宿星のつがい

弟を観察するシュナ様






 庭の賑やかさにシュナイゼルは視線を向ける。
「ナナリー、落とすよ」
「はい!」
 その声と共に白い影がふわりと木から落とされる。帽子は難なく妹の手の中に戻っていった。
「スザクさん、有り難うございます」
「どういたしまして」
 風に飛ばされた帽子が枝にでも引っかかったのだろう。軽やかな動きで木から降りたスザクにナナリーとアーニャが駆け寄っていく。その後ろにルルーシュが立ち、そんな3人を見つめていた。

 ルルーシュの片翼がスザクだ。魂の半身。一つの魂は2つに分かれて誕生し、互いに足りない部分を伴いながら成長し、再び一つの魂に融合していく。だがその過程において欠けてはならないプロセスをいくつも飛ばす形で誕生したルルーシュとスザクはもう一つに戻ることはない。それはシュナイゼルとカノン、コーネリアとギルフォード、ナナリーとアーニャも同様だ。だが彼らはかなり早い段階において自分の半身を手に入れることが出来ていた。
 ルルーシュは自分の片翼であるスザクを何百年も探し求めていた。
 それはルルーシュとスザクが持つ強靱な力を、敵であるV.V.に感づかせない為に父シャルルがとった策ではあったのだが、片翼がいない為にルルーシュの体も精神もかなり極限へと追い込まれることになったのも事実だ。

 城の大広間のざわめく人々。その人々をルルーシュは壁に凭れながらゆっくりと眺めている。眺めるというよりは「吟味」しているといった方が早いだろう。
「ルルーシュ、どうかな」
「……別にこんな場を設けてもらう必要もないのですが」
 それでもルルーシュの視線はなめるように移動していく。
「……どれも不味そうだ」
 シュナイゼルは弟の言葉に苦笑する。自分たちは人間ではない。ほぼ不老不死の長命種。生きていく上に必要なのは人の生気だ。自身の片翼がいれば互いに生気を循環させることで十分賄える。
 ルルーシュにはその片翼がいない。
 その為に「人間」から生気を吸い上げる必要があった。といっても別に生き血を吸う訳でもなく、吸ったからといって相手も同様の種に変化させる訳でもない。人のエネルギー代謝を吸い上げるだけだ。そして効率的に得るのに最も適している行為がセックスだった。
 獲物を捕らえる為にルルーシュは罠をはり、相手を捕らえ、たっぷり吸い上げる。生気を吸い尽くされた相手は体力回復まで動くことが出来ず、なおかつルルーシュとの記憶も消えゆく。記憶が残らないのだから適当に捕まえた相手で賄えばいいのであるが、兄シュナイゼルは「もう少し慎重に動きなさい」と忠告してくるのだ。
 自分たちは人間ではない。不老不死とはいえ、首でもはねられたらそれで終わりだ。しかも今の世は魔女狩りなど異質な者を拒んでいる。
「わざわざ無害な人間ばかりを揃えたということですか」
「君だってそこそこ体力のあるものがいいだろう?」
「まあ、それはそうですけどね」
 満足する前に果てられては楽しむことも出来ない。ルルーシュの視線が一人の青年で止まる。相手の瞳を捕らえた瞬間、相手はルルーシュの罠に堕ちていくしかないのだ。通常でも色香をおしげもなくまき散らし、襟元をゆるめるだけで向こうから食いついてくるルルーシュだ。これで自身から仕掛けるのだから、相手には選択肢の余地はない。ふらふらと吸い寄せられるように近づいてくる青年に笑みを浮かべながらルルーシュも歩き始める。向かう先はベッドルーム。
 こんな感じで毎日とっかえひっかえ相手を換えていたルルーシュの前にとうとう片翼が現れる。
 スザクだ。
 
 飛ばされた帽子を手にナナリーがアーニャと歩き、その後ろをルルーシュとスザクが並んで歩いてくる。
 表情が豊かで、まっすぐに育った健やかそうな少年というのが、シュナイゼルから見たスザクの最初の印象だった。最もそれは表面上だけで、実際は「生きている御神体」として地元では勝手に崇められたり、忌むべき存在とされたり、なかなか波瀾万丈な日々を送っていたようだが、それを感じさせない空気が彼にはあった。
 妖しいまでの色を滴らせているルルーシュの半身と言われても、それは信じがたい程2人の纏う空気は違っていたのだが、元々足りない部分を賄う為なのだから違うのは当然と言われればそうなのかもしれない。そしてシュナイゼルを驚かせたのは、ルルーシュの方がスザクに夢中になっているということだ。それは今も。執着するということがほぼなかったルルーシュが、スザクに関してだけはそれを剥き出しにしてくる。スザクに触れるもの全てに嫉妬し、自分のモノであると主張する。スザクには我儘を言い、兄や父には見せなかった甘えた表情をスザクに向け、膝によじ登り、キスを強請る。オレ様な態度はどこへやら、スザクに窘められると、文句を言いながらも素直に頷く。
 きっとこれがルルーシュの本当の姿だったのだ。
 ごく当たり前に笑い、怒り、喜ぶ。
 そんなルルーシュを引き出したのは間違いなくスザクだ。
「……これは彼に感謝するところなのだろうが……」
 屋敷内に入る前にルルーシュがなにやらスザクに囁くのが見え、次にはスザクがルルーシュを抱き上げていた。これだけ時が過ぎても変わらず仲が良すぎるくらい良いのはいいことではあるのだが、この2人、一度ベッドルームに入ったが最後、全く出てこなくなるのだ。C.C.がからかい半分で「よほど具合がいいらしいな」と突っ込んでみたが、「ああ、抜群に相性がいい。スザクは最高だ」と返され、それ以来そこの部分に関してはノーコメントで通すというのがこの屋敷内での暗黙のルールとなっている。最も、生気の循環も兼ねて、2人で抱き合ったまま何日も眠り込んでいる場合も多く、部屋に入ってもいいものか迷うことにもなる。
 パタンとドアの閉まる音が上階から聞こえてくる。
 さて、今回は一つの季節だけで済むだろうか。




***
自家通販、入金確認出来ました方から発送しております。Twitterに発送状況をUPしてます。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 21

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい