「Happiness of beginning 」 (ちびルル 5歳・番外)

[Happiness of beginning ]









ブリタニアでは新年の大騒ぎが始まっている。12時に花火が大きく花開き、国中あちこちでお祭り騒ぎ。
そんな中、人々の騒ぎなど遠い世界のような空間がアリエスにあった。

暖炉の傍、炎だけが灯りとなって穏やかに部屋を包む。

ルルはマシュマロを浮かべたココアを両手で包み込んで父の膝の上にいる。同じくナナリーもはちみつ入りホットミルクの大きなカップを持って母の膝に座っていた。カーテンの閉まっていない窓から時折上がる花火が見えた。
「わあ、またあがったよ!」
「きれいっ」
「うむ、見事だな」
今年の花火はまた一段と大きく開くものが多かった。

父上と母上と一緒に眠りたい。

ルルとナナリーのそんな願いにより皆でこうして部屋にいる。最も、ルルもナナリーも当然のように「スザク」と「カレンちゃん」も一緒がいいと言い張り、暖炉の前にラグを敷きクッションをいくつも山盛りにして簡易ベッドをこしらえて皆でゴロ寝となった。世界超大国の皇帝がゴロ寝をするなど誰が想像出来るだろうか。こんな事をしたことがないと言いながら一番楽しそうなのは実は皇帝陛下である。今夜は特別だとルルとナナリーとお風呂にも入り、添い寝まで叶うのだからこれは皇帝にとって一番のご褒美になった。
───当然だがこれをする為に相当な仕事をさせられたのであるが(ここぞとばかりにナイトオブワンと特務総監が山盛りにしたのだが気付かない)そんな物は障害にもならない。夕方満面の笑みでアリエスに現れた皇帝をアーニャが激写したのだが、その余りに崩れきった顔に即公開禁止が言い渡された。

「ほら、ルルまた上がったよ」
「わああっ」
スザクの声にルルも歓声を上げる。いつもと違う夜にルルもナナリーもテンションが上がりっぱなしで眠くないとお目目はぱっちりしたままだ。しかしながら明日は朝から新年の行事が目白押し。皇帝として挨拶もある。ルルとナナリーも出席しなければならないセレモニーもあった。
「そろそろお休みしましょう」
母の声に仕方なく横になってはみるが、いつものベッドではないし、父と母もいるし、スザクもカレンもいるというこの状況ですんなり眠れるわけなどない。
「ルル、ナナリーいらっしゃい」
母の膝を枕に小さな兄妹が横になると、母はそれぞれの髪を優しく撫でながら歌い始める。眠りを誘うその歌声にルルとナナリーはいつの間にか夢の中へと誘われ、その眠りを守るようにスザクとカレンがそれぞれの主をブランケットで包み込んだ。

このまま朝まで───。



「眠れないわよっ! まーーったく、どうしたらいいものかしら」
ふん!と腰に手を当てているのはマリアンヌだ。睨みつけられているのは「ぐわあぐわあ」と高いびきで眠っているシャルルである。気持ち良さげに眠っているのはこの方だけで、やれやれと溜息をついているのはスザクとカレン。目をこすって座り込んでいるルルとナナリー。
「体の向きを変えれば止んだりしませんか?」
「そおねえ……やってみる?」
スザクとマリアンヌの2人で仰向けに眠っていた皇帝を右向きにしてみた。するとピタリと止んだ。
「あら、止まったわ」
5人がごそごそと元の位置に潜り込んだ途端に再びいびきが始まった。今度はカレンとマリアンヌの2人で反対に転がしてみる。すると一旦は止まるのだがすぐに「ふごお、ふごお」と始まるのである。
「……もう皆ベッドで寝ましょう。シャルルはここに転がしておけばいいわよ」
「でもマリアンヌ様、起きたら陛下のことなのでごねませんか?」
カレンの意見にスザクも頷く。とにかく念願だった添い寝が出来るとあって大喜びしていた皇帝だ。
「でもこれでは誰も眠れないわよ」
確かに。
全員でしばらく眺めていたがいびきは止む気配すらない。ルルが小さな手でぺしぺしとクルクルロールを叩き「ちちうえ~」と声をかけるがこれも空振りに終わる。
「……ちちうえ、うるさい……」
ルルの本音の呟きにスザク達も吹き出す。まさか溺愛の愛息にこんな事を呟かれているとは思わないだろう。マリアンヌも眉をしかめて夫を眺めていたが、ふいにくすりと笑った。思わずスザクとカレンが一歩引いてしまうほどの笑みである。この笑みを浮かべた時“閃光のマリアンヌ”が発動される(ん?)。
「理由をはっきりさせておけばいいのよ」


静かなベッドの中でルルはスザクにくっついた。まだベッドの中はひんやりと冷たい。
「すぐに暖まるからね」
「スザクがあったかいからルル、だいじょうぶだもん」
スザクはいつだって暖かい。大きな手は抱っこしてくれる時も手を繋ぐ時もいつだってあったかい。それにスザクの傍にいるとルルはなんだか心の中もぽかぽかしてくるのだ。今も本当にあったかい。
スザクの腕の中は暖かくて安心出来て───悪いことの方が全部逃げていってしまうようなそんな気がする。
ルルの小さな手をスザクが握りしめるとルルもぎゅと指を絡めてくる。この手がある限り、ずっと……。
次の日は小鳥の声と太陽の光で目覚めた。
新しい年の始まりの初めての朝をスザクとルルは一緒に迎える。
「おはよ、スザク!」
「ルルおはよう」
これは2人が一緒に迎える一つの朝にしか過ぎないけれど、きっと光輝く朝の一つ。

ふにょ。
「なんたるぅううううっ!!」
抱きしめたルルを押しつぶしてしまったのかと飛び起きた皇帝はたった一人で眠っていたことを知り、手にしていたクッションを放り投げて激怒!したのであるが、マリアンヌから見せられた撮影映像を見て───自分の大音量のいびきと、ルルとナナリーの「ちちうえ……うるさい……」「おとうしゃま、しじゅかにしてくだしゃいっ、んもお~」に絶句、すごすごと頭を垂れた。
その後、皇帝が「ルルと添い寝」についてごねることはなかったという。
厳つい顔で新年の演説をしている皇帝の後ろで笑いをこらえているラウンズ達が話題に上ったが、平和でいいじゃないかと相成った。守るべき皇帝の後ろで騎士が笑顔でいるのだ、こんないいことはないじゃないか。

勿論、真相は皇宮内の機密事項である。


相変わらず人気なのは小さい皇子と皇女だ。それぞれの騎士と一緒に並んだ図は特に人気だ。
手を振って戻るルルをひょいとスザクが抱き上げる。
「お疲れさま、ルル」
「ルル、つかれてないよ?」
そう言ってルルは笑うがルルが一生懸命頑張っているのは分かっている。少しでも君を助けることが出来るのならこんなことぐらい何でもない。ルルがにっこり笑いスザクの頬にちゅっとキスをした後ろ姿をアーニャがカメラに収めた。
その画像はこの先、何度も流れることになる。

「スザク、だいすき!」
「僕もルルが大好きだよ」










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