誕生日おめでとう!  (くるるぎクリニック番外)

お誕生日おめでとう!









ジェレミアの店「ボーヌール・オランジェ」のデコレーションケーキの中で一番大きなそれはイチゴなどのフルーツを山盛りに乗せていた。その真ん中には「ルルーシュくん、たんじょうびおめでとう」と書いてある。飾られたフルーツに負けないほどの色とりどりのロウソクに火をつけたスザク先生が目をまん丸にしているルルーシュの背中をそっと押した。
「さあ、消してごらん」
ローソクの火が消えその場で拍手がわき起こった。


秋が深まり冬が訪れる頃からくるるぎクリニックは忙しくなってくる。風邪、インフルエンザ。患者が増えてくるのだ。受付終了の札を入り口にかけても発熱している子供を連れたお母さんや咳込んでいる人が「すみません」と来院すれば「いいですよ」と診察してしまうスザク先生なのでさらに診療時間は延びてくる。ジノもアーニャも咲世子もそんなこと当たり前だと同じように対応してくれるのがスザクにとって本当に有り難かった。そして一番嬉しいのが病院の上の住居に戻ると暖かな空気がいつだってスザクを包んでくれることだ。
「あ、せんせい!」
「先生、お仕事終わり?」
ルルーシュとナナリーが飛んでくる。2人の頭を撫でるこの時がスザクにとって一番至福の時。

「なるほど、おでんだったんだ」
大きくて重たい土鍋はルルーシュでは運べないのでスザクがテーブルの中心に置いた。この土鍋も最近買った物の一つだ。鍋、なんて一人ではしない。これも家族がいるからだ。しかも大きいのはジノとアーニャがしょっちゅうここでご飯を食べていくから。今日も当たり前のようにルルーシュは2人のお茶碗やお箸を並べている。
「旨そうな匂いしてたもんなあ」
「ホント?」
「うん、今日は何だろうって思ってたんだ」
ルルーシュが二階でぱたぱた動く音は診察しているとよく聞こえる。アーニャがひくひくと鼻を動かして「今日はここで食べていく」と宣言することは珍しいことではない。
そして今日はおでん。蓋を開ければ美味しそうなおでんがぎっしり。
「クリーニング屋さんのおばさんに教えてもらってきた」
へえ、と湯気の立つ鍋をのぞき込むスザク先生は嬉しそうだ。そしてそれ以上に嬉しそうなのはルルーシュだ。とにかく小さい主婦さんとしては大好きな先生が喜んでくれるのが一番嬉しい。ということを知っている、商店街の女将さん軍団で作られている「ルルーシュくんを応援する会」はいつも全力でバックアップ!そのおかげでルルーシュのレシピもどんどん増えていく。


「おいスザク、何だよこの印」
朝、診察の準備をしていたジノがカレンダーを不思議そうに眺める。
「ルルーシュの誕生日なんだよ」
「ほお。で? どうするんだ?」
「どう、ってジェレミアさんのケーキを買って……」
「玉城の店を貸し切り」
後ろからひょことアーニャが顔を出した。
「お、それ賛成! パーティーだ! よし、すぐに場所を押さえよう」
「いつでも空いてる」
「……アーニャさん、それキツい。しかしルルーシュの誕生日か。いつも世話になっているし」
「それもどうかと思う」
「……」
自分を放ってあれよあれよと決まっていく事にスザクは苦笑を禁じえない。だが皆もルルーシュの誕生日を祝おうとしてくれてるのを感じて幸せな気持ちになる。
あの子の存在は自分から切り離せないものになっているのだ。ここまで深く繋がるなどと一体誰が考えただろう。一人でいるよりも一緒にいる方が心地いい。

「ルルーシュのバースデーケーキだと?」
ボーヌール・オランジェの店員はすぐに店長を呼びつける。
「一番でかいサイズだな。10号だ」(ちなみに直径30センチ)
「そうですね」
「フルーツを山盛りだ。ルルーシュはイチゴが好きだから」
「スポンジの間にもたっぷり挟みましょう」
「よし、ジェレミアそれでいくぞ!」
「かしこまりました!!」
相変わらずどっちが雇い主なのか分からない。玉城の店も即予約OK。C.C.の一声で商店街中にその話はあっという間に広がり、いつの間にか街中あげての騒ぎとなっていく。

「なんか、皆おかしいんだよね」
学校帰り、ルルーシュがぽつんと呟くがカレンもリヴァルもふーん、としか言えない。一応内緒でということになっているのだ。だが普段おしゃべり好きなおばちゃん達が隠し通せるはずがない。
あらあら、ルルーシュくんあのね、あらダメよ、嫌だ、そうだったわ
ジノ先生もアーニャさんも咲世子さんもいつも以上ににこにこ。スザク先生だけが後ろで苦笑している。
「僕には何も言ってくれない……」

12月に入りクリスマス色に街が染まっていく。クリニックもナナリーの提案により電飾に彩られている。だがルルーシュの心は沈んだままだ。
皆、何を隠しているんだろう。
最近ジノ先生達は食事をしていかなくなった。
どうしてだろう。
俯くルルーシュにリヴァルとカレンが「あのさ、」と言いかけた時スザク先生が走ってきた。


「誕生日、おめでとうルルーシュ!」
玉城の店はいつも以上ににぎやかで、あちこち飾り付けられている。大きなケーキをカレンのお兄ちゃんとジェレミアさんが運んできてローソクを飾ってくれた。ローソクの火が消えたあと、ジノが電気をつけたその部屋の真ん中では涙をこぼしているルルーシュがいた。

「ルルーシュ!?」
「だ、だって……み、んな何にも言わない、から……もう、キライになって……」
泣きじゃくるルルーシュをスザクが抱きしめてくれる。
「ごめん、ごめんねルルーシュ。内緒にして君を驚かそうとしていたんだよ」
どうやら“それ”をやりすぎたらしいと反省中の商店街の皆が先生の後ろでしゅんと俯いている。確かにまだ8歳の男の子に対して大人気のない行動だった。パーティーをやるぞ!と宣言しておくべきだったのだとようやく気付いた。子供には隠すよりも楽しみにさせたほうが断然いいのだから。
涙を拭いたルルーシュに笑顔が戻ると全員が安堵の息をはいた。それからはもうお祭り騒ぎだ。
お料理もケーキもとびきり美味しくてその場の皆も笑顔になる。

騒ぎ疲れて眠ったナナリーを背負ったスザク先生とルルーシュは手をつないで家へと帰る。
「ごめんね、ルルーシュ」
ううん、とルルーシュは首をふる。騒ぎの間中、皆が交代でルルーシュにごめんとおめでとうを言いに来てくれていたのだ。
「僕ね、一番怖かったのが……」
「怖い?」
「先生のところにいるのが駄目になったのかと思って」
「そんなことは絶対に無いよ! 皆が駄目だって言っても僕が反対するから!」
きょとんとしたルルーシュがその次にとびきりの笑顔をスザクに見せる。

僕がプレゼントもらっても駄目なのになあ。

「先生?」
「有り難う、ルルーシュ」
「僕が言うんだよ?」
「うん、でも言いたい。あ、そうだプレゼント家にあるからね」
「わあい!」





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結局一番おいしい思いをしているのはどう考えてもセンセだ。

ルルーシュ、誕生日おめでとう! 今年もお祝いできて本当に嬉しいです。


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