月なき夜にはあくなき夢を 33.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 33.」







爆発はほとんどの収まりを見せており、建物がいくつか崩壊しているにも関わらず生徒たちへの人的被害は無に近かった。関係した数名のみが巻き込まれただけだ。それも絶対巻き込まれなければならない人物たちだけが、確実に巻き込まれている。
とはいえ、学校で爆発が起きているのだから騒ぎになるのは当然だ。そんな中でパニックにならないよう、カレンは走り回っている。一緒に動いているのがナナリーとアーニャだった。現在は皆で手分けして、校舎に取り残された生徒がいないが捜索中だった。
「本当に大丈夫なの?」
カレンにしてみればぐったりとしていた2人の姿を見ているので、気が気じゃないのだが、ナナリーとアーニャは口を揃えて大丈夫だと繰り返した。
「薬を嗅がされただけですし、神楽耶ちゃんに治してもらいましたから」
「大丈夫」
2人はそう言うと、目の前の瓦礫の山に手のひらを向けた。その瞬間に現れる片方ずつの翼、そして瓦礫が吹き飛ばされる。爆発によって校舎内は無茶苦茶で足の踏み場もないのだ。カレンが自分たちに関して大体のことを把握しているようだと知っている今、隠すことは何もない。
「薬……か」
今回の件には全て「薬」という言葉がつきまとう。元々の騒動の原因は「リフレイン」という薬から始まっている。先ほどジノと共にマオに全てを白状させたところだ。マオに飲ませた自白剤は素晴らしい出来のようで、ぺらぺらと話してくれた。それを呆然と見ていたのが研究者及び関係者だ。自分たちの精製した薬の効能を目の前で確認出来て、喜ばしいことであろう。もっともそれを自分たちにも処方することになっているため、全員顔面蒼白状態であった。
(そういえば、アイツどうしたかしら)

「ナナリーとアーニャに何をさせている」

思い浮かべた人物がいきなり目の前にいて、カレンは声も出せないほど驚くが、その人物───ルルーシュはカレンの様子に顔をしかめて不機嫌丸だしの表情を見せた。
「フン、何だその失礼な態度は。化け物でも見たようじゃないか」
「その鼻で笑うのを止めなさいよ!!」
スザクの腕に抱き抱えられたまま見下すような態度のルルーシュに尻尾を逆立てているカレンの横を、ナナリーとアーニャが飛ぶようにすり抜ける。
「お兄さま! スザクさん!」
ルルーシュを横抱きにしているスザクの両腕にナナリーとアーニャが両側から絡みついた。
「2人とも無事だね、良かった」
「どうして可愛い2人がこんな危ないことをしているんだ」
眉をつり上げ、怒りのオーラを出し始めたルルーシュにナナリーとアーニャは「自分たちから言い出した」と説明をし始める。
「カレンさんは止めてくださったんですけど」
「あたしたちがやらないと駄目」

穏やかに昔話をする懐古趣味ならばそれは人にとって時に必要なことだろう。だが、現在も未来もすべて拒否してしまっては、人は進むことすら出来ない。
───その極限にいた者を知っている。そしてその愚かさも知っている。
今回の騒ぎは自分たちが片づけなければならない問題であるとナナリーとアーニャも分かっているのだ。

「いい子だな2人とも」
スザクの腕から降りたルルーシュは、カレンに向かって小さなチップを放り投げる。
「何よ、これ!」
「兄からだ。今回の騒ぎの一部始終だろう。ナナリー、アーニャもう終わりだ」
「校舎には誰もいないよ。全員避難を終えている」
終わったんですか、と可愛らしく首をかしげる妹たちの乱れた髪をルルーシュは細い指で直した。そんなルルーシュの腰に手を回して隣に立っているスザクも笑顔だ。
それはまるで一隅にかけられた絵のようだった。
思わず見入ってしまったカレンだったが、ルルーシュの発した言葉に我に返る。
「オレたちのやるべきことは終わった。さあ、帰るぞ」


先ほどスザクから聞いた通りに道を辿れば、小さな広場へと出ることになった。そこだけ生い茂る木がない為にぽっかりとした空間が出来、その真ん中に見覚えのある剣が突き刺さっていた。おそらくは漂っていただろう思念などは、すでに跡形もなく消え去っている。木も育たないほどの重い空気がここにあったに違いない。
「……この子の役目も終わったんですね」
神楽耶が神剣に触れると、それまで保っていたはずの突き刺さっていた刃はぼろぼろとこぼれ落ち、柄の部分だけがころりと転がった。結ばれていた鈴が澄み切った音を奏でる。
「スザクが神楽耶の力を受け継いだように、お前を匿っていた間にこの剣もお前の力を持ったのかもしれない」
まだルルーシュとスザクが一つの卵の中で丸くなって眠っていた頃、神楽耶が何度もその卵を撫でては話しかけていた。その手のひらからスザクは知らずと神楽耶の力を得ていたのだ。それを考えれば長い間神楽耶を守るものとして存在してきたこの剣にも力が宿ってもおかしくはない。
「奉るものがないはずの神社が今まで存在してきたのも、この日の為だったのかも知れないな。私たちはV.V.が絶命してものと思いこんできたが、貫いたこの剣はあいつの気が僅かでも残っていることを知っていたのだろう」
それは微量ではあっただろうがこの剣が「残してしまった」と感じ、それを消滅させる為に存在してきたとしたら、それは何と表現できる思いなのだろうか。





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い
ナイス ナイス