レギュレータ regulator 93.

青い空










静かに降下を続けていたマリスが大きく揺らいだのは、そんな時だった。
「おい、ゲンブ」
膝の上に抱きかかえられるように座っていたゼロは振り返り、自分を抱えているゲンブの顔を見てぎょっとする。
真っ青になった顔。
「ゲンブ……」
「……っはは、かすっただけだと思って……」
ゼロを抱えたまま左手は操縦桿を握っているが、右手は右脇腹を押さえている。その手の間から白いパイロットスーツが血に染まっていくのが見えた。
「お前、あの時!」
「……殿下、すみません、右、握って、ください……それで、」
操縦なんて出来るか!と叫びたくなるが、そんな状況ではないことも分かる。必死になって操縦桿を握って、なんとか体勢を立て直そうとしてみるが、なにしろこのKMFは操縦者を選ぶのだ。
「そのまま……ひいて」
左の操縦桿も握ったゼロの手の上から、ゲンブが重ねる。
このままでは海面に叩きつけられて、そのまま沈んでしまう。持ち直そうと頑張っているゼロの耳元で、ゲンブの荒い息が聞こえ、それでも何でもないと振る舞おうとするこのバカにも腹が立つ。
「くそっ、上がれ!」
ゼロが力一杯操縦桿を引いた時、マリスがふわりと浮き上がった。
『何やってんのよ! バカゲンブ!』
『殿下乗せてんだろうが!』
「……悪ぃ……」
右腕を紅蓮、左腕をトリスタンに支えられ、なんとかアヴァロンの艦首のKMFランチャーまで辿り着く。ゼロからの連絡でセシル達が待ちかまえており、ゲンブはすぐに医療チームへと引き渡された。担架に乗せられてまでも、ゼロに笑ったゲンブ。
「……カノンに、撃たれたんだ……オレを庇って……」
「大丈夫です、殿下。ゲンブはその状態で、あれだけ動いていたんだから」
オペ室の外でスザクと並んでゼロも手術が終わるのを待つ。現在は世界は大きな恐怖を乗り越えて、一つになろうとしていた。その騒ぎは、今はここにはない。静寂のみがそこに漂い、それが重くのしかかる。
長く感じた時間のあと、赤く光っていたランプが消え、ラクシャータが出てきた。
「成功したわよ。命に別状なし。殿下、あんたの方が倒れそうじゃなーい」
ほら、と視線で合図を送れば、向こうからルルーシュが走ってくる。
「どうせ、まだ麻酔で眠ってるから。ルルーシュ殿下、兄上連れて、血だらけのその服着替えさせて、何か腹に入れさせる。もう一人入院患者増えると困るから、任せたよ」
何度も振り返りながら、ルルーシュに手を引かれたゼロの姿がなくなると、ラクシャータはスザクと向き合う。
「さて、枢木の弟くん。少し話があるんだけど」
「……はい」


帝都ペンドラゴンが消滅してしまった現在、ブリタニアの中枢はアヴァロンに集まっている。浮遊していた鑑は、西海岸の軍基地に停泊している。かろうじて軍の設備や機能が残っていたのは助かった。

コーネリアを中心にして、ルルーシュ、ゼロが揃いブリタニア再建に向けての動きが開始されている。
「……父上に怒られた」
少しむくれ気味のゼロに、コーネリアとルルーシュが顔を見合わせてクスリと笑う。感動の再会の後、ゼロを待っていたのは、父からの叱咤であったのだ。逃げよ、とそう言われたにも関わらず、再び舞い戻ってしまったのはゼロだ。とはいえ、ゼロにしてもユフィの問題もあり、傷ついたままの父を放っておく訳にもいかず、戻ったのは当然の行動であったので、そこで親子喧嘩が始まったのだが、それをビスマルクが実に嬉しそうに眺めていた。
「ゼロは後先考えなしすぎるからな。私やルルーシュの言うことも聞かない」
「ユフィにも散々怒られただろう?」
「ルルーシュだって、怒られたじゃないか」
約束通り、二人揃って共にユフィの元へ出向いたのだが、そこで二人は妹からお説教をくらった。相手はまだベッドの中だというのに、その怪我人の前でしゅんと頭を下げていたゼロとルルーシュ。
父もユフィも現在はまだ中華連邦の医療センターに留まっている。何しろ、戻ってくる場所がまだ整っていないのだ。

「いい天気だな」
コーネリアが目を細めて、ブリッジにから空を見上げる。
青く広がる空、太陽の光が射し込んでくる。戦いは現在世界のどこにも起きていなかった。それでもこの美しい日を心から喜ぶことが出来ないのは、世界中を恐怖に陥れたのが自分たちの兄であったからだろう。
親子で、兄妹で、兄弟で、姉弟で、姉妹で、本音でぶつかり合い、叱り、誉め、抱きしめあっていれば───現在自分たちが行っていることを、もっと早くに気づいていれば、何も起きなかったのかもしれない。
シュンと音を立てた扉が開き、白いラウンズの騎士服のスザクが入ってくる。
「コーネリア殿下、父が到着しました」
「ああ、わかった」
アヴァロンに向かうと言った枢木首相に、こちらからイカルガに出向くとコーネリアは伝えてあった。今から国の再建を行うことに関して、協力を求めたのはブリタニア側だ。こちらから出向くのは当然であろう。それに、イカルガはすぐそこに同じように停泊されている。
「……ゼロも一緒に行くか?」
振り返った姉の言葉に、ゼロはしばらく黙った後で小さく頷いた。
ゲンブは現在、イカルガで治療を受けていた。







ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 30

驚いた 驚いた
面白い
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
かわいい