月なき夜にはあくなき夢を 14.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 14.」










実際、マオを探していた訳だが見つけたら見つけたところで、慌てるのもこちらだ。何しろ、こちらの動きを悟られれば一巻の終わりだからだ。
だがしかし、そんなこと全く不要だとばかりに、マオはジノにもカレンにも視線を移すことはない。
「……ルルーシュを見てる」
「当然だろう。わざわざ釣り上げてやったのだから」
部屋を出た時も殺気を感じるほどの視線を送ってきていたが、今もそれは変わらない。
ルルーシュは左手で頬杖をついたままマオに流し目を送り、相手の視線を再度掴んでやれば、マオが一歩前に出てきたのがわかった。その動きにぎょっとしたのはカレンだ。あのマオが、動いた?
「ちょっと、あんた……」
マオの目を見たまま、ルルーシュは空いている右手で隣のスザクの顎を掴み、自分へと近づける。唇が重なる瞬間に、今度はスザクがルルーシュの顎を掴んで、視線を自分へと戻させそのまま口付けた。

昼休み、学園中の生徒たちがひしめく、そのカフェテリアの一角だ。当然注目の的になる。

「……駄目だよルルーシュ。僕以外をその目で見るなんて」
「スザク、お前……実のところ相当怒ってるな?」
遊び半分も混じった仕掛けであったが、どうやら自身の片翼はこの件に関して相当怒っているらしい、とルルーシュはそこで知る。
「怒ってるよ、当たり前だろ? 見なよ、周囲の視線」
「引っかけただけなのに」
ルルーシュの「引っかける」のは多少どころか、とんでもない威力を発揮する。マオ以外にもそのおこぼれをあやかってしまった生徒達が、ギラギラとした視線をこちらに送ってきているのだ。罠を仕掛けていない時でさえも、注目を浴びるのに、わざわざ仕掛けたとあっては、その威力は計り知れない。
「……オレが欲しいのはお前だけだ。どちらにしても、さっさと片付ける。オレにとってもここは即刻立ち去りたい場所だ」
そう言ったルルーシュの目が、カレンを一度だけ視線の中にかすめる。その目の冷たさに背筋が凍るほどの、ぞっとした考えが足下から這い上がる。

───この人、何?

「さて、オレに付きまとわれても仕方ないな。その場所が確認出来なければ、何もならないだろう?」
跡を付けさせても、何も進展しない。場所を特定させるためにはこちらが相手を付けなければならないのだ。
凄まじい色気と、凍り付くような空気を瞬く間に消失させて、ルルーシュはごく普通の学生の顔になって計画の話を始める。そうは言っても、残り香はそう簡単に消え去るものではないため、追い続けるような視線は変わらずそこにある。そんなもの存在しないかのように振る舞うルルーシュの仕草は、よけいにマオを煽っているに違いない。

僕も何とかしなければ。

さっさと切り替えで話を進めるルルーシュを見ていたジノが、資料を広げ直す。
「……あんた、目的は何だ? 取引相手先のTOPが変わったところで、問題ないだろう?」
「オレ達は関係ない。兄は関係あるんだろう。それに……」
一旦言葉を切ってルルーシュはカフェテリアの外を眺める。あの植え込みの向こうに例の研究室がある。
「リフレインという薬の効能に、ちょっとした因縁を感じるんだよ。それだけだ。大した意味はない」
明日を迎えることを止めてしまう薬。過去ばかり追い続けた存在を知っている。その為に失ったものは一体どれほど大きいものであったか。それを知っているから、ルルーシュも動かずにはいられない。

母、兄、仲間達。そして片翼との平和な日々。

それ以上の追求は無駄だと悟ったのか、ジノは黙って資料をルルーシュとスザクに開いてみせる。
「薬の入手経路を掴めば、乗り込めるんじゃない?」
「そう……だな。スポンサー探しは兄上に任せればいい。乗り込む時はカノンも連れてきた方が破壊は早いな」
シュナイゼルの片翼のカノンは女性のような物腰から、優しげに見えるのだが、その中身は外見とは正反対ときている。
「破壊って……データや機材もあるから壊すのは、」
「一分あれば済む」
「一分……て、何よ」
冗談ともとれる内容だが、ルルーシュが冗談を言っているのではないことくらい、カレンだって理解している。ただ、理解は出来ても、うまく自分の中で消化出来ずにいるのだ。
───この人は一体何なの?
「原料と製法を消してしまえば、終了だな。そこを掴むのにヤツが必要というわけだ。こちらで動かすから、そっちで後を付けろ」
「ルルーシュ、何をする気?」
「別に何もしないさ。ヤツが勝手に追いかけてくるはずだ。しかし視線が鬱陶しいな」
ルルーシュは何かを払うかのように手を動かす。制服の袖口から見え隠れする手首までも白く、細く、周りを誘ってやまない。
ジノだけは意図的に『餌食』から外してあるおかげで、ルルーシュに色気は感じるものの、食らいつく感覚は持っていない。その為、周囲の視線には「おいおい」という感想しか持てないようだ。
「放課後に仕掛ける。うまくやれよ、女」
「ウルサいわね! ほんと腹立つわ、あんた!」
がしりとカレンが拳を握った時、後ろから明るい声がかかった。
「お兄様、お話は終わりました?」
「ナナリー」
途端にルルーシュの雰囲気ががらりと変わる。ナナリーから手を離したアーニャが、スザクに走り寄ると腕にしがみつく。
「アーニャ、どうかした?」
なんでもないとフルフルと頭を振るが、しがみつく手の力は緩まることはない。よしよしとピンクのふわりとした髪を撫でてやると、ようやくアーニャは顔を上げるが、いつもの笑みはなかった。ここに来てから、ルルーシュと同じようにスザクの心配ばかりをしているアーニャだ。この妹のためにも早くに終わらせたいと切に思う。



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