レギュレータ regulator 84.

兄妹









最悪な男が、最悪な席についてしまった。

世界の思惑としてはこんなところであろう。ただでさえ世界超大国ブリタニアを相手にして勝てるはずもないのに、あんな天空要塞を用いられては、なすすべもない。
一発で都市一つ消滅可能なフレイヤを搭載し、しかも要塞全体を覆うプレイズ・ルミナスの為に、現在の通常兵器の攻撃が一切きかないときている。
「フレイヤは何発製造されているんだ?」
「わかりません……でも、出来る限りのことはします!」
ニーナはルルーシュにそう宣言し、必死で計算を繰り返す。

イカルガに到着したカレンとニーナを甲板で一番に出迎えてくれたのがルルーシュであった。最新気鋭のKMFを手みやげに戻ったことよりも、怪我や体調について一番に尋ねてくれるルルーシュの言葉はとても嬉しい。
「殿下、有り難うございます」
「オレの作戦ミスでカレンを酷い目にあわせたんだ。礼など……」
それでもカレンはルルーシュが自分の正体がバレることも厭わず、必ず助けると叫んでくれたことが一番支えになっていた。
ニーナは黒の騎士団のリーダーが麗しい皇子であることに頬を染め、フレイヤについての質問内容の濃さに、ルルーシュの頭の回転の早さを知り舌をまく。こちらが答えを窮するほどの質問が次から次へと繰り出される。そして、その質問に答えるニーナとの会話は、隣で聞いていたカレンが「呪文?」と思わず呟いてしまうほどだ。
ラクシャータに見せられた消滅映像に、ニーナは自分の論理の恐ろしさを痛感し「対フレイヤ」を急ぐ。
「ねえ、カレン。ルルーシュ殿下って頭いいし、凄いね」
「スザクの恋人よ」
ニーナの手から落ちるサンドイッチをカレンは何とか受け止めた。
「ススススススススザクの!?」
「そうよ。ついでに言うと、ルルーシュ殿下の兄上のゼロ殿下にゲンブは片思い中。ホントあの兄弟何とかしてほしいわ」
「……でもカレンだって、ヴァインベルグ卿と」
ちろっとニーナはカレンを見る。
なにしろ、相手はナイトオブラウンズ、ナイトオブスリーだ。あんなシーンを目の前で見せられたニーナとしては色々突っ込みたい。
「わーーーーっ、言わないで!」
賑やかしい研究所の片隅の光景にルルーシュも静かに笑みを浮かべたが、気になることは山積みになっている。
報告によるとカレンもニーナも抜け出すことに簡単に成功している。いくらラウンズの最高権利のパスワードを使用したと言っても、これはどうにもおかしいと感じていた。
「……不要になったということか」
使うだけ使っておいて、後はさっさと切り捨てる。ルルーシュには絶対に出来ないことだ。それゆえ、甘さが出るのかもしれないが、だからこそあの兄とは違った結末を得ることも出来るはず。欠点など存在しないようなシュナイゼルにも、何かある。
もう一度あの兄の行動パターンを考え直してみよう。
ルルーシュが立ち上がった時、ナオトが駆け込んでくる。
「ああ、ナオト、悪いがもう一度ダモクレスの軌道計算をしてみてくれないか? どうも高度が変わってきているような気がする……」
「殿下! ユーフェミア殿下が!」
手にした用紙を取り落とす。
「ユフィがどうかしたのか!?」
「目、目を、」
その単語のみで、ルルーシュは医療室へと走り出す。目を覚ましたと正しく判断したからだ。いつもの冷静な振る舞いは全く無く、そこにはただ妹の心配をする兄がいるだけだ。駆けだしていくルルーシュを見て、ナオトは呟く。
「殿下もお兄ちゃんなんだなあ。ゼロ殿下も相当だったけどな」
ここで最初に指揮を執っていたのはゼロだった。
「……殿下方は……お一人妹姫を亡くされてるから」
「あ、ああ。そっか……」
日本には大きな事件としては全く伝わってこなかった、マリアンヌ皇妃暗殺事件。一国のお后が殺されたのだから、もっと世間に知られても当たり前のはずなのに、簡単に処理されていたのは犯人が───シュナイゼルがそう処理していたからなのだろう。
「俺も冷や冷やだったんだが」
「うわ、はい……ごめんなさい」
兄ナオトに軽く睨まれて、カレンはぺこんと頭を下げる。
戻ってきてからも随分と怒られた。あんな風に捕らえられたのだからそれも当然だとは思うが、こう繰り返し怒られるようなこと……ではあるが(お兄ちゃんにしては厳しいなあ)とカレンが首を竦めると、ナオトが言いにくそうに向こうを見ながら、こほんと咳払いをする。
「……それで───ヴァインベルグ卿っていうのはどんなヤツなんだ」
「へっ!?」
ナオトの後ろにいた扇や藤堂が同時に吹き出す。
「仕方ないだろ!? 大事な妹なんだぞ!」
振り返って怒鳴るナオトは、完全に兄の顔。部屋中に笑いが広がっていく。


「ユフィ!!」
医療室の真ん中に据えられているベッドには、まだ何本かの管が付けられてはいたが、弱々しくも微笑むユーフェミアがそこにいた。
「……ルルーシュ……よかった」
「よかったのはこっちだ。本当に……良かった……」
数値も随分落ち着き、もう心配はいらないとのドクターの言葉に、ルルーシュは言葉もなく頭を下げる。
「……ユフィまで失うのかと思って……怖かった」
ユフィの細い指を手に取り、ルルーシュはキスをする。ゼロがしたように。その指にきゅっと力が入った。
「ユフィ?」
「……ルルーシュ」
何か言いたげなユフィの口元まで耳を近づけると、ユフィは一言。
「バカ」
「……………………すまない」








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