「Serenade─夜曲」 10.

味方。











世界に色が戻ってきたような気がした、というのは大げさかもしれない。だが、周りの動向が分かってきた分、視界が広がったのは分かった。それまではただの「後継者争い」としか見ていなかった兄弟達の侵略や他国の支配についても目を向けると、今まで見ていなかったものが見えてきた。

皇帝は何か目的があって世界侵略を進めている。

「……現在、開発という名を持って支配が進められているのは日本です」
「そうしておいて発掘しているという訳か」
はい、とスザクは頷いた。今現在、シャルルが力を入れているのは神根島だ。無人の本当に小さな島だがそこには遺跡が残る。枢木家の本拠地だった場所だ。
「僕も一度連れられて行った事があります。洞窟の奥に遺跡がありました」
大きな石で造られた扉、洞窟の奥深くにまで作られた遺跡の数々。何かを意味しているような符号が散りばめられているそれは、見た者を圧倒するスケールだ。
「それを解読されたらお前はまずいんじゃないのか?」
「いえ、ダミーですから」
一拍、間をおいてルルーシュは笑い出した。


『王の器』だの、『次代の皇帝』だのと並べられた単語よりもルルーシュを一番驚かせたのは自分の味方にあのシュナイゼルがいるという事だった。ルルーシュには『厄介な相手』としか認識出来ていなかった人物だ。冷静さを失った様子で騎士を伴い現れた弟をシュナイゼルは笑みを浮かべて出迎えた。
「いつ来るかといささか待ちくたびれていたんだが、成程、君のそんな姿を見ることが出来たのなら、待つ時間も必要だったようだね」
ルルーシュ以上に慌てる様子など見せることはないであろうシュナイゼルは、いつも通りのあの笑みのままだ。そんな様子を見せられてはすんなり受け入れる事など出来ない。スザクから予め聞かされていなかったら引き返しているところだ。言われてみれば、先日の馬鹿な侯爵の件でもあそこでシュナイゼルが現れなかったら事件はもっと大きく厄介なものになっていただろう。他にも思い当たる節はいくらでもある。気付かなかった自分を腹立たしく感じるが、だからこそ周囲にも気づかれていないという事なのだろう。
「どうなるかと思っていたけれど騎士との信頼関係は築けているようで安心はしていたんだ。とにかくタイミングが悪かった。まさか次の日に……」
「兄上は母上の危険を察知していたのですか!」
そこでシュナイゼルはようやく表情を変えた。笑みがすうっと消えていったのだ。ルルーシュは初めて見る兄の顔に驚き、そして黙った。シュナイゼルは組んでいた足を下ろし、そんな弟を正面から見つめる。
「自分は暗殺されるだろうと、マリアンヌ様から聞かされていた。私だとて手を拱いて見ていただけではないよ、ルルーシュ。何度も回避してきていたんだ」
「……何度も?」
「そう。何度となく暗殺計画は実行に移され、その度に潰してきた。全ては君のために、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。次代の皇帝になる君のため」
ルルーシュは美しい紫水晶を大きく見開き、そしてすっと細めた。
「オレは兄上が皇帝になられるもの、と思っていました」
「私はそんなつもりは一切無いし、自分で公言したこともないんだけれどね」
再び足を組みなおして、シュナイゼルはいつもの顔に戻る。そして、とんでもない言葉を口にしたのだ。

「ルルーシュ、君はあの父上が本物であると思うかい?」


「あれはどういう意味なんだ?」
結局シュナイゼルとは満足に話も出来ぬままで終わってしまった。EUの方で何か問題が発生したらしく、退出を余儀なくされた。
聞きたいことも聞けず不完全燃焼の上、更に謎解きのような言葉まで投げつけて終了。
「まったく! 何をしに行ったのかさっぱりわからないじゃないか」
アリエス離宮の広い庭の一角に設けられている四阿だ。扉も窓もなく、柱だけのその開放的な場所でこんな話がされているとは誰も思わないだろう。石造りのベンチに2人で腰かけて、ルルーシュが本を膝の上で広げスザクが隣に腰かけている。
部屋の中で話す方が危ない、というのが2人の一致した意見であった。どこに盗聴器が仕掛けられているのか分からないのだ。今までは咲世子───2年ほど前にアリエスに入ってきたメイドであったがルルーシュは咲世子も用意された人間の一人であるとスザクから教えられたところだ───が徹底的に排除していたのだ。だが、これからは今まで以上に配慮しなくてはならない。特派が動き、ルルーシュがKMFを手にした事で、何等かの動きがあるはずだ。
「……殿下、あのやはり自分は隣に座るのは」
「オレの前に跪くとでもいうのか? そちらの方が不自然だろう。ほら、本を覗き込め」
「は、はい」
ルルーシュの広げる本を覗き込む、という姿勢で話をしているのは「読唇術」で読み取ろうとしている輩を想定してのことだ。先ほどわざとらしくメイドの一人が飲み物を運んできたが、間違いなく探りを入れにきたのに間違いない。情報を得る為に泳がせてある一人だとこれもスザクから聞いたばかり。
「それで、兄上とロイド達と咲世子は味方なんだな」
「はい」
周りは敵ばかりだと思っていた日々と、何という大きな違いであろうか。







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