ぼくのこころに、きみがくる 8.

恋煩いも病気のうち。








「……俺も高校生だったらなあ」
ジノが何やら呟いているがスザクとアーニャはそのままスルーしておいた。
「…………お前等、構えよ!」
「忙しいんだよ!」
「すみません」
スザクとアーニャは二人で点滴の用意をしている。
「スザク、翼付23Gが少ない」
「まずいなあ、足りそう?」
「今日はいいと思う。頼んでおく」
ここのところ胃腸風邪でやってくる患者が激増しているのだ。しばらく黙々と動いていたが落ち着いたところでジノを振り返る。
「で? 何? 高校生?」
「改めて聞き返されると恥ずかしいだろうがっ!」

カレンと二人きりで会うようになって、いかに自分が無駄に年を重ねてしまったのかと感じるのだ。初々しく、何にでもうれしそうに笑い、小さなことにも戸惑ったり、驚いたりしているカレン。ああ、こんな事にそういう感想を持つのか、と思うのと同時に、同じ年頃であれば共感できたのだろうかとふと残念に思ってしまう。

「それは……ルルーシュだって同じだよ。でも僕は感心してることの方が多いかな」
同じ物を見ても違うことを思うのは、それは違う人間だからであって年齢や経験はあまり関係ないのではないのだろうか。
「それに経験があって良かったな、と思う事の方が色々……ね?」
「突っ込まないぞ! 絶対に突っ込まないからな!」
何だ、残念とスザクは笑い、診察室の窓から外を見る。駐車場にはすでに何台かの車が停まっているし、自転車も多い。まだ時間には早いが受付を開始しようかと咲世子とアーニャに告げれば、もうすでに用意されていたらしくすぐに始まった。
「どっちにしても時は戻せないしね。この前ルルーシュとナナリーと話していたんだけど僕がここで医者をしていたからあの二人に会うことが出来た。守ることも出来ている。今までの自分の選択が間違っていなかった、と思えるんだ。結局……ジノも、ってことだろ?」

大事な人に会う為に進んできた道だったとしたら。

「……そう考えればそうか」
「今までフラれてきた事に意味があって良かった」
「アーニャ!」
受付された患者のカルテをアーニャがスザクの机の上に置く。すでに多いそれにスザクも思わず苦笑を漏らし、親友二人の顔を交互に眺める。
「では午後もよろしく」
頷いたアーニャが待合室へ歩いていくその後ろ姿を見ていたジノは、自分も動くかと立ち上がった。
「何かラクになった気がする。サンキュ」
「どういたしまして。お大事に」
ジノはスザクを振り返り、いつもの笑顔を見せた。



教室にやれやれという顔で戻ってきたルルーシュをリヴァル達が「お疲れ」と迎えた。下級生から告白され、断ったら泣かれてしまったのだという。
「好きな人がいるからって言っているのに引き下がらないのは何故なんだろう」
「自分の方が上だって思い込んでいるのよ」
「あげくに、カレンと付き合っているのかって騒ぐし」
リヴァルとシャーリーが同時にごほっとジュースを吹き出すが、カレンはまたぁ?と顔をしかめただけだ。
「前の学校の時なんて許嫁にまでされちゃったわよね?」
「いいいいい許嫁!?」
ただ一緒にいるだけ、それだけでそんな風に言われるのはどこも同じだなとルルーシュは思う。
「とりあえず、そこのところは間違いだと訂正しておいた」
「あんた変なことまで話していないでしょうね。大体ルルーシュは頭いいのに、ホントそういうところは何かずれるんだから」
「お前もジノ先生が関わると豹変する」
「わたしの事はいいのよっ!」
途端に顔を真っ赤にさせてあわあわと慌て始めるカレンにそれ見ろという顔をルルーシュは見せ、シャーリーとリヴァルに同意を求めれば二人もこくこくと頷く。
「カレン、雰囲気変えるんだもん」
「だって! だって……先生……大人だし……ルルーシュは!? やっぱり大人になりたいでしょ?」
ルルーシュは少しだけ黙ったあとでカレンの顔を見て首を振った。
「そう思ってた時もある。先生と並びたいから大人になりたいって思ってた。だけど、それはオレの思いこみだったんだ」
先生はどんな時も「子供扱い」などしていなかった。いつでも一人の人間として見ていてくれた。
「ジノ先生はお前を子供扱いするのか?」
「……してない」
「それならいつものカレンのままでいいんじゃないのか?」

ああ、そうかと力が抜けた瞬間だった。






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