騎士は白馬に乗っているとは限らない 240

愛すべきヘタレな三男坊。







クロヴィスはアリエスの美しい芝生の上に座る。ほんの少し前まで直にこうして座るなどと考えたこともなかった。太陽に暖められた芝生は気持ちがいいし、草や花に近づいたような気がする。
そう思っているから先日母の・・・ガブリエッラ皇妃の離宮の芝生にも腰を下ろしてみたのだが、これがまたチクチクとして座り心地がひどく悪かった。

それは向こうの芝生はただ美観の要素だけを求めるものであり、アリエスの芝生はこうして皆が転げ回って遊ぶことが前提であるからだ。

しかもほんの僅かの時間、腰を下ろしただけなのだが母の侍女達が瞬く間にすっ飛んできて涙ながらに訴えられた。
「おやめくださいませ!クロヴィス殿下ともあろうお方がそのように直に草の上にお座りになられるなどっ!」
お願いでございますから、とのしつこい訴えにクロヴィスも渋々腰を上げ、こちらへどうぞと案内された四阿から見る庭はすでに一枚の絵のよう。
ここに完成された絵があるのだ。どうしても自分で描こうなどと思えない。それなのに母はクロヴィスの為に整えているのだといつもまくし立てる。あの花はどこそこの国から取り寄せたのだとか、向こうの木はブリタニア国内でも珍しいものなのだといつまでも御託を並べ続ける。

しかし、クロヴィスは心動かされない。
そしてここで絵筆をとらないことが母は最も気に入らない。クロヴィスが何枚も描くのがアリエスの庭なのが更に気に入らない。

アリエスに植えられている花も木も国内ではどこでも目にするようなものばかり。お花が綺麗だね、と声を揃える小さな皇子と小さな皇女の為に庭師達が張り切って整えるその庭は、駆け回っても安全なように作られている。
寝転がっても座り込んでも誰からも何も言われない。
クロヴィスはこの庭で心行くまで風景を描く。大きな木を下から覗けば更に大きく感じるし、降り注ぐ光は茂る葉にさまざまな色彩を与える。
咲き乱れる花を見ては自然が生み出した美しさに感嘆する。
一日中こうして美しさを感じて過ごせたらどれほど幸せだろうか。

だが。

「お兄様?お仕事は済まされましたの?」
にこにこと微笑みを浮かべるのはユーフェミア。外側は甘く優しい姫君の妹の中身はやっぱりブリタニア。
「も、勿論だとも、ユフィ!この私に抜かりはない」
「まあ、そうですか?」
ちろ?と疑心丸だしのユフィの視線に兄としてはガツンと言うべきであろうが、反対にいつもこの妹に言われている身であるためなかなか強く出られない三男である。

あれも済んでいるし、そうそう向こうの仕事も終えている。
完璧だ。
しかし、本当はやり残されたものもある。だが、このお泊まり会が終わったあと、そう明後日に終わらせればいい。
よし、やはり抜かりはない。
今日はルルやナナリー、その他の子供達と過ごすのだ。
明るい光と子供の笑顔が最近のクロヴィスのテーマだ。

しかし、空気を読めない者はいる。主一筋の側近。クロヴィス殿下命のバトレー・アスプリウス将軍である。一部の人間にキューピー将軍と呼ばれていることは本人は知らない。
ダールトンが幼きリ姉妹のお世話係であったようにバトレーはクロヴィスのお世話係。
何が何でもクロヴィス命のバトレーではあるが、こちらはダールトンと違って機転が利かない。学者肌の優秀な将軍ではあるがもうちょっとなんとかなるといいのではあるのだが・・・。

という訳なので、それは違いますと首を横に振る。

「殿下!嘘はいけませんぞ。仕事は全て片づいてはおりません」

ダールトンであれば、あれはどうせ明後日でも間に合うのだから今は目を瞑ろう、と考えるのであろうが頭ガチガチのキューピーには無理である。

「まあ!お兄様・・・。お父様もお仕事が全て終わらないとこちらへの訪問の許可が下りませんのに・・・」
さも悲しげにうつむくユフィだが目が面白そうにキラキラしている。
「いや、だから残ってはいるが!明後日でも間に合うのだっ」
「全て終わったと仰ったのに・・・」
「・・・っ!」
子供達の前で嘘をつく訳にはいかない。
「やはり、全て終わらせてからいらした方がいいと思います」
にっこり笑った第三皇女のほうが上手であった。


「あねうえ、クロあにうえは?」
「ルル、お兄様はお仕事を一つ忘れていたのですって。終わったら来てくださるからそれまで私と遊びましょう?」
「うん!みんなあ、こんどはかくれんぼしよう!」
「「「わーーい」」」

「では私が鬼ですわ。皆さん、隠れてくださいね」
「「「はーーーーいっ」」」

すっかり人気者になっているユフィ。子供からの好感度もばっちり。残念ながら飾っておくようなお姫様ではないけれど、優しいし楽しい。
こうして邪魔者を排除して「殿下の優しいお姉様、ユーフェミア皇女殿下」は子供達の中にすっかり刷り込みされていくのであった。
こっそりガッツポーズのユフィを見て、騎士並びにラウンズが乾いた笑みを浮かべていたのは内緒である。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 44

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい