レギュレータ regulator 88.

戦い









「ゼロは見つかったかい?」
「いえ、それがまだ……」
何しろ、ダモクレス自体の大きさが途方もないのだ。監視カメラ等の設備は完璧であっても、あの皇子様の頭脳はそれの遙か上をいく。網の目の隙間をかいくぐることなど、ゼロはいとも簡単にこなしてしまうだろう。
「しかし、煙のように消え失せるはずはない。一つずつ可能性を消していけばいいだろう。カノン、君ならばまず何をする?」
「そうですね、仲間に連絡をとるでしょう。通信履歴の確認はしておりますが、回線チャンネルをジャックされておりましたので、確かな情報を得ることは難しいかもしれません」
カノンにしてはシュナイゼルに対してのこの物言いは厳しい。

元々カノンはゼロを連れてくることには反対していたのだ。秘密を知る者は少なければ少ないほどいい。フレイヤで帝都を消滅させることは計画されていたのだから、そのまま消し去ればよかった───とそう考えていた。だが、シュナイゼルはそれに賛成しなかったのだ。あれほど邪魔だと言い続けているのであれば、消してしまえば早いものを。傀儡にしてしまおうという案も早々に失敗に終わっている。ルルーシュにしても生かしておいたが為に、反対勢力のTOPへとなってしまっているではないか。
皇帝暗殺犯が必要だから、という理由でゼロの面倒を見てきたが、暗殺犯人くらい、その辺の兵でよかったのではないかとカノンは今でもそう思っている。確かに反逆の皇子が父親殺しの犯人であるとすれば、世界中にセンセーショナルを巻き起こすだろう。だが、結果としてこうして邪魔者となっているのだ。その上、死亡予定だった皇帝もああして表に姿を現してしまった。

結局、シュナイゼルが考えていたシナリオは、全くその通りに動いていない。どこが綻びの始めだったのか。人を思い通りに動かそうということ自体、そもそもの間違いであったのだろうか。

「……もう一度その辺り捜索してみますわ」
「ああ、頼むよ」
カノンは頭に浮かんだ考えを消し去るように、いつになく大きな靴音を立ててその場を歩み去る。すれ違いに入室していくラウンズの制服、ドロテアとモニカの白い制服を横目で眺めながら。

シャルル皇帝とユフィはさすがにそのまま戦艦に乗せておく訳にはいかない。責任をもって中華連邦のリーファが預かると引き受けてくれた。
「ルルーシュ、ゼロがね約束してくれたの。今度は二人で私のところに帰ってくるって」
「ユフィ、オレも約束するよ。今度はゼロも一緒だ」
いまだ数本の管が体についたままであるというのに、ユフィは自分のことよりもゼロとルルーシュの心配ばかりしている。そして、姉のこと、消失してしまったペンドラゴンのこと───。父は、まだ眠りの状態と活動時間が狂っているらしい。ニーナが持ち出した薬を研究者に調べさせたところ、常用癖の強い成分が検出された。自らも欲しがるようにし向ける為だろう。麻薬成分も含み、ニーナは途中で服用を止めて正解であったのだ。またこういった成分により副作用もかなり強く出ており、皇帝は左手が麻痺したままだ。
「……なんだかねぇ」
長いキセルをくゆらせたラクシャータはそれだけ呟き、ただ黙る。その場の皆も同じだ。


「殿下! 敵側動きました!」
「ここできたか!」
ルルーシュが小さく良しと呟く。こちらの思惑通りだからだ。
「姉上、動きました」
「わかった。まずは作戦通り、様子見からだ。行くぞ!」
消耗戦に入ると、確実にこちら側が圧倒的不利になる。なにしろ、向こうはKMFの数はとんでもない。ただ、パイロットの内容の濃さでいうと、こちら側の方が圧倒的有利だ。ブリタニア軍TOPのコーネリア並びに親衛隊、と皇帝騎士ラウンズ、同じく能力の高い藤堂に、カレン、星刻と腕の立つパイロットが揃い踏みしているのだから。そして、ルルーシュ、ナオトによる作戦が加わる。とはいえ、瞬時にその場の状況を把握し、陣形を変化させていくルルーシュの戦術に、ナオトはついていくのに必死だ。
しかしながら、相手はシュナイゼル。こちら側の挑発にも一切乗らず、つぎつぎと部隊の位置を変えることだけが繰り返される。
「殿下……」
「さすがシュナイゼルといったところか……」
ルルーシュは画面に映し出されるダモクレスを睨みつける。
「撃つなよ、シュナイゼル」


───どこに隠れていようか。
戦闘が始まることに気づいたゼロは、痕跡を消してヴィンセントから降りたまでは良かったものの、隠れる場所が見つからない。
出来ればフレイヤの発射制御室か、プレイズルミナスの解除……とは思うが、ルルーシュと姉コーネリアからは「ゼロは余計な事をしなくてもよい!」と言われてしまっている手前、動こうにも動けずにいる。
「……なにもあそこまで言わなくても」
確かに一人で突っ走ってきた感は否めないので、ゼロとしても黙るしかない。かといって、大人しく助け出されるのを待つのも性に合わない。
「しかし、どうしたものか……」
一般兵の制服でも奪うか、それかもう一度格納庫に戻り、KMFを奪って出撃に紛れて外へ───。
「その選択はない」
陸上戦ならともかく、空中でKMFを扱う技術はゼロにはない。そのまま海へ落っこちる可能性は大だ。
「……あのバカに笑われるだけだな」
───ゼロ
「え?」
名を呼ばれた気がして振り返る。そうあの庭園でゼロを起こした、あの声だ。そして、ゼロは大きく目を見開く。確かに、自分は見た。
通路の角、見覚えのある揺れるアッシュブロンド、ピンクのドレスがひらめくのを。
「……ナナ、リー?」
それが幻であるとか、そんなはずはないといった考えなど思いもせず、ゼロは走り出していた。だが、角を曲がってもナナリーはいない。
「……あ、れ……」
その時、向こうから話し声が聞こえ、慌てたゼロが身を翻そうとして壁に手をついた。

反転。

すっぽりと小さなくぼみが体を支える。
「……なんだ、ここは……」
目が慣れてくると、そこが配線用の通路であることを知る。 少しずつ歩みを進める。

───ゼロにいちゃま!

「……有り難うナナリー。そういえばかくれんぼの時、ナナリーはいつも上手に隠れていたね」




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