レギュレータ regulator 90.

止めろ。










戦闘はますます激しさを増していく。
「ルルーシュ殿下、また来ます! フレイヤです!」
「全体転回! 回避しろ!!」
幾ら指示をしたところで、フレイヤ爆発まではあっという間だ。間に合わなかった中華連邦の戦艦が巻き込まれ消失していくのを、悔しさの中で見ていることしか出来ないのか。
「くそおおっ!」
誰も失いたくないというのに!
スイッチを押したシュナイゼルは、すぐ前にあるアヴァロンとイカルガを眺める。
「ここで撃てるかな?」
「臨界までにはまだ時間がかかりますので」
側近の一人が申し訳なさそうに、そう答える。とんでもない威力の兵器であるが、フレイヤは連発は出来ない代物である。一発撃つことに、準備が必要なのだ。
「そうか、ここで撃てば何もかも終わると……いや、いけないな、これは欲だ。あまり欲張りすぎてもいけないね」

ただただ簡単に消滅していくことに、コーネリアも声が出ない。たった一発で、一体どれほどの命が失われていくのだろう。その重みをあの兄は分かっているのだろうか。
天空から見下ろし、自分が神にでもなった気でいるのか。
考えてみれば、ブリタニア宰相であった時から、シュナイゼルに誰も進言など出来なかった。シュナイゼルが間違いを起こす事自体、思ってもみなかったということだろう。
父だけが、シュナイゼルの世界に危惧の念を抱いていたということだ。そして、それに気付いたシュナイゼルは、本当の自分を知っている唯一の存在を消しにかかった───。
「……最悪だ。親が子を叱るのは普通のことであろうに……」
アヴァロンに戻ってみれば、例のデータが完成したという報告を受ける。そして、やる、やらないで揉めているルルーシュとニーナの言い争いが始まっていた。
「でも殿下、あれの最終プログラムは環境データを打ち込まないと完成しないんです!」
そう説明をしたニーナは、打ち込みまで自分で行うとルルーシュに訴えたが、却下された。
「なんとしてもオレがやる」
「殿下!」
後ろで聞いていたコーネリアも、その方法に動揺を隠せない。

ようやく完成を見た、アンチフレイヤシステム。フレイヤの原子反応を強制的にストップさせる事ができる。

だが、それには発射されたフレイヤの中に飛び込んでいく必要がある。発射されたフレイヤは、刻々とその組成を変化させる。その組成に対応する反応を見つければフレイヤの臨海反応は制止出来る。
だが、時間は許されない。発射されたフレイヤが爆発に到達するまでの約19秒で、現場環境データをプログラムに入力しなければならないのだ。そしてフレイヤの変化しつづける組成が固定している、わずか0・04秒の間だけが、システムの実行時間となる。

プログラムを完成させるのは19秒、そして0・04秒が実行できる時間。

「ルルーシュ、それを行おうとなると、お前が……」
「姉上、躊躇している時間はないのです。フレイヤ発射の瞬間しかプレイズルミナスは解除されない。その間だけがあの鉄壁要塞の唯一の隙なんです。なんとしても内部に進入して、兄上を止めなくては……」
同じ血を分けた兄弟だからこそ、止める義務がある。これ以上罪を重ねるその前に止めなければならない。コーネリアはもう何も言えず、弟の顔を見つめることしか出来ない。
「ルルーシュ、絶対に戻ってくるのだ。いいな」
「はい……姉上」
コーネリアは最後に弟をしっかり抱きしめた。あの幼かったルルーシュがなんと大きくなったことか。あの辛かった日々にこうして抱きしめてやれば、ゼロもあれほど苦しまなくて済んだのかもしれない。
「突入の指揮は任せておけ。ゼロを頼む」
「はい」
ルルーシュはそのまま格納庫へと急ぐ。
「ジェレミア、援護を頼む」
「イエス、ユアハイネス!」
すでに用意されている蜃気楼に乗り込む際に、心配そうな顔で見ているニーナに手を振っておく。
彼女の為にも成功させなければならない。自分の論理がこんな事になってしまうとは夢にも思っていなかっただろう。そうさせてしまったのは、あのシュナイゼルだ。
自分たちはおろか、世界の人々の幸せを奪って何が楽しいのか。
───何が平和だというのか。
蜃気楼の起動プログラムをスタートさせると、ルルーシュは操縦桿となっているキーボードに指を滑らせた。
「スザク、聞こえるか。今から始めるぞ」
コクピットのモニターに真剣な顔のスザクが映る。
「イエス、ユアハイネス」


慎重に通路を進んでいくゼロは、ある扉へと到達する。艦内部の見取り図が欲しいと頭をかすめるが、もちろんそんなモノがすぐに用意出来る訳はない。だが、壁には幾つかヒントは隠されていた。簡単な記号ではあったが、おそらく製造過程において必要だったのだろう。コードの差し込み口に小さく書かれたアルファベット。
「上階からアルファベット順になっている。数字と刻みか……」
ゼロは白い壁に、数字を書き付けていく。これは転がっていたボールペンを使用させてもらっている。こんな所に放り出しておくなどあってはならないはずなのに、完璧なようでいて、完璧ではないシュナイゼルの陣営を表しているようだ。本来であれば、数字すらも書き残しなどあってはならないものだ。シュナイゼルが思っている程、内部はそこまで徹底されていないのだ。

ゼロがゲンブと遭遇した、あの時のように。

「……成程、計算からするとここはちょうど真ん中ということか。そうなると……管制指令のフロアと考えていいな」
おそらくシュナイゼルの位置は近い。
だが、ここで飛び出すのを少し躊躇う。何しろ、姉と弟の両方から「ゼロは動くな!」と言われているのだ。
(……そんなに無理していないのに……)
外の様子を伺おうと、ゼロは耳をそばだてる。やはり読みは当たったようで、僅かではあるがシュナイゼルらしき声がした。

さて、ここからどう出るべきか。なるべく見つからず、それでいて徹底的に打撃を与えられるような。

動くなと言われて、じっとしているような性格であれば、あんな行動などするはずもないゼロは、当然模索し始める。こんな場所に、こうして忍びこめるような場所を作っておくのはどうなのだろうか、とゼロが考え込んだその時、オペレーターが報告する甲高い声がゼロのところにも届く。
「敵KMF編成接近中、先頭は蜃気楼です!」

ルルーシュ!?

「プレイズルミナス部分解除、フレイヤ標的は蜃気楼に変更する。ルルーシュ、最後は捨て身か、見苦しいな」
やれやれといった雰囲気のシュナイゼルが、さも面倒そうに指示をした瞬間、後ろから聞こえる大きな音に振り返り、今まで面倒そうだった顔が見る見る笑顔へと変化していく。
「おやおや、これはゼロ」
「シュナイゼル! ルルーシュは撃たせない!」
シュナイゼルへと走っていくゼロだが、銃も何も持たない身では、あっという間に捕らえられる。
「くそっ、」
「見ているがいいよゼロ。君が何も守れないことをね」
さも楽しげに笑うシュナイゼルに、ゼロは顔面蒼白となっている。

これは───誰、だ?

「標準変更完了しました」
「ゼロおいで。君もここで見ているといい」
何を、と考える間もなく、部下の一人に引きずられるようにシュナイゼルの席へと連れていかれる。
「プレイズルミナス、解除」
「さようなら、ルルーシュ」
狙いは蜃気楼。その後ろに、白い機体が2体。

止めろ、そう叫ぶゼロの目前、大きなモニターにはフレイヤが発射される様子が映し出された。










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