月なき夜にはあくなき夢を 32.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 32.」









ルルーシュを抱えあげたスザクが建物の外へと出てみれば、騒然とした空間が広がっている。地下にあった建物が吹き飛んだのだから、それは当たり前だろう。ただし、建物の大きさの割に、被害の規模はかなり小さい。シュナイゼルが施した仕掛けによるものなのだが、想像も出来ない事案なだけに謎が謎を呼ぶ事につながっていた。
「おや、ルルーシュ、スザク」
鋭い目でその崩壊を眺めていたシュナイゼルが弟二人の姿を見つけると、冷たい眼差しはすぐに柔らかいものになる。側に立っていたC.C.が呆れた顔を見せた。
「やっと来たか。全く、盛るのなら屋敷に戻ってからにしろ」
「薬を飲まされたんだ。仕方ないだろう」
気だるい表情のルルーシュがスザクの胸にしどけなく凭れており、情事の後の雰囲気はまだ残されたままだ。
「薬?」
シュナイゼルの問いに、ルルーシュは薬の小瓶を投げてよこすことで返事の代わりにした。キャップを捻りとったシュナイゼルは中身の液体に鼻を近づけると、顔をしかめ、すぐにキャップを元に戻した。
「……ルルーシュ、君はこれをどれだけ、」
「正確な量は分からないが、数本は飲まされた」
ため息すらも色がついているように思う。なにしろ自分自身で「媚薬」もどきを作り出せるようなルルーシュに、通常の人間用の催淫剤の効果が簡単に現れる訳がないのだ。焦ったマオにどれだけ飲まされたのか皆目見当もつかない。
「……相手を騙す必要があったからな、こっちも必死だ。ナナリー達は?」
「二人とも無事だよ。神楽耶殿のおかげで気は正常だ。生徒たちを守りに走っている」
ナナリーとアーニャは同時に目を覚ました。互いに通じ合っている為に、何も言わなくとも動きは同じである。
「教師はほぼ全員が関係者だ。研究室についても全て黙認されている」
「そうか、だからマオも放っておかれていたんだ……」
スザクが納得したように呟いた。
対人恐怖症、社会適応性が欠落しているとしてほとんど教室には現れない生徒。そんな生徒が退学にもならずに居残っていたのは、学園全体が『組織』として成り立っていたからだ。おまけにルルーシュが最初に呆れた「個人情報の自由閲覧」によって、生徒達の情報から獲物とすべき企業のTOPの選考が行われていた。
「成程、入学時に必要とされた情報はこの為か」
「そう。さっき調べたところ君たち四人の情報の閲覧回数はとんでもなかったよ」
それは実兄がシュナイゼルであるからだ。シュナイゼルによる白のキング───この計画の親玉二人のうちの片方の潰しを目の前で見ていた連中にしてみれば、この兄を持つ兄妹たちの入学はまたとない機会だった。しかしながら、そう簡単にはいかない。いくら調べても何も出てくるはずがないのだから、ご苦労な事だ。
「ナナリーたちのところに僕も行くよ。ルルーシュはここにいて」
「お前は今度もオレを置いていく気か!」
「でもまだ体が、」
ルルーシュはスザクの首に腕を回し、体にしがみついた。
「絶対に一緒に行くからな。離れるのは真っ平御免蒙る」
「ルルーシュ」
しばらくスザクの肩に顔を埋めていたルルーシュは、ふはははははと笑い声をあげてスザクを見る。
「お前がオレにはとことん甘いのはよく分かっている」
ほら早く連れていけと笑顔で返され、スザクは「もう」と口では言いながら最愛の片割れを抱えなおした。
「……僕が君に弱いのを知っていてそう言うんだから」
「惚れた弱みだ、あきらめろ。オレに勝つと思うなスザク」
「ホント、もうしょうがないなあ」
くすくすと笑ってスザクはルルーシュの頬にキスをする。後はよろしくと手を振るルルーシュに、C.C.もシュナイゼルも肩をすくめるだけだ。
「とりあえず、ここでの仕事は終わりましたわ」
最終確認を終えにこやかに笑いながら近づいてくるカノンの持つ端末に、シュナイゼルたちが目を向けるが、本人はその視線に対しさらに微笑むだけだ。
「……おい、カノン」
「あら、どうぞお気になさらずにC.C.。ちょっと研究結果に興味があったので、一つ頂いてきただけよ」
カノンの指先が動いてモニターが光る。表示された画面を見て、のぞきこんだシュナイゼルも苦笑する。
「これはまた」
「何かに役に立つかと」
にっこり笑う自身の片翼に、シュナイゼルは「参ったね」と笑うしかない。後ろでC.C.はここも尻に敷かれているなとやれやれとため息をついた。





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