月なき夜にはあくなき夢を 19.


君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 19.」










C.C.からの連絡に、ルルーシュは怒りを爆発させる。
「どうして気付かなかったんだ!」
この場所があのV.V.の念が残る場所だと分かっていたら、最初から関わることもなかっただろう。だが、あの忌まわしい出来事から、数百年もの年月が過ぎているのだ。山を切り開き、海は埋め立てられ、川の流れさえも変えてしまわれては、分かるものも分からない。
切った携帯をベッドに叩きつければ、それをスザクが拾い上げた。
「……全部あいつのせいだったのか……」
V.V.が消えた、あの大火の夜からすでに百年以上が経過している。消滅してなお、ここまで影響を及ぼすほど、あの闇の念は強大であったということが分かる。
───幸せな過去にすがりたいという薬の効き目、それこそV.V.の望みそのままではないのか。
自分に影響がなければ、厄介ごとなど簡単にスルーするシュナイゼルがこの薬に妙にこだわったのも、きっとこういうことだったのだ。
意識しないまま、V.V.の気配を感じ取り排除しようとしたに違いない。
「スザク、すぐに帰るぞ。こんなところに一秒だっていられるか!」
「でもルルーシュ、だったらなおのこと僕たちが片づけるべきだよ。やらないといつまでも残る。もしかしたら、執念がおかしな形に変化して、取り返しがつかない事態にならないとも限らない」
「……お前は」
スザクの顔を黙って見ていたルルーシュは、大きく息を吐き出すと手で顔を覆う。そのまましばらく動かずにいたが、髪をかき揚げながら次にスザクを見たルルーシュの瞳は、妖しげな光を湛えていた。
「なるほどな、確かに他人が片付けたとあっては、面白くない」
スッと差し出された手をスザクは取ると、そのままルルーシュの意向を汲み取ってベッドに腰掛ける。自身の膝の上に最愛の人を横抱きにして乗せ、その細い体を抱きしめた。スザクの肩に顔を埋めたルルーシュの白いうなじが目の前にあり、そこから類いなき芳香が立ち昇っている。その香りに誘われるまま、唇を押し付けた。
「あれもこれも全部あのおいぼれの仕業だった訳だな───お前にあんな顔をさせているのもアイツだったんだ」
「……ルルーシュの方が辛そうだったよ……僕じゃなくて」

スザクが自分が何者かも分からずに過ごしていたあの頃の日々はすでに遠い彼方であり、スザクのことを知っている人間が生きているはずのない年月が過ぎ去っているというのに、どうしてそれはふいに訪れたのか、それは本当に不思議なことだった。
『私のおじいちゃんの名前が朱雀っていうの』
藤堂が孫につけたという名前。残されていた写真。彼女───カレンと出会ったのは、何か意味があるのではないかと思っていた。
(……藤堂先生……凪沙さん……)
あのつらい日々の中で、唯一といっていい優しく、あたたかな記憶だ。
だが、もし、それがスザクに過去を思い出させ、揺さぶり、あげくにルルーシュを悲しませるものとして、ここに現れているのだとしたら。

「……絶対に許せない」


スザクから入った『最後まで片付ける』という連絡を、さすがのシュナイゼルも顔を顰めてすぐには承知しなかった。だが、自分達がしなければならないのだというスザクの決意に最後は根負けし、危なくなるようだったらすぐに手を引くこと、という約束だけさせた。
「いいね、スザクくん。我々にはもうV.V.はどうでもいいことなのだよ。君たち以上に大切な物など、ないのだから」
「はい、シュナイゼル兄さん」
シュナイゼルの後ろで『スザクの馬鹿!』と叫んでいる神楽耶の声が聞こえたが、スザクは心の中でごめんとだけ謝っておく。
まるであの決戦の前のようだ。
「……あの時はルルーシュが無茶をしてたよね?」
「そうだったか?」
クスと笑って、ルルーシュはスザクの腕に頬を摺り寄せる。ベッドに寝転がり、互いに握った手から生気を循環させていた。屋敷ではこのまま一か月、2か月と眠っていることも珍しくない。静かな穏やかな時間だ。
「そうだよ。皆が止めたのに翼まで出して」
「今度はお前が反対を押し切って動くんだな?」
「仕方ないよ、僕達は同じなんだから」
ルルーシュとスザクは互いに一つの魂の片割れ同士だ。それぞれだけに引き継がれたものもあるが、根本は同じなのだから、考え方が一緒になるのは当然の事。
しばらくただ黙って体内の生気の流れを追っていたスザクは、ルルーシュが寝息を立てて眠っていることに気付く。頬にかかった黒い髪を指先で撫でつけても、僅かに瞼が揺れるだけで起きる様子もない。

あの時は夜の間中、何度も何度もルルーシュの呼吸を確認していた。

細く頼りない命を抱え込んでいたルルーシュ。

「全部片付けよう。そして帰ろうよルルーシュ」





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