月なき夜にはあくなき夢を 18

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 18.」







少し女性向表現あり





同室の友人がベッドの中で寝返りを打った。
慌ててタブレットをブランケットの中に押し込んで寝たふりをしたが、どうやら起きることはなく、規則正しい寝息は続いている。カレンはほっと安堵の息を吐くと、再びタブレットの操作を続けた。
枢木スザク。
どれだけ探しても学校の名簿以上の情報は得られない。しかしその情報量は他の生徒達に比べると、あまりにも少なかった。それはスザクに限らず、ルルーシュ、そして妹だというナナリー、アーニャも同様だった。
(……なんなのかしら……あの人たち……)
サイドテーブルの引き出しから、古い一枚の写真を取り出す。誇らしげな顔で真ん中に立つ少年、手に持っている賞状は剣道大会優勝の文字と枢木スザクの名前。色あせてはきているが、栗色の癖毛も、翠の瞳も『あの』枢木スザクとそっくりだ。
(顔だけじゃなくて、剣の使い方も一緒なんてありえないわ)
スザクのあの竹刀の手首の返し方は、やり方を覚えなければ絶対に出来ない独特の型なのだ。そして、それが出来るのはその流派を受け継いできた、カレンの祖父の道場のみ。
(そういえば、元は剣舞からきてるっておじいちゃん、言っていたような)
祖父の道場の近くに、おかしな神社があるのだ。長い石段を登っていくと、広い境内がある。その広さに似つかわしくない、小さな小さなお堂がぽつんと建っているだけの、名ばかりの神社だ。昔はかなり大きくて立派な本殿があり、毎年奉納の舞が披露されたというけれど、そんな面影は現在どこにも残っていない。その舞からきているときいているが、祭りもない今は調べる術もなかった。
その神社の名が───枢木神社。
そして、カレンはおかしな話を聞いている。祭りも何も行われなくなったのは「御神体がどこかへ行ってしまったから」というものであった。紛失した、というのなら分からないでもないが、どこかへ行ってしまうというのはどういうことなのか。更に重なるように伝えられているのは「あの子は神の気に入り子だったから」という言葉だ。

あの子、ということは御神体は人間だったということなのか。そして、神が連れ去ったということなのか。

(どちらにしても人間じゃないじゃない)
途端に思い出すのがあの嫌みな男のことだ。彼のことをカレンは何度「人間じゃないみたい」と考えただろうか。
───神が連れ去った、御神体。
「っ!」
自分が何を考えているのかカレンは気づき、思わず起きあがった。
「そんな訳ないじゃないの!」
「……カレン? な……に?」
その叫びにはさすがに眠っていた同室の友人を起こしてしまったようだ。
「ご、ごめん。なんでもないから、おやすみ」
慌ててベッドサイドのライトを消し、写真を引き出しに仕舞うとカレンもベッドへ潜り込むと、何かを忘れるように瞼を強く瞑った。



ジノとカレンから聞いた場所とパスワードをシュナイゼル宛に送ると、ルルーシュはベッドへ仰向けに寝転がる。あとは向こうにやってもらえばいい。カノンにでも来てもらえば、消滅などたやすく終わるし、後始末はすべてあの兄にやらせればいいことだ。シュナイゼルは今までも時々暇つぶしといっては企業を立ち上げて、一気に成長させて安定した途端にさっさと他人に売り渡すということを繰り返してきている。成長させる過程だけを楽しみたいという困った人なのだ。それに巻き込まれる周囲の企業はたまったものではないだろう。そしてシュナイゼルの凄いところは立つ鳥跡を濁さずというところで、引き際は綺麗さっぱりきっちり始末していくところだ。
「あの馬鹿兄に任せれば、へまなどやらかす事はないだろうからな。あれだけは信用出来る」
「……ルルーシュ、それ誉めてるのか貶してるのか分からないよ?」
シャワーを浴びたスザクがタオルで髪の滴を拭いながら、寝ころぶルルーシュをのぞき込む。ルルーシュが腕を伸ばせば、スザクはそれに従って体を屈めると唇を軽く啄んだ。
「ん、もっと」
「さっきあげたばかりなのに?」
ルルーシュのボタンも止めずに羽織っているだけのシャツは前が肌蹴て、白い滑らかな肌がむき出しだ。その肌にはスザクが先ほどつけたばかりの赤い花が鮮やかに散っていた。
「翼を出したから、まだ足りない」
「それなら僕も出したのに」
「だからお前も満たせばいい」
ルルーシュがスザクの腕を引っ張ると、不安定なままのぞき込んでいたスザクはあっけなくバランスを崩して、ベッドへと寝ころぶ形になる。そのスザクにのしかかり、ルルーシュはスザクの履いていたパジャマ代わりのスウェットのボトムとともに下着を引きずり下ろすと、まだ力なく萎えたままの中心に舌を這わせた。
「ルルーシュっ!」
ありえないほどの快楽と、例えようもないほどの甘美な生気を与えてくれる愛しいそれを、ルルーシュは先端から根本まで舌先で丁寧に舐めていく。
「んっ……」
頭の上から聞こえる押し殺した声にスザクを上目遣いで伺えば、スザクは苦笑しながらルルーシュを見ていた。
「それっ、反則……だよ」
スザクはルルーシュの弱いところを知り尽くしているが、反対にルルーシュもスザクの弱い部分を知り尽くしている。そこをピンポイントに狙われるのも堪らないし、何よりもルルーシュにはもう一つ武器がある。凄みさえも感じる色気たっぷりの表情で、弧を描くような妖しい微笑みを付け加えられては墜ちない男などいるものか。すぐさま体勢を入れ替えてルルーシュを押し倒すと、相手はひどく楽しげに笑ってみせた。
「オレを貪れ、スザク。貪り尽くしてみろ」


ルルーシュから送られてきたデータを、すでに調べあげられている学校の地図とを照らしあわせる。
「なるほど、上手いやり方がされているね」
プリントアウトしたものを床に座り込んでピザを食べているC.C.に手渡すと、シュナイゼルはワインクーラーの中から一本ワインを取り出した。ソムリエナイフを使って、キャップを剥がし、コルクにスクリューを差し込む。後はフックをボトルに引っかけてコルクを抜くだけだ。ただこれだけの事なのだが、シュナイゼルが行うと、とてつもなくスマートに見えるらしく、何かの折りにそれを見ることが出来た女性社員が卒倒した───というのはあながち大げさかもしれないが、女ウケすることだけは確からしい。
「それが分かっているからシュナイゼル様も自らされるんですね」
「おや? カノンそれは勘ぐりすぎじゃないかな? 私はもたもたとワインの抜栓をされるのが嫌いだから自分でやるだけだよ」
それが真意かどうかはわからないが、シュナイゼルは毎回必ず自分で開けた。どちらにしてもこの程度のアルコールでは水代わりにしかならない。ルルーシュ同様、シュナイゼルも自分の片翼にしか酔うことはないのだから。
とはいっても水代わりとはいえ、口に含むものは美味な方がいい。グラスに注いだワインの味わいに満足な顔をしたシュナイゼルは、C.C.の隣で青ざめた顔をしている神楽耶の様子にそこでようやく気付いた。
「神楽耶殿?」
屋敷の外ではわずか50センチ程度にまで小さく縮んでいる神楽耶が、C.C.にしがみついている。
「神楽耶?」
「C.C.! 気付きませんか、ここ! この場所! 私がV.V.に殺されかけた……」
表情を変えたC.C.が指示を出す前に、カノンが古い地図を持ってくる。古い、古いもう触れれば散切れて飛んでいってしまいそうなその地図には、今は亡き同胞たちと暮らした場所が描かれていた。
「まさか、ちょっと待て神楽耶」
「C.C.、ここは川の流れを変えて作られた場所になるみたいよ、ほら。迂闊だったわ、まさかこんなものまで人間て変えてしまうのね」
自分たちが知っていた土地とはまるで違う景色に、気付かなかったということなのか。
「それでは……まだあいつの念が残って……」
それは執念がみせたものなのか。だからあいつの願いにも似たものが出来上がっている場所だというのか。
「お願い! ルルーシュ達を呼び戻して!」 
神楽耶の悲痛な叫びに、全員が一斉に動き出す。



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