まおうさま 2.

ちっちゃな魔王様の戦い









 現在魔王様は戦いの真っ最中である。
 この戦いは絶対に負けてはならない。
「うーっ」
 周囲の者たちも「頑張れ~」と応援中だ。
「頑張ってください、魔王様!」

 魔王、最大の敵、それはピーマンである。

「それをやっつけたら、プリンですよ!」
 プリン、それは魔王様の大好物である。プリンが待っている、こいつを片づけてしまえば、あのぷるぷるで甘い、おいしいプリンが目の前に!
 魔王様は自分の前におかれている白い皿に乗せられたピーマンを睨みつける。
「ルルはせかいいちのまおうだ! おまえなんか!」
 手にしたお子さま用スプーンにはくまさんがついている。くまさんも応援してくれている。これを一口、ぱくんと食べてしまえばこの戦いは終わる。
「う……う……うううええええええん」
 
 今日は大好きなオムライス。卵でくるんと包まれたチキンライス。ケチャップ味のそのご飯の中に細かく刻まれたピーマン。魔王様は、その細かいピーマンを全て取り除き、お皿のすみっこによせておいた。
「ごちそうさまでした!」

「魔王様! 駄目です!」

 キッと睨むのは自称魔王様の騎士、枢木スザクである。自称なのは、さすがに魔王に「騎士」はおかしくないか?ということだからだ。まあご本人は「魔王ルルーシュの騎士だ!」と名乗りまくっている。
「食べ物は残しちゃいけません」
 魔王ルルーシュは、とてもおりこうさんだ。おりこうさんなので、好き嫌いはしていけないことはわかっているし、ご飯は残さないようにしなければいけないこともわかっている(そもそも魔王様が食べきれる量しか盛りつけていない)。
 でもどうやっても好きになれないのは、このピーマン!
「やっぱり、たべられないよおおお」
 だって、こいつ苦いんだもん!

 メイドたちも手を替え品を替え、魔王様が食べられるようにと頑張ってくれている。今日だってケチャップ多めの濃い味付けでなんとかしてくれようとしたのもわかっているが、嫌いなものは嫌いである。嫌いなものの味はちょっとやそっとでは消えない。だいたい子供の嫌いなものに、ピーマンは定番中の定番だ。
「スザク、たべられないよおお」
 うるんと涙の浮かんだ上目遣いで、騎士を見る。
 実のところ、魔王様の戦いはここにある。いつもは甘々な騎士が時折厳しい顔になるのだが、これを豹変させ、いつもの騎士に戻す。これはタイミングが難しく、少し間違えるともっと厳しくなってしまうため、ここ!という見極めが肝心なのだ。
「……はあ。仕方ないですね、じゃあ僕が半分食べて上げますよ」
「……ごめんなさい、スザク」
 ため息をついているスザクに、ここで間違っても「わあい!」と喜びを顔にだしてはならない。神妙な顔でくまさんのスプーンに乗せたピーマンをスザクに「あーん」と差し出すと、スザクも儀礼的な顔のまま、そのスプーンに乗せられたピーマンをぱくりと食べた。半分と言いつつ、ほぼほぼ食べきったスプーンを魔王様がぺろりと舐めて終わりである。甘やかされて大満足な魔王様はあとは超ご機嫌な顔でプリンを食べるだけである。


「あんたもねえ、最初から食べてあげればいいじゃないの」
「駄目だよ、そんなに甘やかしちゃ。立派な魔王にならなくちゃいけないんだから」
「……ニヤケた顔で言われても説得力ないから」
「あれ? 顔に出てる?」
 顔に出てる?ではない!とカレンを始めとして周囲のものたちは思うのだ。
「そういえばさあ、最近ピーマンの出没少なくない?」
「気のせいでしょ?」
 気のせいか~と鼻歌交じりで戻っていく騎士の後ろ姿に全員、蹴りを入れてやりたいと思っている。こちらとしては、出来ればあのお可愛らしい魔王様に大嫌いなものなど出したくない。
 騎士が魔王様と「あーん、ぱく」がしたくてやってるのは皆わかっているのだ。魔王様もタイミングを見計らっているが、騎士の方も考えて行動している。
「スザク、たべて」
 これを言わせるまでジラして我慢させているのだ。
 そして、魔王様もこれがやりたいのである。
 
 甘やかされたい魔王様と甘やかしたい騎士に振り回される周囲の者たちであった。







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