月なき夜にはあくなき夢を 24.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 24.」




爆発による煙と埃が立ちこめる部屋の中で、マオはずるずると床へと座り込む。
その前には先ほどまでマオを恐怖に陥れていた少女が床に倒れていた。その後ろでは肩で息をしている状態の白衣の男が立っている。
「お、おそいじゃないか!」
助けにくるのならばもっと早く来いと言わんばかりのマオに対し、白衣の男の方が煩いといった表情を見せる。
「お前がここまで騒ぎを大きくしたんだろう! そっちこそこんな女相手に何をしている」
「何って、見ただろう、さっきの!」
マオが叫んでも、男は一体何の話だという顔をしている。
「羽があったんだぞ!」
だが、俯せに倒れているナナリーの背中にはそんなものは見当たらない。研究員らしき男は、馬鹿馬鹿しいとばかりにマオの話を聞くこともなく、ナナリーを肩へかつぎ上げる。薬で眠らされたナナリーの姿は、儚げな少女そのままだ。怪しく笑い、マオの体から何か引きずり出そうとした感覚が───未だ抜けずに手首に残っている。
「内密にやれと言っておいたのに、こんな騒ぎにして何やっているんだ」
「ウルサイな、ボクがやったんじゃないよ! こいつが、」
大きく崩れ落ちた壁や散らばった窓のガラスは、小さいが確実に爆発を起こしたことを物語っていたが、くったりと眠る少女がやったと叫んだところで、一体誰が信じるだろう。
男はマオに早く来いと合図をする。
「キングがお呼びだ。シュナイゼルが消えたそうだ」
最悪にも薬の情報をすべて流した後で。

爆発音が続き、何事かと生徒が騒いでいる中で、カレンとジノだけが「もしかしたら」という考えである場所に向かっていた。例の研究所への入り口だ。この学校の中で一番怪しい。だが。
「でもカレン、爆発は保健室の方らしいぞ?」
「保健室?」
ジノの言葉に、カレンが僅かに眉を顰めたその時、2人の側を風が吹き抜けた。

だが、その風はいきなり止まったと思うと、人の形をとる。

「え、な……に、あんた達……」
腕にルルーシュを抱えて立っているスザクがそこにいたのだ。

スザクの腕からふわりと降りたつルルーシュからは、重さが感じられない。いや、重さと言うよりも「実体感」が感じられないと言った方がいいかもしれない。スザクの腕に支えられたルルーシュはじっとこちらを見ているが、カレンが何度も抱いた思い───酷く冷たく、人間ではないような瞳の色を湛えていた。
「……ナナリーとアーニャが攫われた」
抑揚のない物言いが、却って重要性を押し出す。
「ナナ、って、ちょっと待って、わたしさっき会ったわよ!? 保健室に先生がいない……って……捜してた……」

保健室!

そこでさっきのジノの「保健室の方で爆発」という言葉を思い出すが、その瞬間に目の前にルルーシュが立っていることにカレンは驚きで口も利けない。
動いた様子もなかったはずなのに、一体、どうやって移動したのか。
「2人に会ったのか」
「……ナナリー、だけ」
「そうなると、そこで2人は別れて行動していたことになるよ、ルルーシュ」
あの2人が離れて行動するなど、考えたこともない。いつだって手を繋ぎ、兄たちほどではないにしろ、2人でぺったりとくっついていたあのナナリーとアーニャが離れるなどということはありえるのだろうか。
ルルーシュは静かに振り返り、瞳を細める。
「だが、今は2人いる。計画は全て白紙に戻し、お前たちの力はいらない。こちらで片付ける」
「な、ちょっと待ちなさいよ! 何を勝手な」
「不要で無用だ。必要性を感じない」
きっぱりと言い切ったルルーシュに顔を真っ赤にさせたカレンが詰め寄るが、ルルーシュの指先がカレンの肩を押したたったそれだけの事で、カレンの体は後ろへよろめいた。衝撃としては腕全体を使って押されたものに等しい。
「行くぞ、スザク」
伝えるべきことは伝えたと、歩き出したルルーシュとスザクに、ジノが「待て」と止めた。
「不要っていうのは無いだろう? 何か出来るかもしれない!」
ふん、と無視して歩き出すルルーシュと、小さく振り返るスザクを追いかけ始めたジノとカレンだが、そのスピードはほとんど走っている状態だ。相手は歩いているようにしかみえないというのに、これは一体どういうことなのか。
「……おい、ちょっと、お前達場所が分かるのか……?」
「分かるに決まっている。ここだ」

そこは、研究所に近い茂みであった。うっそうと生い茂る木々の中に隠されるように小さな入口が見える。おそらくは人目に付かぬように施されていたのだろう、だからこそ今日まで気付かなかった。今は、入り口を守るように頑強な体型をした男2人が立っている。さて、どうやってあいつらを倒そうかと、ジノが考えたその時にはスザクの姿はない。あろうことか、男達の前に立っているではないか。
「なっ、おい!」
「黙れ」
腕を組んで立っているルルーシュにそう言われ、ジノが黙ったその瞬間、スザクが左に立っていた男の懐に飛び込んだ。鳩尾に拳を入れると、すぐに体を反転させる。うなりを上げて蹴りあげられた脚の威力は、その男に悲鳴すらも上げさせることなく沈ませる。
息も乱していないスザクに、もう一人が目を見開いているのが分かった。







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