ずっと君をさがしてた 68.

私の天使様










「とりあえず…………ごめんなさい」

仕方なく、あくまで仕方なくスザクはぺこりと頭を下げた。現在、ランペルージ家リビングである。向かい合うソファに座るのは目に青たん作った星刻。そして、反対側のソファには後ろからがっちりとルルーシュを抱き込んだスザクがいた。
「……スザクいい加減に離せ」
「イヤだよ! 今日は先輩不足なんだから! あーしかも違う匂いになってる……」
ルルーシュの髪に顔を埋めて鼻をひくひくと動かしてはスザクはぶつぶつと呟いている。先輩のいつもの香りではない。
「髪ってすぐ匂いつくよね……」
おそらくは、この目の前の星刻という名の男の車の芳香剤なのだろう。一応、事の顛末は教えてもらったが、どうにもイライラは簡単には収まりそうもない。

車のボンネットの上に飛び乗ったスザクの姿にルルーシュは目を見開いて驚いた。一瞬ときめいた事は黙っていようと思う。
「先輩!」
ドン!と足で車体を蹴り飛ばす。
「僕のルルーシュに手を出すな!」
「スザク! 待て、話を聞け!」
ここでもまた「僕の」という言葉にほんわか気分が上昇したルルーシュだったが、なんとか立て直す。
「スザク、待て。そんなんじゃないんだ───あ……」
止める間もなく、スザクは驚いて車から出てきた星刻の胸倉を掴んで、そこで一発ぶちかます。当然のことだが辺りは騒然。後で話を聞いたシャーリーはその前に帰って良かったと心底思ったのだが、アーニャはしまったという顔をしていた。そうして出来あがったのが星刻の青たんである。目の周りにばっちりついたそれにマリアンヌが差し出した保冷剤を押し当てている最中である。

「ホント、アンポンタンよねえ」
マリアンヌは腰に手を当ててふう、とため息をついている。どうして、こう、男というのは馬鹿ばかりなのか。そんなマリアンヌの横にはナナリーと、そして遊びに来ていたリーファが立っている。まさか、ここにリーファがいるとは思いもしない星刻はただただ茫然としているだけだ。

こ、こんなところでお会いできるとはっ!私の天使さま!

リーファはただ仲良くしているナナリーの家に遊びにきただけである。タレ目のパンダの縫いぐるみポシェットが、リーファを守るように首を傾げていた。
「……あの、大丈夫ですか……?」
私の心配を!と変な感動をしているので即返事が出来ない。こういうところが星刻のおかしなところである。仕事となると、相手側の出方の観察に余念がなく、突っ込めるところにはがんがん押していくというのに!
「……どうしてここで気の利いた言葉が出ないのかしら……?」
「星刻さんですもの、お母様」
母娘は感動しているアンポンタンの向かいに座る、この家の長男とその恋人を眺める。うりうりいちゃいちゃしている2人だ。あそこまでしろとはこの唐変木には言わないが、さすがにボキャブラリーが乏しすぎるし恋愛のメーターが簡単に振り切ってしまう容量しか持たないというのも問題だ。
ようやっと「大丈夫です」と一言返す星刻を見て、スザクはこういうことかと理解した。

「なーんだ、ただ臆病なだけなんだ」
「き、貴様、言うに事欠いて……」
行動あるのみ、のスザクにしてみればこれはとんでもないチキンにしかみえない。
「臆病なんですか?」
可愛らしく首を傾げるリーファは無邪気で可愛い。もっともそれが無垢な問いかけな分、星刻にぐさぐさと突き刺さるのだが。
リーファの問いにナナリーがそうなんですって、と笑った。
「星刻さんは臆病だから、好きな人に好きって言えないんですって」
まあ!と頬をおさえたリーファだったが、もう一度星刻をみて笑う。
「でも、その人が大事だから、臆病なのではありませんか」

「あらっ…」
「まあ」
感心するマリアンヌとナナリー。思わずルルーシュとスザクも感嘆の声を上げた。
「へえっ」
「凄いな」

「て、天使様っ」
天使、と呼ばれたリーファは不思議そうな顔をする。
「あの、天使って」
「私には天使なのです! その清らかなお心、御姿!」
そうじゃないだろう!と4人は思う。そこで何故「大事な人はあなたなのです」と言えないのか!
近づくかと思われたその溝は星刻が「天使、天使」と叫ぶことにより、なんとなくまた開きつつあるように思えるのだった。
「だからアンポンタンって言うのよ……」


「悪かったなスザク」
「ううん、いいよ。それより車……修理だよね?」
あんなもの、星刻に出させればいいとルルーシュは笑う。元はと言えばあの馬鹿が自分の問題を解決できずに持ち込んで、人を振り回した結果だ。その星刻はマリアンヌ達からやいのやいのと言われ、あこがれの天使様を家に送り中だ。送り狼になる心配は皆無なのがちょっとどうなの?という感じも無きにしも非ずなのは仕方ない。
「先輩もメールとかで教えてくれればいいのに」
それはルルーシュだって考えた。だが、文章では気持ちがきちんと伝わらないような気がするし、それになによりも。
「……お前の顔を見て話したかったんだ! 本当なら放課後に説明に行こうと思っていたのに、あの馬鹿が正門前に早くから現れて……」
朝から触れることも出来ずにさみしかったのはルルーシュも同じ。
「先輩……」
ようやくしっかりと抱きしめることが出来て、スザクもほっとする。

アーニャから立て続けに送られてきた画像。
並んで歩く2人の姿に───一瞬で血が沸騰した。
どこかでこんな絵を見たような気がした。向き合う2人、ルルーシュだと思うのにその姿は黒いイメージしかない。でも確かにあれはルルーシュだと、そう……自分は確信していた。自分だけは。
いつだって隣にいたかったのに、どこで間違えてしまったのかと何度も何度も、あれから後悔しかなくて、だからもし、もしも次があったなら絶対に間違えない、ルルーシュの隣は僕だけのものだとはっきり伝え……。
「……あれ……?」
抱きしめていたルルーシュが顔を上げる。
「スザク」
「御免、ちょっと……」
「お前、またか」
「うん……せんぱ、ルルーシュの隣に誰かが立つのがイヤで……」
そのまま力を入れた腕をルルーシュが軽く上から叩く。大丈夫だ、とそのたびに何度もこうしている。
「オレはお前の隣以外、誰の横にも立つ気はないから」
「……うん、僕も、僕もルルーシュ以外を選ぶことは無いよ」
あんな日はもう巡ってこなくてもいい。
よく分からないまま、それでも強い気持ちと一緒にスザクはルルーシュの細い体を抱きしめた。



******

少し早いですが、あの日の青い空に奉げます。





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 31

面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)