レギュレータ regulator 96.

その目が。











シャルル皇帝から譲位の話が出てから、ルルーシュが納得するまで3日間を要した。朝から晩まで、時には夜を徹して行われた話し合いにより、父と娘、息子たちはそこでとことん本音を出し合いぶつけ合い、今まで経験のない時間を過ごした。
3日間という、極めて短い時間で終わったのは、周囲全てが賛成している中で、反対しているのはルルーシュのみであったからだ。
「どうして、オレなんですか!?」
そう叫ぶ弟に対して、父も姉も兄も側近たちも答えは一つしか用意していない。だが、それが全てだ。
「ルルーシュが最もふさわしいから」
これ以上の理由があるだろうか。
いったん引き受けると決めた後のルルーシュの行動は素早く、姉と兄にこう宣言する。
「姉上とゼロには、とことんサポートしてもらいますから!」
こき使ってやる、と声には出さなかったものの、いつもは美しいとしか感じない紫水晶の瞳が、不敵な輝きに見えたのはきっと気のせいではないだろう。
皇帝就任前に、確固たる足場だけは固めておかねばならないとルルーシュは精力的に動き出す。当然それにあわせてゼロもコーネリアも動き、ブリタニアは着実に再生への道を進んでいく。
そして、スザクはルルーシュ皇帝唯一の騎士となることが決まった。
ラウンズは皇帝直属の騎士として存続が決まっている。
スザクはラウンズを越えるラウンズとして、ナイトオブゼロの称号を与えられることになったのだ。
とはいえ、現在もお互いの隣から離れることなくべったりくっついている2人なので、皆も「まあ、そうだよな」といったところだ。
正式発表前に、少しは整えたいと、新しい帝都の建設など、やるべきことが山のように積み重なっている。そんな日の午後、ナイトオブファイブ、枢木ゲンブがシャルル皇帝の居室を訪れていた。
「……お前はそれでいいのか」
穏やかに注がれる午後の光の中、シャルル皇帝の前に立つゲンブは静かに頷いた。
「はい」



「失礼しました」
ラウンズのマントがするりと扉から出てくる。その色をゼロが見間違うはずがなかった。ラウンズの制服に身を包み、エンジ色のマントを羽織るのは一人しかいない。通路の向こうからの視線に、ゲンブも振り向いた。
「ゼロ殿下」
背筋を伸ばし、大きな歩幅で歩み寄ってくる姿は以前と変わりがなかった。
「今、退院の報告を陛下にしたところです」
「もう大丈夫なのか?」
「はい。ルルーシュ殿下が皇帝になられるのですね」
「あ、ああ。本人を納得させるのに苦労した」
ゲンブはクスクスと笑っている。そして、スザクが得意げに報告してきたことをゼロに話すと、ゼロも同じように微笑む。
全く変わりのないゲンブの態度に、ゼロの方は苛立ちさえ覚え始めていた。それは日がな一日、いつも見てもぺったりくっついている弟たちの姿を見ているせいもあるのだろうか。ダールトンやグラストンナイツの苦労が実り、何となくまとまりそうな雰囲気になってきている姉とその騎士の姿も見ているからだろうか。
「一から全部作り直すのは大変ですよね」
「まっさらだから好き勝手にできるぞ」
「そうか、成程」
だが、ゼロがゲンブと話したいことはこんなことではないのだ。
ゲンブは『ゼロとだけの会話』という特別な内容ではなく、誰とでも通じるような会話を続けている。
ケガをして全部忘れてしまったのではないかと思われるような態度だ。
何度も『好きです』と囁いていたあのゲンブはどこに消えたのか。自分に向けられていた翠碧の瞳の色が、今はどこにも見あたらない。
もともとおかしな出会いをして、その後もとんでもない展開にはなっていたが、自分からも告げなければならない話がある。
「ゲン……」
「だあああああっ! もう!!」
ゲンブがいきなり壁に向かって拳をぶつけ始め、せっかく勇気をふりしぼって話かけようとしていたゼロは、目を白黒させるしかない。
「だから、殿下に会わない時間を狙って陛下のところに行ったのに!」
ああ、もう!と叫んでいるゲンブに、ゼロは俯く。
───どうしてオレのいない時間なんだ。
「いいですか、殿下! 俺はラクシャータさんからはげしい運動禁止されてるんですってば!」
「……?」
「殿下に会ったら、絶対に止まらなくなるから会わないようにしていたのに何で会うのかなあ!!」
「そんなこと、知るか!」
あっけにとられていたゼロだったが、そんな無茶苦茶なことを言われても困る!そっちがこちらの都合など知らないように、こっちだって知らないのだ。
「なんとかやり過ごそうとしてるのに、そんな顔して誘わないで下さい!」
「さ、誘ってなんか……」
誘っていない、とは言わせないとゲンブは更にゼロへと体を寄せると、そのまま片腕でゼロを抱き込んだ。
「……凄い目、してますよ殿下」
グローブをしたままのゲンブの親指が、ゼロの唇を撫で、僅かに開いたそれに、ゲンブは自分の唇を重ね合わせる。何度も繰り返し重なった後で、ゲンブはゼロの紅く濡れた唇に舌を這わせた。例えようもなく甘い。
「……オレは、どんな目をしているんだ……」
確認してみますか?と囁かれた言葉に、ゼロは小さく頷いた。











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