Blue Soda water Sky  後篇

Blue Soda water Sky  後篇








どこに行くのかと思っていたが、ルルーシュはただ街の中を歩くだけだ。
「留学の予定だけじゃないのか?」
「違うんだ。皇族の……誰でもいいから気に入られて、専任騎士になれって。同じ年頃の姫も多いし……」
そういうことかと、ルルーシュは頷く。ルルーシュはこういった話には詳しいらしく、スザクの父が日本の首相であるという事も知っていた。枢木と聞けば分かるだろうとルルーシュは事も無げにそう話すが、スザクは他国の首相なんてそんなに詳しくない。
「勉強しろよ、少年」
「してるよ!」
「学校の勉強だけじゃない。社会や世界の事にも目を向けろと言っているんだ。特にお前の立場ではこんな事は常識だろう。知識は無駄にはならない。戦う武器にもなるんだ」
今まで色んな大人たちに言われてきても煩いとしか思えなかった言葉が、ルルーシュの言葉だと素直に聞けた。
「しかし、専任騎士ときたか。お前専任騎士になるって分かっているのか? その皇族の為にこれから生きていくんだぞ?」
「……調べてびっくりしたんだ。気に入らない人でも守るんだよね? 僕には出来ないよ」
ブリタニア軍人ならば、それが最高の栄誉となるのだろうが、他国の人間では何が栄誉なんだということになる。

ルルーシュと話していると、自分の考えや、思っていたが言葉に言い表せなかったことなどが形になっていくことに、スザクは驚いている。思考を進める道筋をルルーシュがきちんと整えてくれるのだろう。そのルルーシュは裏路地から表に出るときは、相当気を使っている。最初は自分の為にしてくれているのかと思ったのだが、どうもそれだけではなさそうな感じがする。リヴァルが言っていた「訳あり」とは一体何であろうか。
「……ルルーシュ?」
「ちょっと待て。ったく、ジェレミアの奴は本当に煩いな」
いきなり立ち止まったルルーシュの視線を追えば、きょろきょろと辺りを見回している一人の男の姿が目に入る。
「ルルーシュを探してるの?」
「まあ、な。そういうことになる。オレとしては迷惑極まりないんだが」
見つからないようにと移動を開始したのだが、ジェレミアという名の男はすぐにこちらに気付いた。
「しまった! スザク、あっちだ!」
迷路のような裏路地であり、最初は戸惑ったスザクだったが、すぐにその構造は頭の中に入る。
「ルルーシュ、こっちの方がいいと思う。ほら、あの建物で向こうからは完全に死角に入るから、その間にあちらへ抜けた方がいいよ」
少し驚きの表情を見せたルルーシュは、いいだろうと答える。
「その戦術でやってみよう」

少し小高い場所にある公園で、スザクとルルーシュはまんまとジェレミアを撒くことが出来た成功を笑いながら祝った。途中でスザクを追いかけていた男たちとも出会ったのだが、それもすぐにかわすことが出来た。
「お前、なかなか出来るな。すぐに地形を把握したのか」
「目印を決めて、それを基準にしたんだ。坂が多いから、常に見下ろす位置で考えてみたんだけど」
「十分だ。短期間でこれだけ出来れば文句のつけようがない。子供扱いして悪かったな、スザク」
ふわりと微笑まれて、スザクは思わず下を向く。ルルーシュは同じ男で、しかも年上の大人で、それなのにこの胸がドキドキと跳ねる気持ちは何と表現したらいいのだろうか。
「でも、ルルーシュからのアドバイスがあったから……」
「それは必要なことだ。オレの方が道には詳しいのだから、どうしてもお前よりは知識は多い。だがそれがなくともお前は十分やっていたとオレは思う」
素晴らしい褒美でももらったようにスザクは笑い、ルルーシュもつられて笑った。
見上げる青空には白い雲がいくつも浮かんでいる。それは先ほど飲んだ、ブルーのソーダの泡のようだ。
「スザク。いいか、お前は自分というものをはっきり持っているし、自分の力量も知っている。だから、どこに行っても大丈夫だ。親の言いなりになる前に、それを利用してやれ。お前なら出来る」
「ルルー……」
少し屈んだルルーシュが近づいてきた、とそう認識した時には、唇が重ねられた後だった。
「ルルーシュ!」
「スザク、頑張れよ!」
突然のことに呆然としているスザクの前から、ルルーシュは笑いながら走り去っていく。
その後ろ姿はいつまでも瞼から消えない。

その消えないルルーシュの姿が今、スザクの目の前にある。
招待されたブリタニア宰相の新年のパーティーでのことだ。ルルーシュと別れて宿泊先に大人しく戻ったスザクは、着替えをさせられ有無を言わせずこのパーティーへと連れてこられた。
「枢木首相、私の弟のルルーシュです」
「初めまして、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです」
父と握手を交わしたルルーシュは、次にスザクに手を差し出す。昼間、一緒に逃げ回った際にも握った手が、再びスザクの前に差し出された。
「……枢木スザクです」
「よろしく、スザク」

大人たちから離れたスザクに、後ろから声がかかる。
「そういう格好も似合うじゃないか」
「……どうして黙ってたの?」
ルルーシュは白いシャツに黒のスラックスというラフな格好から、皇族の正装を身につけている。どちらもよく似合うものではあったが、マントも身につけているルルーシュは近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
ブリタニア帝国、第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。優秀ゆえに、宰相であるシュナイゼルの右腕としての地位を持つ。シュナイゼルに次いで、次代皇帝の椅子に近いと噂されている人物だ。
「隠すつもりはなかったんだ。偶然だったし、ここを逃げ出したがっているお前のことだ、オレの事を知れば、本当のスザクを出さなかっただろう?」
ルルーシュは妹達───ナナリーと異母妹のユーフェミアの騎士に、自分の息子を選ばせようと枢木首相が企てていることは知っていた。スザクがブリタニアの姫の専任騎士になるということは、これは『政略結婚』と捉えてもいい。
「冗談じゃないと思っていたところへ、お前が現れた。考え方も立ち居振る舞いも父親とは全く違うことがよく分かった」
「……僕を試したんだ……」
むす、と膨れた顔のスザクにルルーシュは素直にすまなかったと詫びた。結果的にはそういう事になってしまったのは間違いない。
「しかし、お前との作戦は楽しかった。その辺りの軍人より良かったぞ。そういった能力に長けているんだな。すぐに騎士として通用するだけのものを持っている」
ルルーシュはそう言うと、腰に下げていた剣を手に取りスザクの前に差し出した。
「さて、そこで相談だが、オレの騎士になる気はないか?」

頑として専任騎士を持とうとしなかったルルーシュ皇子が、他国の少年を騎士へと任命したという話はすぐに広まる。その真意を問いただそうと、住居であるアリエスを訪れても皇子とその騎士が館にいた試しがない。妹姫のナナリーは訪れる人々に笑って答える。
「お兄様は騎士さんとお散歩です」
2人は揃ってリヴァルの店のカウンターに並んで座っている。
「……こうやって抜け出していたんだね。それでジェレミア卿が探してたんだ……」
「抜け出すとは失礼な奴だな。民のことがわからずして、国政など出来るものか」
何もかも分かっているリヴァルは、皇宮にいてはわからない情報をルルーシュにカクテルとともに提供している。そしてスザクの前にもソーダのグラスが置かれていた。
「……子供じゃないのにな」
「まだまだ子供だ」
「子供じゃないってば!」
「それじゃ、オレを口説いてみろ」
あまりのセリフに狼狽えたスザクに、ルルーシュはにんまりと笑ってみせる。
「やっぱり子供だな。それぐらいで慌ててどうする」
「ずるいよ!」

騒ぐ2人の間でグラスの中では、シュワシュワと細かい泡が氷にぶつかり、はじけた。










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