レギュレータ regulator 99.

動けない。









「内臓……に?」
スザクは苦痛に満ちた顔のまま、ゼロに頷いた。ゲンブの手術後、ラクシャータはスザクに、はっきりと宣言していた。
『あの子、あのKMFにはもう乗れないわよ』
こちらの想像以上に、カノンの放った銃弾はゲンブの体を傷つけていた。
「マリスも……ランスロットもそうですが、パイロットにはかなりの負担をかける機体です。勿論そういった面も計算されているので、健康体ならば問題ないんです」
そう、傷が浅く、ただ本当にゲンブのいう「かすった程度」であれば、問題はなかった。
「マリス以外ならばいいんじゃないのか!?」
確かにゼロの言うとおり、量産型のKMFならさほど負担もない。だが、それでは今度はゲンブが動かせないのだ。
「動かせないとはどういうことだ」
「僕らに、KMFがついてこないんです……そうなると、どうしても動きが鈍くなって……」
エクター・ド・マリスとランスロットは、ハイスペックのみを追求して開発されたKMFだ。各所にふんだんに使用されたサクラダイトのおかげで、とんでもない運動性能を兼ね備えたが、操縦者を選ぶという機体となっていた。そして、現在この二機は、ブリタニア軍のもてる技術を結集して再開発され、以前のものとは比べ物にならない、完成形として存在する。
ゲンブとスザクの二人しか操れないKMFだ。
そして、この二人も自分達の力を最大限に発揮するのはこの二機しかないのだ。
動きたい形にKMFがついてこないもどかしさ。機械に合わせる操縦しか出来ず、反応の鈍さに動きもずれる。
「……結果論として、マリスを動かせないゲンブでは戦えないんです」
「誰が戦えなんて言ったんだ! オレは言っていない!」
バン!と音を立ててデスクを叩いたゼロだったが、そのまま何も言わずそのまま部屋を出ていく。
怒りに満ちた兄の後ろ姿をルルーシュもただ黙って見ているしかない。

「……ゲンブは、ゼロに理由を話すべきだったのではないのか?」
「僕がゲンブと同じ立場だったとしたら、きっと黙って帰る」
「スザク!」
スザクはそっと最愛の主を抱きしめ、その髪に唇を押し当てる。ゲンブは自分の体についてラクシャータから聞かされた時、何も言わずに頷いていた。だがスザクはゲンブが力一杯拳を握りしめていることに気付いた。相当精神にダメージがあったはずだ。
だが翌朝、ゲンブはいつものゲンブになっていた。
おそらく一晩考えて考えて、結論を出したのだろう。すっきりとした顔でスザクに「後は頼む」と告げたのだ。
「……今のブリタニアでは、ゼロ殿下はルルーシュの側を離れられない。世界が完全に落ち着いていない今、一番危険なのはルルーシュ、君だ。その間近にいるゼロ殿下もその危険が及ぶ可能性は高い。そんな中で、まともに動けない人間がそばにいることは、本当に危ないんだ」
「警備は他のメンバーもいるじゃないか……」
スザクは小さく首を横に振る。
「愛する人を自分が守れないという事実を目の当たりにして平気ではいられないよ、僕にもしてもゲンブにしても」
誰かが、一番大事な人を守る。自分が守ることの出来ない、けれども一番守りたい人を誰かが守る。我儘だと言われてもいい、でもそんな事は耐えられない。
「……それを我儘というのならオレも……ゼロもだ」
滑らかな頬が重なって、次に唇も重なる。兄たちにもこうした幸福がやっと訪れたかと思われたのに、どうしてこうなるのか。ゲンブはゼロを守りきった上での負傷だと思えるだろうが、反対にゼロは自分のせいだと責めることになる。だからこそ、ゲンブは何も告げることなく去ったのだ。


「あやつは、儂のラウンズであったのでな」
何故教えてくれなかったのかと問いつめるゼロに、父はそう答えた。
「ラウンズを務めることが出来なくなったのであれば、退任は当然であろう。許可したまでのことよ」
シャルル前皇帝在位中のことであった為、新皇帝にまで引き継ぐことなく決まった。特別おかしな点などない。
「でも! あいつは!」
「ゼロ。枢木はお前のそうした行動が分かっていたから、何も言わなかったのだ」
引き留められても留まることもできず、理由を問われても話せない。
そんなこと言われなくても分かっている。分かっているから、何も出来ずにいた自分に腹が立っているのだ。
───ゼロ殿下
どんな形であっても、一番側にいて欲しくて、誰よりも……おそらくはルルーシュよりも必要な存在なのに。
「ちち、うえの……父上の馬鹿!!」
「ゼロ!」
愛息に初めてそんなことを叫ばれ、呆然としている前皇帝を慰めるように近づいたビスマルクだが、本人も残念そうな顔を隠しきれない。こうした間柄を修復させてくれた逸材であったというのに、世界はどこまで彼らを試すのであろうか。


白い機体は黙って立っていた。
「……お前も置いていかれたんだな。オレもだ」
ゼロは格納庫の隅に立つエクター・ド・マリスに、そっと手を当てる。自分たちを動かしてくれる人間を互いに失ったもの達は、静かに佇む以外なかった。



****

ウェブリブログでは、11月12日(火)にメンテナンスを実施いたします。
メンテナンス中は、ブログの閲覧等ができません(約50分間)。

[サービス停止時間]
11月12日(火) 午前9:00~12:00 (予定)
※ブログの閲覧不可等の影響があるのは、上記のうち約50分間です。
ということです。今一つはっきりしませんよね(笑)






ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 37

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)