プレゼント 前篇

ずっと君をさがしてた 番外 社会人編 












この春、新入社員として入社してきた枢木スザクは人気があった。
仕事は申し分ないので先輩からも上司からも可愛がられる。人当たりもいいのでクライアントにも好評だ。その上整った顔で、これみよがしにではなくさりげなく優しいので女性社員からも人気が高い。童顔で可愛いと年上の女性からも受けがいい。という理由で、飲み会だ、合コンだと誘われる率は社内でもトップであったと思う。スザクは酒類はいける方だ。部署全体でという場合には参加をするし、得意先のパーティーにも快く出席。男性同士の飲み会にも行く。ただし、女性主体の飲み会や合コンの類には全く参加をしなかった。
「お酒の席だと、女性にはどんな話をしたらいいのかわからないので」
にっこり笑顔でそう答え、理由は述べた、だから参加しませんという防衛線を張られてしまうと、今度はこちらからは出にくくなる。それでも初めのうちは無理に参加させようと躍起になる子達がいたのだが、それも初めのうちだけだった。何せ、しつこいと冷たい視線を送られ、その後の態度をガラリと変えられてしまうからだ。その変わりようといったら本当に泣きたくなるほどであったので、現在は誰も無理強いしない。

葉を落とした街路樹は、今は小さな電球をまとう。煌びやかなイルミネーションは否が応でもクリスマスムードを盛り上げる。
「おい、枢木。クリスマス、可哀想な一人の俺に付き合えよ」
「すみません、先輩。僕は予定があって」
フロアの全女性社員が一斉に耳をそばだてる。それはそうだろう。
───恋人がいる!?
一番、盛り上がるこの日に約束をしているとならば、これはもう本命としか考えられない。
いったいどんな女性なのか。その日から社内のあちこちでこの話題が繰り広げられることになった。
当日、スザクは4時ごろから仕事の片付けに入っていた。いつも以上の仕事のペースに注目の的となっているが、スザクは周りに目もくれず自身の仕事に集中している。
───彼女だわ、絶対!
5時の終業合図と共にスザクは鞄を持って、走り去るようにフロアを飛び出していき、その後を追いかけるように女性社員の団体も飛び出していく。あっという間に人気の無くなったフロアに、上司は苦笑い。


寒いというのにスザクはカフェの外、テラス席に座っている。しかし、本人はまったく寒さなど感じていない様子で、目の前におかれていた湯気が温かそうなコーヒーカップは口もつけられないまま冷めていく。それよりも舗道を行き来している人々から視線を外すことはない。時折腕時計に目を落とし、その後は再び舗道に目を向ける。
(どんな人なのかしら?)
(さあ……? どんなアプローチにもなびかなかった枢木くんだから、すっごい美人じゃない?)
(可愛いタイプかも)
こそこそと話をしているのはスザクを追いかけてきた女性社員達だ。
自分達の飲み会も集まりも全て蹴っているこの男の彼女が見てみたい。
「あ、スザク~」
女性の声が聞こえ、全員が注目。そこには手を振る紅毛の美女が立っている。スレンダーなワンピースに包まれた体はコートで隠れていてもナイスバディであることが、はっきりと分かった。

すっごい、美人!

全員が(負けた)とそう思った彼女は、一人の男性と腕を組んでいる。それがまた絵に書いたような超美形のイケメンだ。
うわっ!と思った瞬間、スザクが立ち上がり電光石火の如く2人に向かって走る。
そりゃ、彼女が違う男と腕組んでいたらね~と思っていた皆の前で、スザクはあろうことか女性───カレンの腕を掴みあげた。
「カレン先輩、何してるんですか!!」
「何じゃないわよ、だってルルーシュナンパ避けになるんだもん」
「僕のルルーシュの引き立て役になっているだけって気づかないんですか?」
「なんですって!! ちょっとスザク、そこ座れ!」
「お前たち、いい加減にしろっ!! 往来の真ん中で何を騒いでるんだ!!」
ぎゃんぎゃん騒いでいた2人は超美形に叱られて、しゅんとなるが、次にはスザクががっしりとルルーシュを腕の中に抱きしめた。
「ルルーシュ! 久しぶりだね」
「……一昨日会っただろう?」
「何言ってるの? 5分でも離れてたらもう気が気じゃないのに!」
うりうりとマーキングよろしく、くっついているスザクに対し、慣れた様子でよしよしと頭を撫でている超美形。
───ワンコと飼い主。そんな形容詞が全員の頭の中に浮かんだことだと思う。
「あんた、そういうトコ、全然変わらないわね……まだこんな状態なの?」
高校の頃、休み時間になると「先輩、先輩」とルルーシュにまとわりついていたスザクそのままだ。
「社会人になっても一緒なんて……ルルーシュも何か言った方がいいわよ?」
「何を言うんだ?」
じゃれつかれているルルーシュはいつもの事だと、頭を傾げている。それに何といってもバカップルなので、何をどう言っても変わらないのも同じだ。
そして、その2人をぽかんと眺めているのは女性社員たち。

枢木スザクの恋人は、あちらの美女ではなく、こちらのとびきりの超イケメン?

カレンはぎゅうぎゅうと抱擁している(?)2人を眺め、ただただ茫然とこちらを眺めている女の子達を見る。
「スザク、あの子たち何なの?」
「えー? ああ、会社の人達だけど……付けて来たんだね……」
ちらりとこちらを見るスザクの目の冷たさに、全員が心臓を跳ねらせた時、元気な声が響きわたる。
「おーい、スッザックゥ~」
金髪の三つ編み星人、ジノである。
「何やってんだよ、お前。おおっ! もしかしてプロポーズがうまく行ったのか? ルルーシュ先輩、喜んでくれただろ? 先輩聞いてくださいよ、こいつ新居まで用意してたんですよ? ハハハ」
「え? プロポーズ……?」

冬の風よりも凍りつくような沈黙の後、スザクの蹴りが炸裂する。

「ジノ……消えろ。いや……そうだ、ここで一思いに僕がとどめを刺してあげるよ……」
「スザク! 落ち着け!」
ひゅん!と蹴りあげられたスザクの足がジノの体を掠めた。チッと舌打ちの音が聞こえたのは幻聴ではない。休む間もなく蹴りは次々とジノへと繰り出された。
「殺す気か!」
「うん。世界の為に君は消えた方がいい」
「おいスザク! カレン先輩、助けてくださいよ!」
カレンは『本当に馬鹿よね、こいつ』という顔でジノを眺めてから、スザクに忠告だけしておいた。
「スザク、殺さない方がいいわよ? そっちの方があとあと面倒だから」
「了解!」
そんな2人を放っておいて、カレンはルルーシュの腕を掴む。何といっても吹きっ晒しで寒いし、この注目から逃れたい。
「ルルーシュ、中であったかいものでも飲みましょうよ。ほとぼりが冷めたら2人も来るわ」
「いや、でもカレン……」
ルルーシュとしては動けない。色々キャパ越えの内容が押し寄せている感じだ。というよりも、あまりの衝撃に処理が出来ない、といったところだろうか。
(本当、頭いいのにこういうとこは相変わらずなのねえルルーシュも)
カレンは仕方なく助け舟を出すことにした。強制終了させなければこっちが凍えてしまう。本当はパンチの一つでもあいつらに入れれば済むのだが、残念ながらこのドレスではそれが出来ない。
もうちょっと動きやすい恰好にしておくべきだったかという選択が必要になるとは思わなかったし。だってクリスマスよ?

「スザク、このままだとルルーシュが凍るけど」

その一言で、スザクが飛んできてルルーシュをうりうりと抱きしめて騒ぎは一旦終了となる。









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前篇です。
クリスマス、こちらでは雪が少しだけ舞いました。寒い。





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