Blue Soda water Sky  前篇

Blue Soda water Sky   前篇









「しつこい、な」
振り返ればまだ黒い服の男達が追いかけてくる。運動神経には自信があったが、知らない街の中は思うように動けない。舗道は石畳で人通りが多い中、その間を縫って走るのは結構大変だ。
───このまま捕まるのか。
スザクが半分諦めかけた時、腕を掴まれる。
「こっちだ!」
「……え?」
引っ張られるまま走れば、裏通りの細い路地を幾つも曲がる。土地勘のある人間なのだということは分かる。黒髪が風に揺れている後ろ姿は、ある程度のところまできて振り返った。
(うわっ)
振り返ったのはたぶん自分よりも年は幾つかは上だろうと思うのだが、それよりも。
「美人……」
「オレは男だが」
「え、うわ、ごめんなさい!」
「いや、いい」
慣れているし、と呟き、走って乱れた髪を指先で直し、息を整える姿に、男だと分かってもついつい見惚れてしまう。
「それより、お前……」
「そうだ! 有り難うございました」
振り返っても追いかけてくる様子はなかった。さすがにこんな地元の人間しか使わない道までは、無理なようだ。
「何かしでかしたのか? 連中、訳ありな感じだろう?」
黒い服にサングラスまでかけた男達に追いかけられていては、誰がどう見てもそう思う。
「悪いことをした訳じゃないんだ。ただ……言いなりになるのが嫌で……」
ふうん、と相手はスザクは見る。
「悪巧みする顔はしていないな。宜しく、ルルーシュだ」
「枢木スザクです」
その瞬間、ルルーシュが細い眉を顰めたように見えたが、気のせいであるかのように、すぐに戻った。
「スザク、か。それでしばらく隠れていた方がいいんだな?」
「……うん、それはそうなんだけど……」
このまままた表通りに出ていっても、すぐに見つかるだろう。でもこれ以上この知らない人に迷惑をかける訳にはかない。
「子供が変な気を使わなくていい」
「子供って、僕15歳です」
「15? やっぱり子供だな」
笑いながらルルーシュは手を差し出す。子供じゃないのに、そう思うのに白く細い手は拒む理由など無いかのように、スザクの前に差し出される。
この手を握ったら何かが変われるような気がした、というのは言い訳になるだろうか。

ルルーシュはさらに細い路地の奥、隠れ家のような小さな店へとスザクを連れていった。カウンターしかない店だったが、居心地はいい。店主だというリヴァルという青年が、手際よく作ってくれたクロワッサンのサンドイッチにスザクはかぶりついた。何せ朝から何も食べずに逃げ回っていたのだ。大きなクロワッサンにレタスやハム、チーズが何段にも挟まれたサンドイッチは本当に美味しい。
「お前、美味そうに喰うなあ。よっし、もう一個作ってやるよ」
リヴァルがブルーの色のついたソーダ水を大きなグラスで出してくれた。窓からの光を反射して、炭酸の泡がキラキラと輝く。その隣でルルーシュがカシスオレンジを飲んでいる。ジュースのようだが、れっきとしたカクテルだ。
「訳ありねえ。でも訳ありなのは、こっちのルルーシュもだからさ」
「黙ってろ、リヴァル」
はいはい、とリヴァルはスザクの空になった皿を持って奥へと下がっていく。余計な事を、と呟くとルルーシュはグラスに口を付ける。そんなルルーシュをスザクは横目で眺めた。
───大人、かあ。
20歳だというルルーシュは、15歳のスザクから見ればそれだけで大人な感じがする。そして本当に綺麗だ。
「おい、スザク」
「うわ、っはい!」
ボーと眺めていたスザクはルルーシュに声をかけられて、慌てて返事をした。
───何見惚れてるんだろ、僕。
「お前、言いなりになるのは嫌だって言っていたが、わがままで言っている訳じゃないんだな?」
「違うよ! 本当に……ここへも無理矢理だったんだ。父さんは僕の言うことなんて全部無視でさ、僕も言う通りに動く物だと思ってるんだよ」
「抗うだけなら誰でも出来るぞ」
「違う!」
がたん!とスザクは立ち上がる。わがままでも反抗でもない。
「僕は僕の道を行きたいだけなんだ! 誰かに決められたくない!」
言いなりになって父が用意した道を歩くのは嫌だ。生まれた家がそういう息子を望んだとしても、それは僕の望みじゃない。15歳、たった15歳ではあったが、それでも自分の意志を曲げて、この先に進んでいく事は出来ない。
立ち上がったままのスザクに、ルルーシュは座れとしめした。
「反逆のはじめの一歩か。いいだろう、気に入った」
ルルーシュはスザクのソーダ水のグラスに、自分のグラスを当てる。

大きな氷が、薄いブルーの中でカランと揺れた。






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