レギュレータ regulator 92.

収束










カツンと音を立てて、銃は据えられたシートの間を滑っていく。
シュナイゼルが倒れたと同時に、カノンが床に座り込んだ。
「ゲンブ! どうする? このまま発進してもいいか?」
「あ、ええ……大丈夫だと、」
ナオトにそう返しながら、だが何かおかしいと、どこかで警告音が鳴り響くのをゲンブは感じている。
───このシュナイゼルの側近が大人しくここまで来ている訳がない。
そう頭をよぎった時と、カノンが銃に手を伸ばしたのは同時であった。響く銃声と、ゼロを引き寄せたゲンブ。カノンはすぐに取り押さえられたが、ゲンブは顔をしかめたままだ。
「ゲンブ!」
「……大丈夫、かすっただけ、です……」
脇腹を押さえたまま立ち上がったゲンブに、カノンは低く笑い声を漏らしている。ゲンブに手を貸していたゼロが、そんなカノンを振り返った。逃げだそうとしていたゼロの行く手を塞いだのは、カノンが入室してきたからだ。そうだ、ずっとあのフロアにいなかった。いない間に、何をしていたのか考えれば───。
「フレイヤだけじゃないのよ、兵器は。悪いわねえ、坊や達」
指令室にいるルルーシュがモニターを確認して、小さく叫ぶ。
「ビームの出力が!」
ダモクレスに装備されていたビームが無理矢理出力を上げさせられている。このままではダモクレスの下半分が爆発するだろう。そうなると、動力であるサクラダイトとフレイヤが爆発する。こんなところで「暴発」させてしまえば、被害はどれほどのものになろうか。
もちろんこちらも、最終的にはその手段を考えてはいたが、被害を最小に抑えるよう計算し尽くした場所で、ということだった。こんな敵と味方が入り交じる場所ではない!
「ナオトさん! このままイカルガに向かってください! 俺たちで何とかします。殿下も一緒に行って、」
「嫌だ! いいか、オレも一緒にやる」
しばらく黙っていたゲンブがゼロに手を差し出す。
「……わかりました」

シュナイゼルとカノンを乗せた脱出艇の発進を確認してから、ゲンブとゼロは動き出す。
「ルルーシュ、中からの指示を頼む。外から狙った方が早いだろう?」
『分かった。蜃気楼は格納庫においてある』
そうは言われても、ゼロは空中での操縦は無理だ。小型端末を抱えたゼロに乗せろと言われ、理由がわかっているゲンブは笑いをこらえるのに必死だ。
「ゲンブ、乗せろ!」
「仕方ないですね……イエス、ユア……あれ?」
「何だ。早くしろ」
ゲンブはゼロを乗せたままマリスに乗り込みながら(さっきから、名前、呼んでいるよな?)と内心ニヤケるのが止められない。おかげで傷の痛みが半減したような気さえする。
走ってきたスザクのランスロットの後に続いて、ゲンブも飛び出していく。その後にカレンやジノも続いていく。
「ゲンブ、撃たれた怪我……」
モニター越しの心配そうな弟に、ゲンブはかすり傷だからと笑っておく。それよりも、まず発射口を潰す方が先だ。そこでエネルギーを放出させて、暴発を止める。膝に乗せたゼロが端末を叩き、一番効率よく狙える場所を探している。
「中からアーニャがハドロン砲を同時に撃つ。それで相殺させる作戦だ」
同じく外に出てきたビスマルクにそう伝えられ、一瞬、仲良し三人組ゲンブとスザクとジノは黙り込む。
───アーニャに加減が出来るだろうか。
その空気を読んだのか、モニターに映るアーニャが少し膨れっ面になった。
「皆、キライ。殿下達もカレンも考えなおすなら、今」
三人から同時に「おい」と声がかかる。それで少し緊迫ムードが和らぎ、焦っていた気持ちも落ち着いてくる。そうなると、見えていなかった物まで見えてくるから不思議だ。
ルルーシュがすべてのチェックを済ませると、シュナイゼルが隠し通すつもりであっただろうダモクレスの弱点があらわになってくる。
完全要塞に見えていたダモクレスだったが、迎撃用の兵器がほとんど無い事が分かったのだ。ようするに、すべてを破壊して、そういう点までも隠そうとしていたらしい。
───あくまでも、負けない、というおかしな考えがここで浮き彫りとなってきたのだ。
ルルーシュとゼロの合図により、外側と内側から攻撃が開始され、膨れ上がりつつあった内部のエネルギーは消失していく。

あとに残っているのは、役に立たない要塞だけだ。

「ルルーシュ、迎えに行ってくるよ!」
スザクのランスロットが嬉しそうに飛び立つのを、ゲンブとゼロがモニターで眺める。明るい光の中で、ランスロットがきらりと光る。
「殿下、戻りますか?」
「……うん」
ゲンブは静かにマリスを降下させていく。
「ゼロ殿下、遅くなってすみません」
迎えに来るという事だろうと思う謝罪を口にするゲンブに、ゼロは首を横に振った。間違いなく迎えに来てくれたのだから、それでいい。それよりも気になっている事がある。
「お前……あの時」
確かにゲンブの唇は「スキダ」と動いたと思ったのだが、今こうして考えると、自分が都合良く勝手に思いこんだのではないかと考えてしまうほど、ゲンブの態度は変わっていない───と考えたところで、ゲンブはあっさりと口にする。
「殿下、好きです」
前言撤回。カアアアアッと全身が真っ赤に染まっていくゼロだ。
「好きです」
「ちょっと、ちょっと待て! いつからだ!」
「いつからって……最初からです」
ゲンブは手袋の隙間に忍ばせてある「お守り」を引っ張り出すと、ゼロに見せる。それは何の変哲もない絆創膏だ。
「覚えてます?」
「……おぼ、えてる……」
皇宮の庭、鳥の雛を巣に帰そうとしていたゲンブが木から落ちて、額の傷に貼れとゼロが渡した物だ。
「あの時からです。その後にとんでもない殿下に遭遇して、あれはスゴくショックだったんですよ? 殿下が眠っている間に、頭フル回転させてあれだけの契約をひねりだしたんです。学校の試験の時だってあんなに頭使わないのに」
ゲンブはそう言って笑う。あの時は衝撃が大きすぎて、とにかく好きな相手をこれ以上誰にも触れさせてたまるかと、ただそれだけだった。
それでは、とゼロも思う。ゲンブは「戦いの後の処理」とか「契約だから」と自分を抱いたが、そのすべてにおいてまるで恋人同士の触れ合いのようだと感じたのは───間違いじゃなかった、という事だ。
「……どうして、言わなかったんだ……」
「言えませんよ。殿下はあくまでも契約だからって言い切るし、それなのに色々煽ってくれるから、こっちがどうしようかと」
「煽ってなんかいない!」
「でも、娼館には行くなとか言ってたじゃないですか」
「!!!」
もういい!と顔を背けるゼロの耳は真っ赤で、本人よりも十分に気持ちを伝えてくれている。
「殿下、キスしていいですか? 殿下?」
ゲンブが腕を伸ばしてこちらへと顔を向けさせると、俯いたまま照れているゼロがいる。そのまま目元に唇を押し当ててから、そっと唇に触れた。


ランスロットで再度ダモクレスに乗り込めば、腕いっぱいに資料を抱えたルルーシュがいる。
「モニカとドロテアも無事保護した。どうやら兄上に離脱を申し出て、閉じこめられたらしい。ノネットが捜してくれたんだ」
「……うわ、最悪だね」
「フロートシステムはここで止めてある。もう少し調べてから、ダモクレスの処理を考えよう」
「うん、そうだね。陛下達にも相談した方がいいと思う」
そのままこちらに歩いてくるルルーシュに、スザクは首を傾げる。向こうに蜃気楼が見えているから、当然ルルーシュはあれに乗っていくのだろうなと考えていたからだ。
「ルルーシュ?」
「……一緒に乗っていく」
どうやら、ランスロットに一緒に乗り込んで帰るということのようだ。それは別に構わないのだが、なにしろ一人乗り設計の為、中は相当狭いときている。
「狭いよ?」
「だって、ゼロはゲンブと!」
ゲンブが抱きかかえるようにしたゼロとコクピットの乗り込んでいくのを見て、羨ましく思ったと呟くルルーシュに、思わずスザクの肩が揺れる。
「スザク、笑うな」
「いや、ホント可愛いなあと思っただけ」
スザクはご要望通り主を抱きかかえるとランスロットのコクピットに収まった。ぴったりとくっついていないと、これは本当に狭い。ここまで密着している状態になるのによくこれでゲンブは操縦してたなとも思うし、ゼロ殿下は無自覚のままだったのかとか、兄カップルに対し呆れるしかない。
「ゼロ殿下は2回目かな」
「じゃあ、オレは3回乗る」
顔を見合わせて笑い、口づけを交わす。

さあ、帰ろう。
















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