月なき夜にはあくなき夢を 16.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 16.」










まるで催眠術のようだ。
カレンが一番に思った感想はそれだった。
(何か仕掛けでもあるのかしら?)
思わずそう考えてしまうほど、その行動には首を傾げるしかない。

自室からあの2人が出てきたのだが、その2人が歩き出すと同時に「あの」マオがふらふらと後をついて歩きだしたのだ。

驚愕、というのはこういうことかとカレンは叫び出しそうになる自分を必死で止める。
あれだけ自分達が追い続けていたマオが───怪しいのは分かっていても姿さえ見せないのではどうにもならなかった相手が、いとも簡単に歩いて行くではないか。しかも、前を歩くスザクとルルーシュは、さして目的もないまま歩いている。あるとすれば、途中でマオを振り切ることだけだ。
あの目星をつけている茂みの付近で、消え失せることになっている。
───消え失せる。
カレンには今一つ理解していない。だって、そんなこと無理な話ではないのか?人混みの中や、街中であれば隠れる場所も多少はあるだろうから、付いてくる人間をまいてしまうことも可能であろう。だが、庭だ。多少は木々が生い茂っているとはいえ、低木も多く隠れるような場所もない。
それなのに、あの2人は笑って可能だと答えたのだ。
(普通なら、無理よ)
そう、普通の人間であるのならば、だ。カレンは今まで何度となく思い浮かんだ言葉をもう一度頭の中で反芻することになる。
───人間じゃないみたい。
だが、イヤミったらしい事ばかり口にするあいつは、自分達と変わりなくみえる。少なくとも外側と、あの口の悪さは。
(ホント、腹立つのよ!)
しかし、時折見せる瞳はひどく冷たく、それこそ人ではないような……。
(何考えてんの!)
余計な事を考えている暇はないと、カレンは見つからないようにマオの後を歩いていく。そして、もう一つの謎があった。マオがまるっきり後ろを振り向かないのだ。

あれだけ警戒心丸だしのマオが、周りなど関係ないとばかりに歩いていく。糸で操ってでもいるかのように、ふらふらと歩いていく。
それが一番最初に思った「催眠術」のイメージだ。だが、次に思い浮かんだのは「蜜に引かれる蝶」のようでもあると思う。
(どこがいいのかしら? そりゃちょっとは美形かなと思わなくもないけど)
あのルルーシュに注がれる視線ときたら、それはとんでもないものがあった。カフェテリアに座っていると、カレンですら視線が集中しているのが分かるほどだ。ルルーシュが髪をかき揚げた瞬間、痛いほどの視線を感じた。
(人気、というのとはまた違う気はするんだけど)

カレンがルルーシュに引きずられないのは、わざとルルーシュが外しているからだ。ジノと共に罠にかけられていないからなのだが、そんなことカレンにはわかるはずはない。それにカレンの関心は、ルルーシュよりも圧倒的にスザクの方へ向いていた。それがまだルルーシュの怒りを買っており、完全に敵対攻撃となっているせいで、カレンにはルルーシュの魅力は一切感じられないのだった。
「……あの女、お前の方を見てる」
「見てないよ」
スザクは笑ってルルーシュの腰を引き寄せる。
スザクの腕の中にしなだれかかるルルーシュは匂わんばかりで、さすがにジノも「おい」と思ったようだが、カレンは何の反応もなかった。
「どうこう言うよりも、色気に関して全く興味がないということだ。うぶどころか鈍感ではあの男も困るだろう。いい雰囲気に持っていっても、理解できずにぶち壊しにするに違いない、それで男に逃げられるパターンだな」
「……ルルーシュ、本当に彼女嫌いなんだね」
「お前が絡んだ時点で、好意など持てない。即対象外だ」
ふん、と横向くルルーシュの髪にスザクは唇を押しつけた。
「僕は君しか見てない」
「当然だ」
ルルーシュが首をひねってスザクに顔を向けると、そのまま口づけを交わす。

「あいつら……っ! 何してんのよ!」
「シーッ!! マオを煽ってんだろ?」
夕暮れもすでに薄い闇を纏い始めている。グラウンドから部活している生徒たちの声が聞こえている為、まだ時間は大丈夫だとは思うのだが、そろそろ早くしてもらわないと困る。なにせ、夜は学園中の建物がすべて施錠されるのだ。
「おい、カレン、動き出したぞ」
2人が移動すればマオも動く。そして、その後ろをカレンとジノが尾行していた。
この辺りじゃなかった?とジノに尋ねようとしたカレンが次に見たもの、いや見ることが出来なかったという方が正しい表現かもしれない。
一瞬、風が吹き抜けたかと思った瞬間、忽然とスザクとルルーシュが消えたのだ。
「……え?」
驚いたのは勿論マオもだろう。2人が消えたその瞬間に催眠でも解けたかのような顔をしており、あたりをしきりに見回している。
「ちょっと、あの2人は?」
「俺に分かる訳が……あ、マオが動く」
隠れる場所などどこにもないはずなのに、どこにもない。カレンとジノはどこに消えたのかと考えたのだが、マオは「秘密の場所」が暴かれたのかと思ったようだ。
勿論、それこそが狙った動き。
人というのは、それが後ろめたいことであればあるほど暴かれるのを恐れ、露見に繋がる動きをしてしまうものだ。

「だから……あいつは絶対に動く」
スザクの腕の中で、ルルーシュはくすりと微笑む。校舎の屋上、2人の背の翼が落ちゆく夕陽の中で、白く浮かび上がる。





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