ぼくのこころに、きみがくる 21.(完結)

みんなが幸せ。







 その日は本当にいいお天気だった。前日まで心配されていた雨雲は、商店街の軒下にぶら下がったてるてる坊主達に「お願いだから、明日は来ないで」と拝み倒されたに違いない。週間天気予報でもずっと雨マークだった日曜日は昨夜になってお日様マークに変わったのだ。
「本当に良かったわ」
 カレンは控え室になっているクリーニング屋さんでドレスの着付けをしてもらっていたが、母の言葉に笑顔で頷く。最後にホワイトローズのヘッドコサージュを整えてもらった。 時間になり、部屋を出ようとしたカレンは振り返って頭を下げる。

「お母さん、おねーちゃん。有り難う」

 母はうんうんと頷き、義姉であるC.C.はよしよしと頭を撫でる。
「何にも心配はしていないからな。何かあったらジノを蹴り飛ばしてやるから、すぐに来い」
「……うん、ありがと」
「カレン綺麗よ」
「……お母さん……」
 母は娘の肩をそっと叩いた。
「頑張れカレン。私の娘」
クリーニング店の外には兄のナオトと並んでジノが待っていた。
「ジノセンセ、よろしく」
「いやいや、こちらこそ」
 ぺこぺこと互いに頭を下げている二人に魚屋の主人は何してるんだい、と笑って突っ込んでいる。
 
 人前式、になったのだ。

 日頃お世話になっている人達の前で誓いを立て、列席者全員に「証人」になってもらいたい。その申し出を商店街中喜んで受けた。それからは大騒ぎだった。そして今日、皆の願いが届いたように、頭の上には青い空が広がった。

 ほっそりとした花嫁姿でカレンは現れる。

 若く、殆ど何も経験していないカレンをこのまま自分が貰ってしまってもいいのかと、ここにきてもまだ悩んでいたジノは、優しく微笑んだカレンを見て決意を新たにする。どんな決意か。
───絶対に誰にも渡さない。カレンは俺のだ。
 こんな事を思わせたのはまさしくカレンのみ。

 そのカレンはジノの腕を取ると、揃って商店街を歩き始める。今日のこの時間だけ車の通行を止めた道の真ん中を二人は歩く。カレンはブーケを持っていない。両側に並ぶ人々が皆花を持っており、それを受け取りながらジノとカレンはブーケを作っていくのだ。
 色とりどりの花を一本ずつ受け取りながらカレンは綺麗にまとめていくが、ジノは何とかまとめている、という感じで皆から笑いが出ている。
「ジノ先生、それはどうなんだい?」
「いや、まあ愛嬌でさ」
「カレンちゃん、綺麗だねぇ」
「ありがと、おばちゃん」
 渡されるのは花、だけではない。同時に祝いの言葉、祝福の思いも受け取っていく。あっちからもこっちからも手渡される花を受け取る為にカレンはミニのドレスにしたのだが、これが非常に似合うのでジノ先生は鼻の下が伸びっぱなし。商店街の一番端はくるるぎクリニックだ。駐車場に簡易ながらも一応席をしつらえ、スザク達が二人を迎えた。
「凄いな、それ」
 ブーケというよりも花束、といった状態にスザクが笑い、仕方ないだろうとジノは苦笑する。カレンも大きな花束を抱え込んで笑っている。
「さて、では誓いの言葉をどうぞ」
 立会人代表のスザクが促せば、ジノとカレンが頷きあう。
「俺はカレンが大好きです! だから、カレンを幸せにすることを誓います!」
「私も、ジノ先生が大好きです! 私も幸せに……ジノ先生に幸せにしてもらうことを誓います!」
 笑いと歓声、拍手があがる中、ルルーシュが「おい」と呟く。そのルルーシュをスザクが振り返った。
「ルルーシュ、僕も───って、ジノ!?」
 スザクはジノに引っ張られ、ルルーシュもカレンに腕を掴まれる。
「お前らも誓え! 人前式だ!」
「ちょっと待ってよ! 今日はジノ達のっ!」
 アーニャがジノ達の誓約書の横にもう一通誓約書を並べた。ナナリーもにこにこしながらペンを持ってくる。押しつけられたペンをスザクは受け取りながら、ぐるりと見回した。
「……皆でハメたね?」
 その場の全員がにんまりと笑顔を見せる。カレンは自分が抱え込んでいた花束をルルーシュに手渡して笑っている。
「はい、これルルーシュのね」
「…………どうして二つも作っているのかとは思っていたんだ…………」
 予定ではジノ先生だけが作って、ここに来てカレンに手渡すはずだった。皆が手渡したいのだろうとそう思っていたのだが。
 ほらほらと背中を押されてスザク先生と並ぶ。
「よし! 今から私が立会人代表だ! おい医者、まず誓いの言葉だ」
 C.C.が前に出てきてふふふと笑いながら、さあ言え、早く言えとせっつけばスザクはさらりと答えた。
「僕を幸せにしてくるのはルルーシュしかいないよ?」
 ルルーシュは真っ赤になって固まるし、周りは呆れ顔だ。皆がなんと答えようかそう思っていると、小鳥が一羽、駐車場脇の木に止まりさえずり始める。美しく鳴いて最後に高く歌を奏でると空高く飛んでいく。全員でその鳥の行方を追い続け、姿が見えなくなるとC.C.がナオトの手を借りて恭しくお辞儀をする。
「この四人の、今日の誓いに賛同いただける方は、拍手を!」
 大きな拍手が巻き起こり、それはいつまでも鳴り止まなかった。
 永遠の幸せを。

 六年後、幸せな場所はまだそこにある。その場所の名はくるるぎクリニック。今日も大勢の患者たちが訪れる。
受付には黒髪の青年がやさしく微笑み、 ピンクの髪の看護師もくるくると動き、金髪の背の高い医師も元気に笑う。
 そして、診察室には穏やかに笑う医師。
「こんにちは、風邪かな?」




****
完結です。
皆で幸せ、みんなで笑顔。





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