月なき夜にはあくなき夢を 22.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 22.」










カリーヌの、その腕の細さからは到底信じられないほどの力で掴まれ、アーニャはふりほどくことが出来ない。
「離して」
体の細さもおかしいと思ったが、様子もおかしく、アーニャはイヤな感覚に見舞われていた。
(おかしい。この子、変)
まず、頭に浮かんだのはナナリーだ。アーニャの大事な半身は今、ここにいない。
(ナナリー!)
「離して」
もう一度同じ言葉を発したアーニャの体は、次の瞬間倒れるように崩れ込む。足下に異臭を放つ布が舞い落ちた。


ナナリーがぱたぱたと廊下を走って教員室へと向かっていると、向こうから教室を移動しているらしい上級生のグループがやってくる。
その中の一人───女子寮副寮監をも務めるカレンが、走るナナリーに声をかけた。
「廊下は走らないで」
「あ、はい。すみません」
ナナリーは素直に足を止める。
「授業中でしょう? 何かあった?」
そこでナナリーは体育の時間に貧血で倒れた子を医務室に運んだのだが、教員がいないので探しに行くのだと答えた。
「……あの先生、すぐにいなくなるのよねえ」
他の女生徒達とカレンは顔を見合わせる。
「たぶん、職員室で他の先生達と喋っていると思うけど」
「はい、一度行ってみます」
「一緒に探してあげましょうか?」
一人の女生徒の申し出にナナリーは礼を言い、大丈夫ですと笑顔で答え、歩き出した。職員室には、確かに上級生の言うとおり保健室にいるべき教員がそこにいて、男性教師と雑談をしている。最も、相手の教師の視線は養護教諭の大きく開きすぎの胸元ばかりに気を取られているようだが。
そして、男に媚びをうっていた女教師は近づいてくるナナリーにむかって、いかにも邪魔、という顔を隠そうともしない。
「……なんなの?」
「貧血で倒れた子を運んだので、来ていただきたいんですけど」
「えー……ったく、仕方ないわねぇ」
それでは先生、と男に見せびらかすように胸を揺すって、養護教諭はナナリーと歩き出す。ナナリーは前を歩く教員は何故こんなに体全体をくねくねさせながら歩く必要があるのかと考えながら、後ろをついてく。おそらく、自分にはあなたが持っていない大人の女の魅力に溢れているとでも言いたいのだろうが、実年齢でいけば、ナナリーの方が年上とは表現するにはどうしようもないほど、上である。そして色気という点でも、ナナリーには「ルルーシュ」という、とんでもない存在が兄としているので、これもどうってことのないものになる。時折目の前の金髪が揺れるのだが、これも「揺れる」としか表現出来ない。黒髪を掻き上げるだけで半身をむしゃぶりつかせるだけの物を持っている兄は、すごいんだなとナナリーは変な感想をもった。
だが、面倒くさそうに保健室の扉を開いた二人は、無人の部屋が待っていた。
「……いないじゃないの」
「え、でも……」
ベッドの片方は、確かに誰かが使用した形跡だけは残っている。
「元気になって戻ったんじゃないのぉ?」
「……そうでしょうか」
半分追い出すようにナナリーを部屋から出した教員の後姿を眺めながら、ナナリーは何か嫌な感覚に襲われている。
(……アーニャさんの香りが……おかしい?)
兄たち同様、ナナリーとアーニャも互いの香りを感じ取る。互いを引き寄せる香りであるということについても、同じだ。
(何か……違う香りが混じって……?)
兄たち───勿論それはシュナイゼルとカノンもだが、ルルーシュとスザクが片時も離れたくないと始終くっついているのと同じように、ナナリーとアーニャも離れたくないとばかりにいつだって手を繋いでいる。本来であれば、融合すべき魂の片割れなのだから当然と言えば当然だ。
そして、ナナリーはここで気付く。
───アーニャの手を離している、自分の手に。離したことなどなかったというのに。
「アーニャさん!!」
大事な、何よりも大切な半身の名を叫んだナナリーが人の気配に振り返る。
「ねえ、これなんだと思う?」
マオの差し出した掌には、ピンクの髪が一房。

瞬間、ルルーシュとスザクが同時に立ち上がった。








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