噂のバカップルたち

双子シリーズです。






 アッシュフォード学園には噂の双子が二組いる。

「会うの止めようか」

 スザクがようやっと言葉にした途端、目の前のルルーシュの細い眉が僅かに顰められたが、本当にそれは「僅か」であり、すぐにへにゃんと情けなくゆがめられた。
 鼻にツンとしたものを感じているに違いない。美しいアメジストの瞳にみるみる涙の膜が張る。 まるで作り物のような美貌、頭脳明晰、クールに見えて実はとても優しい。学園中の皆から憧れの対象である生徒会副会長の姿は今はどこにもない。 
 ぽたぽたと大きな涙の粒が瞳からこぼれ落ちていく。
 とうとう耐えきれなくなったスザクが大きな声で叫ぶ羽目に陥った。
「ルルーシュっ!!!」


「……すまない」
 ちょんと座って、未だ鼻を赤くさせて時折すすっているルルーシュの前でテーブルに突っ伏しているのはスザクである。その隣のテーブルではスザクの双子の兄であるゲンブと、ルルーシュの双子の兄であるゼロが面白そうににやにやと弟カップルを眺めている。
 ルルーシュはハンカチをぎゅっと握りしめながら、再び「すまない」と繰り返した。

 スザクから別れを言い渡されたら、どうなるんだろう。

 今回の騒ぎはルルーシュのこんな斜め上を行く想像から始まった。
「それで? 結論としてはどうなんだ」
 楽しそうにゼロは弟に今回の作戦の結果の報告を求める。なにしろ呆れてものも言えないこの兄を押し切ってまでの作戦だ。なにかしらの結果を見せてもらわないと納得いかないではないか!
「……スザクに言われて胸が潰れるかと思った」
「成程、それは重傷だ。スザク最低だな」
「ゼロ、僕はルルーシュに言えって強要されて言ったんだよ。そんなこと冗談でも言いたくないのに! 言った僕もずたずただよ」

 大好きな大好きなルルーシュから突然「スザク、オレに別れを告げてくれないか」と言われた衝撃ときたら、それは例えるものなど見つからないほど大きなものであった。
「ルルーシュ、僕のこと嫌いになった!? ねえ、それとも他に好きな相手でも出来た!?」
「そんな事がある訳ないだろう! 何を言っているんだ!」
「ルルーシュが言ってるんだよ!」
 大好きなスザクから別れを告げられた場合、自分はどんな対処をするのかという疑問を解決したいというおかしなお願いをルルーシュからされたスザクは、ルルーシュの兄のゼロへと視線で助けを求めたがそれは即座に却下された。
「スザク、ルルーシュからのお願いだぞ?」
「そうだな、それは受け入れるべきものだと俺も思う」
 ゼロはルルーシュとそっくり同じ容貌で赤い瞳の色が違う。そしてルルーシュよりも冷たさを感じさせる雰囲気が素敵と学園中でこちらも大人気だ。そしてそのゼロの恋人なのが、スザクの双子の兄ゲンブである。ゼロとルルーシュは瞳の色でなんとか見分けがつくが、ゲンブとスザクは表面上はそっくりだ。完全に見分けられているのは実の両親とゼロとルルーシュのみ。それで枢木双子を見分ける方法として、ゲンブの方がクールだとか言われているのだが、この噂に関してスザクは意義を唱えたい!
 冷たい雰囲気が素敵? クール?
 この二人にはそんなものは存在しない!
 あるのは弟たちをからかうをとことん楽しむ、悪魔のようなバカップルだけだ!


 とにもかくにも半ば押し切られる状態でスザクはルルーシュに別れを伝えた。別れたいなんて嘘でも絶対に言えない。「会うのをやめよう」くらいしか言えなかった。
 それでも、本意ではない言葉というのは自分をも傷つけるのだとスザクはここで知った。
「……スザクと離れたら生きていけないと分かった」
「僕もだよルルーシュ。泣かせちゃってごめんね。でも泣き顔を見られて良かったかな、こんな顔は二度とさせない。だから僕と一緒になって」
 ルルーシュは瞳を丸くしてから、少し俯いた。こんなルルーシュは最高に可愛い。いつもは綺麗でとびきりの美人だが、スザクの前では可愛くなる。そこがたまらない。
「スザク、それはプロポーズだ」
「うん、プロポーズしてるんだよ」


 ブルーになった空気は突如としてピンクへと劇的変化を遂げている。
「ゼロ、あれどうだよ」
「いいんじゃないのか。ある意味これで完全に公認になる」
 何しろここはアッシュフォード学園内のカフェテリア。さっきから完全に注目の的である。
「これでスザクにちょっかいを出そうという女も減るだろう。ルルーシュが可哀想になるほどうろたえていたんだ」
「ゼロはルルーシュに甘いからなあ」
 ゲンブはやれやれと課題として出されていたテキストを広げる。
「何を言っているんだ。お前だってスザクに甘い。今回のことに賛成したのはルルーシュを狙う奴らへの牽制になるからだろう」
「スザクがウチでキレまくるんだよ」
 仕方ないじゃんと言うゲンブではあるが、こっちも弟の心配をしている兄でもある。
「ルルーシュの場合は女の子だけじゃなくて男からも相当なアプローチかけられてるから」
「なんといってもオレの弟だからな、さすがルルーシュだ」
 にんまりと笑うゼロにゲンブは再度大きなため息を吐き出した。
「ゼロも気をつけてくれよ」
「そのセリフ、そっくりお前に返す」
 ゼロも同様にテキストを広げかけ──その手を止める。
「ゲンブ、オレの部屋でやらないか?」
「課題が進まないのは決定されるけど?」
「何を言っている。課題終了させないとオレには触らせないぞ」
 一瞬頭を抱え込みかけたゲンブであるが、そちらの方が早く片づくのは火を見るよりも明らかである。
「……いきます」
 その返事にニヤリと笑ったゼロは体を乗り出すと、そのままゲンブの唇に自分の唇を重ねた。
「契約成立。あとで倍で返せ」
「え、倍以上になるけど」 
 トントンとテキストを整え、二人は鞄に仕舞うとすぐに席を立つ。
 見せつけるように帰っていく兄カップルと、プロポーズでそこら中をピンクに染め上げている弟カップル。
「あいつら、もう余所でやってくれよ!」
「ゲンブとゼロの二人は絶対にわかってやってるから!」
「……ルル、大丈夫なのかな。全然回り見えてないよね」
「そうねえ、気づいた時の反応は凄いわよ、あっ、気づいた」
 自分たちがどこにいるのかルルーシュが気づいたようで、顔を真っ赤にしたまま猛ダッシュするものの、スザクの足に勝てるはずもなくあっけなく捕まっているが、スザクの繋いだ手をふりほどくことなく、結局ラブラブで帰っていくのだ。一度振り返り、黒い笑みを見せるスザクの姿などルルーシュには見えていない。

 アッシュフォード学園には噂の双子が二組いる。今日も学園はこの双子たちに振り回されるのである。







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