レギュレータ regulator 100.

歩く









響きわたる電子音を止めると、手はまた布団の中へと引っ込んだ。だが、そうはさせまいと廊下から声がかかる。
「坊ちゃま! ゲンブ坊ちゃま、朝でございますよ!」
ちっ、と舌打ちしてもそもそとゲンブは起きあがる。きっと起きるまで声がかかるに違いない。
「……俺、病み上がりなんだけどなあ」
三杯目のおかわりの茶碗を受け取りながら、そうでございますかとばあやが呆れた声で返事をする。
「これだけ召し上がれて病み上がりなど、ばあやは片腹痛とうございますね。働かざる者、食うべからず。ゲンブ坊ちゃま、お食事後はお庭掃除をお願いいたします」
「庭って、庭!?」
ここ枢木本宅の庭である。庭だけで一体どれだけ面積があると思っているのか。庭木の手入れだけで職人が大勢押し寄せる、この庭の掃除!?
「何か問題でも?」
「……ありません」
手渡された熊手で、落ち葉をかき集める。
───やっぱり怒ってるんだ。
スザクから昨日連絡が来て、ゼロが相当怒っていることが報告された。
『理由は理解しているんだと思うよ。でも心がついていっていない感じだ』
あーあ、とゲンブは溜息を吐き出す。いや、怒っているのならば、まだいいのかもしれない。これで「ああそうか」と頷かれたら、立ち直れない。あの殿下の事だ、不敵な笑みでも浮かべて、勝手にすればいいとでも言い放ちそうだから、怖い。
「くっそお、俺だって、整理出来てないんだよ!」
がしがしと熊手を動かして、落葉樹の葉を集めていく。

格好つけて出てきたはいいが、ゲンブだって出来ればゼロの側にいたかった。側にいたいに決まっているではないか、欲しくて欲しくてたまらなかったゼロをようやく手に入れたというのに!
断腸の思いで諦めたはずなのに、こちらに帰ってきても思いはつのるばかりだ。

「やっぱりあの金髪のせいじゃないか! もっと殴っておけばよかった!!」
腹じゃなくて、あの澄ました顔にも一発拳をぶちこんでおくべきであった。ついでにあのオカマもぶっ飛ばしたい。何もかも拒絶して引き籠っているらしいが、そんなもん関係あるか!
なにやら叫びながら手を動かしている枢木家長男を、ばあやと共に夫人は眺めている。
「……奥様、よろしいのですか?」
「いいわよ。そのうち静かになるわ。ここで発散させておかないとね。ホント、馬鹿な子なんだから」
そんなに必要ならば、一緒に連れ帰れば良かったのだ。だが、ブリタニアという国と新しく立つ若き皇帝から今はゼロは奪えない。そう判断して残してきたのだろう。
「ホントに馬鹿な子……」
「坊ちゃま方はお優しいですから」
そうね、と返しながら、夫人は今度は黙々と作業を始めたゲンブを見つめる。時には自分にも優しくなればいいものを。
「……変なところばっかり父親に似るんだから」



スザクと共に歩いてきたルルーシュは、窓から外を眺めているゼロを見つける。外は急ピッチで工事が進められている。国の中枢となるべき場所だ。まだそのほとんどを航空艦アヴァロンと、ブリタニア軍基地のデータに頼っている状態だが、少しずつ移しかえる作業も進んでいた。もう少ししたら正式に戴冠式を行う予定になっているが、執務に関しては、ルルーシュの名前で次々と進められていた。
皇帝が存在するだけでは国ではないのだ。生活している人がいる、それだけで国だ。まずは象徴よりも地に足がついた形が必要なのだから。

人の気配を感じたゼロが振り返り、並んで歩いてくる主従二人を見つめる。
「……いいスザク、気にするな。二人には並んでいて欲しいから」
後ろに下がろうとしたスザクをゼロは止める。自分には無理であったが、ルルーシュとスザクには並んでいて欲しかった。離れることのないよう、いつも一緒にいて欲しい。
「ゼロ、この前の案だが、姉上たちからも承諾を得た。ゼロが相当負担を抱えることにならないかと心配していたが、そちらの方がゼロにはいいのだと説明しておいた。良かったか?」
全部終わった後に「良かったか」と確認されても、それは承諾する以外にないではないか。そう考えながら弟を見れば、ルルーシュはいたずらめいた目で見ているし、後ろでは騎士もくすくすと笑っている。
「ゼロ殿下、ロイドさんとセシルさんが頭抱え込んでましたよ?」
「……それほど難しい事を言った覚えはない。実現可能かと聞いたら、可能だとロイドが言ったんだ」
ゼロはそれは心外だという口調でそう答えたが、実際は「何だ、出来ないのか」というゼロからの売り言葉に、ロイドが「出来るに決まっているじゃないですか!」と買い言葉で答えてしまったという流れがある。その後にロイドが「うわああああっ」と叫んでいたと、セシルから聞いた。
少し肩をすくめてから、特派を覗いてくると歩きだしたゼロの姿を、今度はルルーシュとスザクが眺める。
「動き出すと凄いね、ゼロ殿下は」
「行動力はゼロの方があるのかもしれないな。おかげで計画が随分前倒しで進んでいる」
ルルーシュの名で進められている計画の殆どが、ゼロの補佐があってのものだ。だが、そのスピードが現在とんでもなく早い。
「やっぱり二人一緒に動いているのはいいよ」
本当なら、もっと前からこうして動いているはずだった。素晴らしい力を無駄にした数年間であったと皆は嘆くが、時は戻せない。だが、明日はこれから永遠に訪れるのだ。全部を明日のために動けばいい。
「……でも、凄い案だよね」
「ああ。ゼロが譲らないから、とうとう父上も折れることになった。何しろ、父上はたっぷり負い目がある。反対は出来ないのだろうな」
ゼロの「父上の馬鹿」は相当効いたらしく、渋々頷くしかないのだろう。
二人はくすくすと笑いながら、歩き出す。歩き出す先には、未来が待っている。


***
拍手の方でリンク切れのお問い合わせをいただきました、もふもふさま。
ちびルルの244とThe suffering of the knightのⅨ前編が開けないということですが、こちらで確認してみましたが開くことが出来ました。ですが念のため、もう一度改めて貼り直しをさせていただきましたので、ご確認いただけますでしょうか。
それでも開けないようでしたら、TOPの問い合わせフォームより再度ご連絡くださいませ。

また、他にもリンク切れ等お気づきの点がございましたら、ご連絡いただけるとありがたいです。すみません。






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