好きって言ってよ



 生徒会室の賑やかさは扉が開いたスザクを苦笑させるものだった。
「……皆楽しそうだね」
 抱えて持ってきた資料のファイルを机の上に置いたスザクに、リヴァルが「聞いてくれよ」と情けない顔を見せる。
「ルルーシュがさあ」
「ふん、オレがそんなものに引っかかるか」
 名指しされたルルーシュは相変わらずのクールさで、スザクに泣きつくリヴァルを一蹴した。

「ええと……学園祭の話は?」

 そう、現在ここアッシュフォード学園生徒会室では、学園祭のプランについて話をしているはすなのだ。先ほどスザクが抱えてきた資料は過去の会計報告書であり、年々増え続ける予算に学園側からとうとう「待った」の声がかかってしまったのである。いくら生徒会長のミレイが学園理事長の孫であるとはいえ色々問題もあり、孫娘の好き勝手にさせていた理事長も「これはアカン奴」と思ったらしい。そんなこんなで「今年はちょっとだけ地味にしてくれ」となった学園祭の計画を練っているはずのメンバーが賑やかに騒いでいるのだから、スザクの入室後の苦笑もわかるというものだ。この調子では地味になんて絶対に無理だろう。
「あら、私たち学園祭についての話し合いをしていたわよ、勿論。スザクくんまさか疑っている?」
「あー……ええとそんなつもりはないんですけど……」
「地味にしろっておじいちゃんが言うから、色々考えていたんだけどね。地味にも限度があるじゃない?」
 学園の皆ばかりでなく、近隣住民も楽しみにしているのだから地味にするにも限度がある!とミレイは叫ぶが、それをいうなら派手にするにも限度がある。
「もうわかんなくなって、学園生徒全員でだるまさんころんだ!とか!」
「全生徒でですか?」
 呆れたような感心したような返事をしたスザクに、ルルーシュが細い眉を顰め首を横に振った。
「スザク、気にするな。結局会長は面倒になってきているだけだ。花火の数を半分に減らすだけで大幅な予算削減になる。模擬店も8割に減らせば学園側から提示された予算は軽くクリアだ」
「花火は減らしたくないって言ってるでしょ」
「だったら特大ピザを無くすしかないですね」
「それも駄目〜」
 この調子では話は平行線を辿るばかりだろう。ぎゃんぎゃんと騒ぐ生徒会長と冷静に却下を繰り返す副会長を横に、スザクは振り返った。
「……リヴァル、それでさっきのは何だった?」
「それがさあ」
 ルルーシュの引っかからない、とは一体何だったのか。
「スザクくん、ピザを10回言ってみてって知ってる?」
「ピザ、ピザ、ピザって繰り返させて『肘』って引っかける、あれ?」
「そう」
 ああ、引っかからないってそういうことか。
 納得しているスザクにリヴァルとシャーリーが交互に説明する。学園祭の話し合いは膠着状態にあり、だんだん飽きてきた空気の中でリヴァルが「10回言ってみて選手権」なる案を出してきた。

「なんだ、それは」

 意外にも知らない様子のルルーシュに、チャンズとばかりにリヴァルが色々仕掛けたのだという。
「ピザピザピザピザピザ……」
「はい、じゃあここは?」
「肘」
「いやいやそこは膝って言おうよルルーシュぅ」
 極めて冷静に正解を答えるルルーシュにがっくりと肩を落とすリヴァル。
「じゃあ今度はシャンデリアを十回!」
「シャンデリア、シャンデリア、シャンデリア……」
「ガラスの靴を拾ったのは!?」
「王子だな。落としたのはシンデレラだが」

「もうこんな感じでさ……」
 スザクはクスと笑い、ルルーシュに声をかけた。
「ねえ、ルルーシュ。好きって10回言ってみて?」
「何だ、スザクもオレを引っかける気か。仕方ないな、そう簡単には引っかからないぞオレは」
 自信満々なルルーシュが唱え始める。

「好き、好き、好き、好き……好き……」
「まだ五回だよルルーシュ」
「お前、これ……一体」
「いいから、続き」
 だがルルーシュの方がこれはどうなんだと思い始めている。何しろ、ルルーシュが「好き」と言い始めた瞬間からスザクの空気が変わっているのだ。しかも──近い。
「……好き、好き、好き……」
 何か違う。だが一度始めてしまったのだから、これは早めに終わらせた方が身の為だ!
「好き、好き! はい10回だ! それでどうなるんだ」
「どうにもならないよ。ルルーシュ、あまり好きって言ってくれないから僕が満たされたかっただけ」
「何だと!?」
「だって言ってくれないし。あ、大丈夫だよルルーシュ。僕も10回言ってあげるからね」
「いや、いいっ!」
 逃げようにもがしりとスザクに腕を掴まれて、ルルーシュは動けない。

「好き」まずは手を握り
「好き」次に瞳を見つめて
「好き」声のトーンをわずかに下げて
「好き」指先で髪に触れる
「好き」髪から頬に指を移動させ
「好き」さっき好きだと言ってくれた唇にも触れる
「好き」顔を近づけて
「好き」甘い吐息をたっぷり含ませて
「好き」耳元で囁く

「大好きだよルルーシュ」

「ス、スザク!」
「ん? 大丈夫だよ」
 鈍いルルーシュは気付かないかも知れないが、スザクが「好きだと言って」と促した時から生徒会メンバーはその「不穏な空気」に敏感に気づき、早々に退散しているのだ。夕暮れ近づく生徒会室には2人の他には誰もいない。

「ねえ、もう一回好きって言ってよ」



台風被害に遭われました方々へ、心よりお見舞い申し上げます。


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