ぼくのこころに きみがくる 19.

ジノセンセ試練の時?









このメンバーが知った、ということは商店街に知れ渡るということになる。とはいえ、好奇心旺盛でどこまでも首を突っ込みたい店主達もさすがにカレンに詳細を聞くのははばかれたようで、当然の如くジノがその標的となった。
「カレンちゃんはいい子よ~」
「はい、知ってます」
「泣かしたら承知しないぞ、センセ!」
「肝に銘じておきます」
という会話をどこの店とも繰り広げる羽目となる。全店舗制覇しなくてはならなくなったジノだったが、これというのも全部、
「スザクのせいだろーがっ!」
本人は「え? そう?」なんて笑っているが、スザクがちゃっかりルルーシュを恋人にしてしまったことがそもそもの始まりだとジノは思う。そして二人が───スザクとルルーシュがお互いの側にいる時に一番幸せそうにしている、ということでこちらもそうなって欲しいという願いも含まれていると……。
「そう思いたい……」
「ジノセンセ、何か言ったかい!? 本当にもうカレンちゃんはね」
「……おばちゃん、飯」
あらやだ忘れていたわ!と魚屋のおばさんは豪快にははははと笑いながらてんこ盛りの茶碗をジノに渡す。
「今日はルルくん、学校休みじゃないのかい?」
ルルーシュが休みの日に食事を作らないなんてことはまず無い。それは勿論スザク先生の食事を作るという使命に燃えているからなのだが、そうなるとそのままお相伴に預かるジノとアーニャだ。それが通例なのでジノがここでランチを食べているということは何かあったのかと推測できる訳である。
「んー今日は一人男の子預かっててさ、その子守」

ルルーシュは現在、クリニックの処置室で小さな男の子の相手をしていた。
「あのね、ママがこんど、へんしんベルトかってくれるんだよ」
「へえ、凄いなあ。正義の味方になるんだ」
「うん! それでね、ママをまもるの」
発熱した子供を抱えてきた若い母親は子供よりも自分の方が憔悴しきった顔をしていた。どうも様子が気になり「お母さん、大丈夫ですか? 疲れてますか?」とスザクが声をかけたのだが、そんな簡単な言葉の優しさにも餓えていたらしい母親はその場で号泣し始めた。すぐにノネットに連絡、対応してもらうことになり母親は相談所へ、子供はそのままここで預かった。周りに知り合いもおらず、それでも頑張っていた母の張りつめた糸はもう切れそうになっていたのだ。
アーニャは買ってきたアイスをスザクに差し出す。
「気づいて良かった」
「うん」
ルルーシュと一生懸命話をしている子供を見る。本当に子供は親に心配をかけさせまいとする。
───ルルーシュ、君と同じだね。

「スザク、痣とかは」
「無いよ。痣も怪我も無かった」
アーニャがほっとしたような顔をしている。スザクが児童福祉司として動き始めてから、相談所経由で子供がやってくることがある。半年ほど前に所長の扇自ら連れてきた子供はこちらが顔を顰めてしまうほど痛々しいなりだった。
『ここまで気付かなかったんです』
一番いいのは発生を予防できること、だ。その次に早期発見、早期対応。だが、その子にはどれも当てはまらなかった。最初不貞腐れていた子供は、自分の親以上に扇が泣いてくれることに、そしてここのクリニックで自分以上に痛そうな顔をして医師が診察してくれることに僅かずつ心を広げていき、最近になってようやく話をし始めてくれている。そこまで頑なにさせる環境を見抜けなかったのだと扇は何度も自分を責めていた。
こういったこともあって、スザクは子供を連れてくる親にも目を配る。保健所の方からもこちらでカバーできない部分の子育てサポートに手を貸してほしいと頼まれたこともあり、特に赤ちゃんを一人で抱え込んでいる若い母親には咲世子が診療後も話しかけを行っている。「地域で子育て」というポスターを貼ってみたら、待合室で待っているおばあちゃん達が子供連れの親に張り切って声を掛けてくれている。初めのうちは鬱陶しそうな様子の親達も予防接種等で何度も経験するうちにこういうものかと思うようで、話をするようになってきていた。
「なんだか、本当に児童福祉司って感じ」
「アーニャ……結構僕これ、長いんだけど」
「最初は肩書きだけだったくせに」
「う……」
確かにルルーシュとナナリーを親族でもないくせに引き取ろうとしたことがきっかけではあったけれど……。
「良かったと思ってるよ。こうしてお世話になった人達に貢献できるし」
「罪滅ぼし、なんて考えなくなった?」
「……そうだね、どうしてあんな事思っていたんだろう」
「スザクが馬鹿だから」
久しぶりの痛恨の一撃にスザクは返す言葉もなくアーニャを見ているとランチを終えたジノが戻ってきた。それと同時にノネットが子供の母親を連れて帰ってくる。
「ママ!」
嬉しそうな子供にしがみ付かれた母の顔はここを訪れたときよりも随分顔が明るく、落ち着いていた。有難うございますと何度も頭を下げる母に全員が手を振って笑顔で送り出した。

「助かりました」
「いえ」
お昼を食べ損ねた面々はルルーシュの作った親子丼を食べている。大好物のそれにジノがものすごく悔しがったが、それは仕方ないので放っておく。
「母子家庭ではないのですが、ご主人があまり家庭のことに構わない方のようですね」
「成程。それで一人で……」
こちらに越して日も浅く、慣れない土地で知り合いもおらず日中は子供と2人きりの生活だったようだ。児童館の存在を教え、母親達が集まるクラブもあるから参加してみるといいと教えると嬉しそうだったらしい。絵本の読み聞かせを子供が聞いている僅かな時間であっても、一人で何も考えずにいる時間が取れるだけでもいい。
ごちそうさま、と箸を置いたノネットが今度は嬉しそうにジノの方を振り返った。
「ジノ先生、ご婚約されたそうですね。カレンちゃんとはまた目が高い」
「おー有難うございます」
ノネットはにっこり笑顔を見せる。
「ミレイがお祝いしたいと言っていましたから、今度是非」
有難うございます、とへらへら笑っているジノだったが、スザクとルルーシュ、アーニャは半分同情、半分面白そうに眺めている。ミレイ先生からのお祝いなんて、きっとこの商店街のおばちゃん達の非でもないだろうとすぐに分かりそうなものなのに、どうしてジノは気付かないのか。
「それがジノ」
スザクとルルーシュは揃ってこくこく頷いた。

後日。みっちり言い渡されたらしいジノが大きくため息をついている事には気付かない振りをしていたスザクとアーニャである。特にスザクが聞いたら最後「お前のせいだ!」と騒ぐことになるであろうことは簡単に予測できてしまうからである。


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カレンちゃん、思い直すなら今だよ!(笑)

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