レギュレータ regulator 103.(完結)

未来に向かって。










ゲンブが通信のスイッチを入れた途端、待ちかまえたかのようにルルーシュがモニターに現れた。驚きながらも「ルルーシュ殿下」と声をかけようとしたゲンブを遮るように、ルルーシュが叫ぶ。
「ゼロ! 今日は飛行テストだけだと言っただろう!?」
「へっ?」

ゼロがあっという間に飛んでいった後、特別派遣嚮導技術部では大騒ぎになっていた。
簡単な飛行テストだけ済ませると、皆の反対を振り切ってゼロは飛んでいってしまったのだ。計画では皇帝就任式が終わってからの予定であったというのに、だ。

「ゼロはいつもこうやって後先考えずに動くから、問題になるんだろう!? 今日はテストだけだ! 海の真ん中で止まったらどうするつもりだったんだ!」
「……」
ガミガミと叱りつけるルルーシュの隣では、スザクが堪えきれないように笑っており、そのスザクに対して文句を言っているのがゲンブだ。
「スザク! お前、全部知っていたんだな!?」
とりあえず、十分騒ぎは大きくなっていたが、これ以上騒がれるのも困ると、マリス共々ゼロと枢木本宅へと移動すれば、家ではすでに母とばあや、咲世子が大喜びでゼロを待ちかまえていた。いつの間にか離れがゼロ専用とされていたことにも、ゲンブは呆然とするしかない。即自分も部屋を移動しようとして、母に頭をはたかれたが。
「知ってたよ。父さんも大喜びしてた。何にせよ、跡取りは確保された訳だしね」
父も周りの側近たちも、ゼロの計画に諸手を上げて大賛成の意を示した。
「僕もこっちで頑張るからさ、ゲンブはそっちで頑張ってよ」
「……お前、他人事だと思って簡単に……」
スザクを残して日本に戻ると決めた時点で、キョウト六家としての枢木家は継がなくてはならないとは思っていたが、まさか政治家としての跡も継ぐことになろうとは考えてもみなかった。
「大体、こっちは世襲制じゃないんだからさ……」
「なんだ、ゲンブ。お前オレの計画に文句があるのか? しかもこれはルルーシュ皇帝からの命なんだぞ?」
ふふん、と得意げなゼロに、通信スピーカーからルルーシュの怒りの声が飛んでくる。
「ゼロ! だからこれはオレが就任していないと皇帝命令にならないんだぞ!?」
「なるほど、じゃあ無効ってこと……」と呟きかけたゲンブの胸ぐらをゼロは掴む。
「そうか、貴様はそんなにこの計画が気に食わないのか」
睨みつけるゼロだが、実際のところはゲンブには可愛くて仕方がない。今回のことについても色々反則だと思う。
「殿下」
「何だ!」
そのまま目前にあるゼロの鼻のてっぺんにキスをしてみる。
ドサッと落とされ、さらにモニターの向こうからセシルが「ゲンブくん!」と叫ぶ声も聞こえる。スザクは笑い、ルルーシュもやれやれという表情をしている。
「とりあえず、ゼロは一度ブリタニアに戻れ! 姉上もユフィも呆れかえっていたぞ! 式に参列してからそっちに行くこと! ああ、ゲンブも出席してくれ。二人で戻ってきたらいい」


大騒ぎの通信を終わらせると、ゲンブはゼロと部屋に向かう。縁側も兼ねた廊下から広い庭が見渡せ、ゼロは興味深そうに眺めている。
「……相変わらずなんですね、殿下」
「煩い」
思いついたら、即行動。それはゼロの持ち味ではあるのだが、何せこの皇子様だけではすまないのだ。絶対に周囲も巻き込まれる。
「しかし、政治家かあ……俺は向いてないと思うんですけど」
「はっ、どこの誰が向いてないって? 大丈夫だ素質はある」
詐欺師まがいの手八丁口八丁で、あのシュナイゼルでさえ言い包めてしまっていたくせに、一体どこが向いていないというのか。
「……失敗したら殿下が責任とってくださいよ」
「失敗なんてさせるか。その為にオレがここにいるんだ。それよりもお前、殿下は止めろと言っただろう。それから後ろを歩くな」
キッと振り返ったゼロに、ゲンブは足を止める。一瞬、きょとんとしたあとで、ゲンブは笑って「ゼロ」と言い直す。ゼロと囁いてから、ゲンブはもう二度と触れることは出来ないと覚悟を決めていた、最愛の人を腕の中に閉じこめる。
「……本物だ」
「当たり前だ、この馬鹿! 勝手に決めて、オレが、」
「ごめん」
謝ってから黒髪に唇を押し当てる。細い腕が背中にしがみつく感触に泣けてきそうになる。よくぞこの人からわずかの間でも離れていられたものだ。
「もう……離すな。戦うだけが守る方法じゃないだろう?」
「うん、ごめん……」
ブリタニアで守ることしか考えられなかった。騎士としてこの人の側にいられないと知った時、もうそれしか考えられなかった。
「……オレだって、お前以外のヤツに守られるつもりはないんだ」
「でも……ルルーシュ殿下が皇帝になるのに、側にゼロがいないと、」
ゼロはゲンブの肩に埋めていた顔を上げる。
「ルルーシュを見くびるなよ、ゲンブ。あいつは一人でも完璧にこなせる。それに皆もいる。知っているか? アーニャやモニカがとんでもないアイディアを出すんだ」
「……それは知らなかった……」
「父上も口を出したくて仕方ないんだ。ユフィも勉強したがっている。だからオレは必要不可欠という立場ではないんだ」
「俺には絶対必要だ」
「だったら、最初からそう言え、馬鹿が」
求められていることが、こんなにも嬉しい。触れ合った唇は離れることはない。


ルルーシュとスザクが歩いていくと、通路の手すりに掴まって、歩く練習をしているユーフェミアと、それをハラハラしながら見ているコーネリアに出会う。
「ユフィ! 無理はするなと」
「あら、無理はしていませんわ。見てくださいな、ここまで歩けたの」
このままでは車椅子かもしれませんという医師達の見立てを吹っ飛ばすように、ユフィは大の男でも根を上げるようなリハビリを繰り返し、望めないと思われた「自分の足で立つ」ということをこうして実現させた。
「ゼロはゲンブのところだったか」
「ええ、姉上。まさか本当に今日飛んでいくとは思いませんでした」
セシルが真っ青になってエナジーフィラーの残量を計算し、少なくとも太平洋の真ん中に落ちることはないと予測したが、何しろ突貫訓練させての飛行だ。無事に着陸できるまで、皆は気が気じゃない状態であったが、本人は会いたかった人のもとで幸せそうである。
「とりあえず、一旦戻ってこいとは伝えました。ゲンブとならば戻ってくるでしょう」
ゲンブもこちらに来て、一回皆から怒られればいいのである。ラウンズはビスマルクを除き全員が知らされていなかった為、残りのメンバー全員怒り心頭状態だ。
「マリスの調整はロイド達しか出来ないから、結局は何度も戻ることになるんでしょうけど……」
「今度はゼロ殿下が操縦してゲンブと来るのかな?」
ははは、と笑ったスザクだが、ルルーシュの視線を感じて慌てて取り消した。
「ルルーシュも同じことしようとか言わないでよ!? ランスロットは改造しなくていいから!」
つまらなそうな顔になったところを見ると、どうやら考えていたらしい。
「ゼロ殿下もゲンブとくっついたし、これで気兼ねなくベタベタ出来るね、ルルーシュ!」
気を使ってたんだよ、とルルーシュを見てニコニコしているスザクにユフィとコーネリアは呆れた顔を見せる。
「……スザク、あなた、あれで気を使っていたんですか?」
「そうですけど、何かおかしかったですか、ユーフェミア殿下」
あれで!?ともう一度ユフィは兄カップルを眺める。あれで気を使っていたとなったら、歯止めが効かなくなった状態では一体どうなるのか。考えただけでも空気はピンク色になりそうである。
「そうですわ、お姉さまもラブラブっとしたらいかがでしょう? そうなるとルルーシュ達のことも気にならなくなりますわ」
「ユ、ユフィ!」
真っ赤に染まる姉に、ちょっかいを出す妹。その横で、すかさず騎士が主の手を握り、姉妹から同時に突っ込まれる。
明るい光の中に、笑い声が広がっていく。

大国のトップ2人によって、世界が平和への道を突き進んでいくのは、また未来の話。




***
はい、完結です。長きにわたり有り難うございました。予定ではもうちょい短くでしたが、書きたいシーンを詰め込んだら、あら100話越えという(→いつも)
ラウンズ枢木さんが二人!というのが自分の中での萌えでございましたので、書けて幸せです。

シュナ兄の進退問題に関しましては、このまま濁しておきます(おい)自爆させようかとも思っていたのですが、それもちょっとイヤだなと。
二人のラウンズが書けて、とってもとっても幸せでした。
次回作は準備が整いましたら始めさせていただきます。
双子もまた書きたいですね~。

Blue Ray BOXをこの前ようやく開けまして、新録コメンタリーを聴いたら、じゅんじゅんが「1話から7年たった」と話しているのを聞いて、本当に感慨深くなりました。あの時、放映前から溢れる情報にわくわくし、1話目で驚愕。その後リアルで毎週一話ずつ観て夢中になっていたのは、本当に幸せなことだったと、改めて感じてます。
そして、未だ「大好き」が消えず、公式が萌えを排出してくれるというこのステキな状態!

きっと、ずーっとギアスにかかったままだと思います。
有り難うございました。




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