リフレッシュ!

スザルルに振り回されるC.C.とカレンの労い話。






「私がルルーシュの恋人だと?」
 カレンから発せられた言葉にC.C.は思い切りしかめ面をしてみせた。
「誰だ、そんなデマを流している奴は」
「デマじゃないわよ、そう信じてるってだけ」
「そっちの方が最悪じゃないか、誰だ」
「スザクしかいないでしょ」
 その人物の名前が出た瞬間、C.C.は大きなため息を吐き出した。
「あいつか。この前もしつこく聞いてくるから否定してやったんだが」
 C.C.は横を通り過ぎるウエイターを掴まえると、ピザの追加を頼む。ウエイターはすでに何枚も重ねられている皿を綺麗に片づけ、まるで最初の一枚目の注文であるかのように丁寧に頷くと、下がっていった。
 実に静かでよい。
 追加でもしようものならば、まだ食べるのかという顔でこちらを見てくる黒髪のいけ好かない奴とは大違いだ。
「だがカレン。ルルーシュはルルーシュで、スザクとお前の仲を疑っているだろう?」
「最悪よ」
 カレンはレモンのジェラードが添えられた小さなチョコレートケーキに大満足しながら、向かいに置かれたメニューに目を向けると、C.C.が「ほら」と手渡してくれた。甘いものを食べて今度は塩気が欲しくなるのだ、よく分かってくれて女同士というのは本当に助かる。パスタのメニューを眺めながら、カレンは幸せな気分に浸る。
 そんなに食べると太るよ、と訴えてくるどこかのあの翠碧は本当に苛立たしいものだ。
「ルルーシュってば、こっちをじーっと見てくるのよ。同じ道場だっていうだけなのに」
「こっちだって同じだ。あんな嫌みな奴はこちらがお断りする」
 C.C.はグラスの水を飲み、ちらりと時計を確認する。
「カレン、時間がなくなるぞ」
「やだ、本当だ。お迎えの時間になっちゃう。すみませーん、オーダーお願いします」
「……頼むのか」
「あんただってピザ頼んでたでしょ!」


 アッシュフォード幼稚園はお迎えの保護者で賑やかだ。
 担任のシャーリーからナナリーを受け取ったC.C.は、下からじーっと眺めてくる翠碧の瞳にため息をついた。
「いいか、スザク。私はルルーシュのお嫁さんにはならない」
「ほんと!?」
 よいしょとナナリーを腕に抱えなおしたC.C.は「ああ」ともう一度頷いてみせる。そもそも何故に五歳児の嫁にならねばならないのか。しかもあんな生意気なやつなどこっちがお断りである。
 そこへやってきたのは噂のルルーシュである。

「先生に挨拶はしたのか?」
「うん、ミレイせんせーにはした。シャーリーせんせー、さようなら」
 ぺこりと頭を下げる子供にシャーリーは「可愛いっ!」と悶えまくっている。
 ルルーシュとナナリーの母マリアンヌはC.C.の昔からの知り合いだ。マリアンヌは世界中を仕事で飛び回っており、無職でふらふらしていたC.C.は「うちの子の面倒みてくれない?」と半ば強引に契約を結ばれ、現在に至る。多少面倒ではあったが、ルルーシュはプライドだけは途方もなく高い子供であったがゆえ、C.C.に世話をかけることを恥とするようで、手を煩わすことはほぼない。妹のナナリーは手の掛からない非常にいい子であるので、こちらも問題ない。

 一つ問題とすれば。
「ルルーシュ! C.C.はルルーシュのおよめさんにならないって!」
 あーよかったあっとにっこにこの笑顔が眩しいこのガキンチョ──もとい枢木スザクという子供が大問題の原因だ。
「カレンもスザクのおよめさんにはならないっていってた」
 こちらのルルーシュはちょっと照れ気味にそう報告する。
「だーかーら、いっただろ! あんな、あばれんぼうの──うわっ」
 がしりと後ろから掴まれたスザクはおそるおそる振り返ると、想像に違わず笑顔のまま怒っているカレンがそこにいた。
「誰が何ですって?」
 カレンは有無を言わせずスザクを抱えるとすぐに自転車の子供用椅子に乗せ、ヘルメットを手渡す。
「ほら、すぐに道場に行くわよ!」
 C.C.と同じく、カレンもスザクの父から子守を頼まれている。と、言っても、元々指導員のバイトをしている藤堂の道場にスザクも通っており、バイトのある日だけこうして幼稚園で捕獲し、道場に押し込むということだ。こうでもしないとこのガキンチョはすぐに稽古をサボって(主にルルーシュのところへ)遊びに行ってしまう。

 ルルーシュとスザクはほっぺにちゅっをしまくる仲である。お互いに一目惚れをし、将来を誓いあっている。

 おかげで、C.C.はスザクから、カレンはルルーシュからメラメラとライバル視されるという迷惑を被っているのである。本当に迷惑甚だしいことこの上ない。
「えー、だっておれさあ」
「スザク、あんた大会近いわよね? 優勝したら格好いいんじゃない?」
 
──かっこいい! おれかっこいい!

「ルルーシュ、おれゆうしょうするから。つよくなってルルーシュをまもるんだ!」
 格好つけてても、お子ちゃま椅子に乗っていてはどうしようもないのだが、あえてカレンは何も言わない。カレンの仕事はこいつを道場に放り込むことだ。あとは藤堂や凪沙がやってくれるだろう。
 元気にばいばーいと手を振っているスザクにちょっぴり寂しそうな顔をしたルルーシュに対して、C.C.はきちんとフォローを入れる。 
「ルルーシュ、大会におにぎりでも持って応援に行くのはどうだ? 今から家で練習してみよう」

──おにぎり! おうえん! かっこいいスザクがみれる!

「……C.C.にしてはいいアイデアだね」
 ここでC.C.もカレンと同じく何も言わない。C.C.の仕事はルルーシュとナナリーのお迎えをして、マリアンヌ帰宅まで一緒にいることだ。ルルーシュはスザクにいいところを見せたい為におにぎりの練習をするはずだ。ナナリーもやりたがるだろうが、ルルーシュはナナリーには「いいお兄ちゃん」であるので、何も言わずとも面倒をみてくれる。おにぎりがあるのでおやつもこれでいい。
 完璧である。

 後日保護者二人は無事にやりすごした本日を互いに労りあう。
「練習はきちんとしていたみたいよ」
「こっちも四苦八苦していたようだが、なんとかなったようだ」
「本当に大変よね」
「カレン、このホテルにあるデザートビュッフェだが、」
「えーっ、どれどれ?」
 こちらはこちらで次のストレス発散の楽しみを探すのであった。






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