レギュレータ regulator 78.

君のためなら










「ルルーシュ様! よくぞご無事で!」
ルルーシュの手を握りおいおいと泣いているのは、ジェレミア・ゴットバルトである。その後ろでイライラしているスザクの姿に、コーネリアも苦笑せざるを得ない。

月のないある夜、ブリタニア西海岸の軍基地から一隻の潜水艇が出帆した。勿論ごく一部の人間しか知らないトップシークレットだ。乗っていたのはユーフェミアとコーネリア、そしてダールトン、ギルフォード。スザクとジェレミア。
用意したのは日本の枢木首相であり、行き先は中華連邦の沿岸海底、最新の浮遊航空艦イカルガだ。
戦場で何度も相見えた相手が目の前にあったが、いざ足を踏み入れればコーネリアは不思議と怒りを覚えることはなかった。弟の無事な姿を抱きしめることが出来たこともあるのだろう。
「ルルーシュ……」
「姉上」
良かった、ただ本当に良かったと思うばかりだ。
医療用のカプセルにて厳重に運ばれてきたユフィが、再びイカルガの医療チームの手により治療が施され始める。付いてきたメンバーも、全員がこちらの者達であった為に移行は素早い。
「ユフィ……」
ガラスの向こうの妹をルルーシュは見つめ続ける。その隣にコーネリアが立ち、同じように眠り続けるユーフェミアを見つめる。
「意識の回復は五分五分だそうだ。だが、発見した時よりも確率は上がっている」
「そう、ですか」
ユフィにはもう一度キラキラとした世界で笑っていて欲しいと思う。それが叶わないもう一人の妹の分も笑って欲しい。
「ルルーシュ……ゼロの話は全部聞いた。あんな事までしていたのに全く気付かずにいたとは……私はどこを見ていたのだろうな」
「自分も気付かずにいましたから、姉上が気付かれなかったのは仕方ありません」

ゼロが自分の体を使い自分とルルーシュを守り続けていたと枢木ゲンブにより報告された時、コーネリアは顔面蒼白となり、コーネリアの意向により呼び出されたジェレミアは失神騒動を巻き起こした。詳細については言葉を濁したゲンブであったが、内容の衝撃はすさまじい。
「薬が常用されていたようです。これ以上繰り返されると体も精神も崩壊していくと判断して、自分が手を貸すからと殿下を辞めさせたんです」
「手を貸す……」
「すみません。その頃には反逆の用意をしていたので、こちら側で一緒にと勧誘しました」
「……それでゼロが黒の騎士団リーダーになったんだな?」
「はい」
ふう、と大きく息を吐き出したコーネリアは、今まで考えもしなかった弟達───ゼロとルルーシュが置かれていた環境について考えを巡らせる。コーネリアはマリアンヌから剣の指導を受けていた為、交流は他の兄弟達と比べると多かった。妹のユフィもヴィ家の三人とは非常に仲が良かった。それが変化したのが例の暗殺事件だ。ふと、以前ダールトンが話していた事を思い出す。謁見室での皇帝とのやりとりについてだ。まるであの二人に「皇位継承権の放棄」をさせるべく行われたようなやりとりであった、という。
「姫様、よろしいですか?」
難しい顔をしていた自分の騎士の発言に、コーネリアは無言のまま頷き、先を促す。
「枢木卿のお話の中で、ゼロ殿下が口にされたコルチャック伯やトンプソン。私の記憶ではシュナイゼル殿下の翼下の者たちのはずです」
「そんな!」
思わず叫んだスザクの横で、ゲンブがぎりりと拳を握る。
───何もかもがシュナイゼルの仕業。
「……ふざけんな」


「ナイトオブファイブが酷く怒っていた」
「ゲンブは……ゼロの事を本当に想ってくれているんです」
おそらくゼロもそうに違いない。ゲンブは現在シュナイゼル達からの目を誤魔化す為に、一人ブリタニアに残っている。ゼロの側を離れたくないという気持ちもあるのかもしれない。
「それでセブンはルルーシュか?」
ここでルルーシュが黙り込み、すみませんと口にする。
「謝ることなどない。ユフィがセブンに専任騎士を断られた理由はそれなのだろう? お前達がいたからあの二人はブリタニア軍として戦えたという訳だ。それではこちらとしては疑う余地もないな」
他国の───殆ど敵国といってもいい国のTOPの息子達がこちら側で戦う。大きな歪みも生まれるだろう、葛藤などいう生易しい感覚で済む問題でもない。そんな状態の中で、ブリタニアの紋章を背負い、KMFに乗り、あの二人はブリタニアの為に戦っていた。
「……私にも無理だろう。あの二人の精神力には負ける」
しばらくこのままユフィのそばにいるというコーネリアをその場に残し、ルルーシュはイカルガの中にある自室に向かって歩き出す。少しだけ肩の荷が降りた気がするのは、やはりコーネリアという姉の存在の大きさだろう。
(少し……呼吸が……楽になったか?)
自分でも相当ため込んでいたのだと自嘲しながら歩くルルーシュの前から、スザクが歩いてくるのが見えた。
「ルルーシュ」
いつもと変わらず背筋を伸ばして大きな歩幅でこちらに向かってくる姿に、思わず立ち止まる。
「ルルーシュ?」
栗色の癖毛も、翠碧の瞳も、背格好もゲンブとそっくりではあったが、ルルーシュの目には同じには映らない。
自分だけの、自分を支えるただ一人の騎士───。


与えられているのは小さなコンパートメント。殆どの時間を作戦室で過ごすルルーシュには仮眠出来るスペースがあれば良かった。疲労困憊した体を引きずり、倒れ込むように眠る際に思い出すのはいつだってこの翠碧の瞳だ。
「……ルルーシュ」
「ん、」
掻き抱く腕の中で、ルルーシュも必死でしがみつく。軽かった口づけは深くなり、熱はどんどん上がっていく。止められない。
「父さんが到着するのが一時間後だって、さっき……」
枢木首相がコーネリア達と会談する為に向かっているという連絡が先ほど入った。
「それだけしか時間が……ないんだ」
「いい。それだけでいいから!」
互いを与えあう時間に、長さは関係ない。
「スザクが欲しい……スザクをオレによこせ」
「いくらでもあげるよ」
スザクは再度強く抱きしめる。

「我が主に全てを捧げる」
君のためなら命だって惜しくない。




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