Petit Dieu 10.

帰ってきなさーい











今日は休むと告げれば電話の向こうでセシルが声を潜めた。
「その方がいいわ。こっちにもおかしな人達が来たから」
ため息をつきながら電話を切ったルルーシュは噴水の隅で雀と遊ぶ小さな神二人を眺める。

あの二人の故国をめちゃくちゃにしたのも皇帝だ。せっせと他国を侵略しまくり、やりたい放題。
「なにがしたかったんだろうな、じーさまは」
108人も嫁がいて、自分のばーさまは何番目だったんだろうか。それぞれに子供がいると仮定してそれが6代続くとなるととんでもない数の子孫が溢れている計算になる。
「……いや生物世界においてのロジスティック方程式が用いられるとしたら増加率は減少……って何考えてるんだ、オレは」
とりあえずだ、本当に血を引いているかもわからないこんな人間を捕まえて皇帝にまつりあげたところで、世界は認めることはない。それこそ何かの集い程度で終わってしまうのではないだろうか。本当に馬鹿馬鹿しいことこの上ない。そんな暇があるなら自分の力で這い上がればいいものを。

───神頼み、か。

ふと見れば蝶がカレンの頭の上に止まり、美しい羽をゆっくりと閉じては開いている。まるで大きなリボンでも結んでいるかのようだ。こんな都会の中でも自然は残っている。
この二人の社も残っているといい。
「そろそろ帰るか」
そう問えば、2人の小さな神はこくんと頷いた。ルルーシュはカレンを掌にのせると改めて、すまないと謝った。
「博物館の資料見学の許可をもらおうと思っていたんだ。明日大学で申請するから」
「ううん、大丈夫。今のうちに一人の時間も堪能しなくちゃ。ホント、手の掛かる亭主なの」
大変なのよ?と笑うカレンに合わせてスザクも笑いだし、同じようにルルーシュも吹き出す。ポケットの中に2人をおさめて歩きだしたルルーシュの頭の上で雀がちゅんと鳴いた。



スザク、スザク。

誰かの呼ぶ声に目を開けてみれば目の前に神楽耶がいる。
「あれ?」
神楽耶はにっこり笑いながら、スザクの胸倉をがしりと掴んだ。
「目が覚めてるなら、とっとと帰ってきてくれてもいいじゃないですか!」
「だって神楽耶、僕身体小さいし、剣も見つかってないんだよ!?」
「あーらホント、まあ小さいこと。ほほほほほほ」
胸倉を掴まれていたのに、今度は神楽耶の掌の上にちょんと乗せられる。そのまま神楽耶の顔がぐいと近づいた。おもわず仰け反ってしまっても仕方ないよね?
「いいから、早く戻りなさい。何をどうやってもいいから戻りなさい」
なんか無茶苦茶だな、いつもに増してとんでもないなあと眺めていると神楽耶がぐいーん、と大きく大きくなってスザクを睨みつけた。
「早く帰ってきなさーいっ!」
「うわああああああっ!」

跳ね起きた勢いで掛け布団代わりのタオルが落ちた。ルルーシュのベッドの枕の上だ。スザクの叫び声で同じように眠っていたカレンとルルーシュが目を覚ます。

「ごめん……」
ぺこりと謝るスザクだったが二人は別に構わないと答えた。どちらにしても夜は明けかけていたし、二度寝するには時間がない。
「ゆっくり出来ていいじゃないか」
ルルーシュが用意した朝食を前にするとスザクとカレンは揃って手を合わせていただきまーすと唱える。
「これおいしい!」
「オレンジジュースだ。気に入ったか?」」
うん、と頷いてカレンは嬉しそうにコップを手にしている。
こっぱずかしい事この上なかったのだが、先日、ドールハウス用の小物をいくつか購入してきた。さすがにカレンにありあわせの蓋やキャップで食事を出すのをルルーシュが戸惑ったのだ。スザクが贔屓だ!と叫んでいたが、フェミニストのルルーシュとしては女の子には優しくするのは当たり前。
まずショップに入るのに困り、「プレゼントなのでリボンかけてください」と自分用ではない!という主張はしっかりしてきたが通じているかどうかはわからない。帰宅後にネットショップという存在に気付いた時は愕然としたが、それでもカレンが嬉しそうに小さい手でコップを持っている姿に癒されたルルーシュである。

「神楽耶さまが出てきたの?」
「うん……怖かったよ。山みたいに大きくなって早く帰れって睨むんだ」
ちょっと想像してみたカレンもそれは怖いかもと呟く。
神楽耶は富士山の守護をしている木花之佐久夜姫(このはなのさくやひめ)の御杖代(みつえしろ)だ。簡単にいうと神様の杖代わりとなって働くのである。木花之佐久夜姫はとびきりの美人で良妻賢母、しかも秀峰富士山の主祭神。色んな方面でも大人気で大忙しなので神楽耶がお手伝いしていたのだ。
「……夢にまで出てこなくてもいいのに」
スザクの枢木神社はまさに富士山の麓にある。その為にしょっちゅう神楽耶は仕事を抜け出しては神社に遊びに来ていた。スザクの神社には狛犬がおらず、門番を司るものがいなかった為に追い出されることもない。それで毎日のように入り浸り状態。
「富士山の神なのか?……」
「佐久夜姫? うん、あとはね日本酒の祖神で……あっ! カレン、もしかしたら、」
「うん、あたしも思った! あのお酒って佐久夜姫様への献上品だったんじゃないの? 姫様が動いてあんたやあたしが目が覚めたのかも!」

日本の最高峰としての富士の神霊が目覚めた結果なのか?




*****
神話、古事記、日本書紀その他の説がごちゃまぜですので、詳しくは突っ込まないでください(笑)



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