月なき夜にはあくなき夢を 21.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 21.」









その夜は月のない空だった。
(月が……ない)
月は満ち欠けを繰り返すのだから、満月もあれば新月もある。だが、スザクにとって月のない夜など考えられないのだ。月だけではない、ルルーシュはスザクにとって光そのものであった。
───ルルーシュが消えた。
何かに導かれるように歩いているスザクの後ろを、泣いて目を赤く腫らしたカレンとそれを支えるようにジノが歩く。
「……ごめん、わたし……」
「君のせいじゃない」
きっぱりとした声に、かえって罪悪感がつのる。俯くカレンを慰めるようジノは肩を軽く叩けば、後方から爆発音が響きわたった。
「なんか……スゴいな……」
「ああ兄さん達だね。あの人達は容赦ないよ」
容赦ないのはお前もだろうという言葉を飲み込み、ジノは気になっていることを尋ねる。
「お前場所分かっているのか?」
迷うことなく足を進めているスザクがそこでようやく振り返る。
「ルルーシュの居場所? 分かるよ、当たり前だろう?」

最初の兆候を見逃したのが、全てのずれの始まりだったのだろうと思う。昔の栄華を懐かしむのは、何も年取った者達だけではないのだ。
ナナリーとアーニャによって、クラスの女王の座を奪われたカリーヌ。周りを取り巻いていたクラスメート達はいつしか離れ、現在中心はあの2人だ。小さな、本当に小さな世界ではあったが、学校という狭い場所で考えるとそれが全てと考えてしまってもおかしくない。もし考え方が違っていたら、誰か一人でもカリーヌの側にいたら、また変わっていたかもしれないが、凝り固まった考えでは奪われたとしか思いつかず、そんなカリーヌの隣にはもう誰もいない。
ひとりぼっちになったカリーヌに近づいたのは、マオだった。
最初は警戒したであろうカリーヌも、ナナリーとアーニャが悪い!とはっきり言ってもらえる嬉しさについつい心を許していったのだと思う。
最初からこれをマオは待っていたのだ。


それは今から12時間前に遡る。
明るい青空の下、ナナリーとアーニャのクラスは校庭にて体育の授業中だ。計画は今夜決行の予定であったが、特に2人は何も言わずに普通に授業を受けていた。クラスメート達も2人が今夜限りで消えることなど知る由もなく、通常の時間が流れている。それに許されうる時間の限り、学校生活なるものを満喫しておきたいというナナリーの望みもあった。
授業も中盤に差し掛かった頃、がたんと大きな音を立てて、一人の女子生徒が倒れた。後ろにいたアーニャが倒れた生徒───カリーヌを受け止める。
周囲をクラスメート達が取り囲んだ。カリーヌの顔色は蒼白状態であり、脂汗までかいていた。唇も青い。
「お顔が真っ青ですわ」
「最近、お元気がなかったようですし」
「休んだほうがいいんじゃないかと」
「アーニャさん、運びましょう」
ナナリーが手を貸して、アーニャと二人でカリーヌの体を支えた。カリーヌの異常なほどの体の細さに、二人は一瞬顔を見合わせたがそのまま保健室へと連れていく。その行動の一部始終を渡り廊下からマオが見ていることなど、気付くはずもない。
マオはヘッドフォンを外し、二人に引きずられるようにして歩いているカリーヌを見て、ふんと鼻を鳴らす。
「薬、与えすぎたかな。もうちょい後が良かったんだけどなあ」
それはこちらも同じだ。カリーヌが今日倒れなければ、もっと簡単に事は済んでいた。これも、念が作り出したものなのだろうか。
きっと、偶然ではないのだ。
保健室には教師が不在であった為ナナリーが呼びに行き、アーニャは空いていたベッドにカリーヌを文字通り転がす。
「寝てれば?」
戻ろうとしたアーニャの腕をカリーヌの手が掴んだ。





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