レギュレータ regulator 98.

明日。












備え付けられている小さな冷蔵庫から、ゲンブはボトルを取り出した。そしてベッドの上に座り込んでいるゼロに手渡す。
「……そういえば、兄上に薬飲まされそうになったんだ」
「はあっ!? あの金髪、絶対殴る」
「自白剤だというニュアンスだった」
ゲンブもゼロと同じようにベッドに上がると、ヘッドレストにもたれかかる。
「自白剤?」
ペットボトルの蓋にゼロが苦心しているのをみてゲンブは笑うと、自分のをひねってゼロに手渡す。それをしかめっ面のゼロが受け取った。
「力が入らないんだ! ったく、誰のせいだと」
「はい、俺です」

切れ切れのか細い悲鳴しか上げられなくなるまで、ゲンブはゼロを揺さぶっていた。

「それで、自白剤? 催淫剤とかじゃなくて?」
「……自白剤。オレの変化の理由を知りたいと言っていた」
何もかもがシュナイゼルの計画であったと知ったのは、あの時だ。自分が体を張っていたと思っていたことが、実は用意周到に全てお膳立てされたものであったと知った衝撃は、とんでもないものだった。
「……最後の最後に、オレは兄上のところに辿り着くはずだったらしい。だが、途中でオレはその道を外れた」
皇帝反逆の道を突き進むはずのゼロはいきなりそれを止める。
ゲンブに出会ったからだ。
「兄上にしてみれば自分の計画が台無しになったんだ。理由が知りたかったんだろう。薄々はお前達のことも感づいていたようだったが、尻尾を掴むことが出来ないままだったから」
日本国首相に息子達を差し出すように仕向けたのは、シュナイゼルであった。日本との開戦のきっかけを作ろうとして、反対に失敗する材料を自ら引き込むことになったのは、これはもう運命だったのだろう。崩壊はきっとあるべき姿であったのだ。
「……結局、あの金髪の計画は一つも上手くいかなかったんです。ヴァルトシュタイン卿が陛下を隠したことで、皇帝になり損ねた。フレイヤもルルーシュ殿下とスザクが無効にしてしまう。次から次へと案は出てたみたいだけど」
「兄上はいったい何がしたかったのだろう……。あのまま宰相を続けていけば、誰もが次期皇帝だと推しただろうに」
「陛下以外は、ですから。そこが問題だった」
誰もが認める才能を父親だけが認めなかった。
「……薬を飲まずに済んだのは父上の容態が悪くなったという緊急連絡が入ったからだ……」
もしかしたら、父は息子の危機を察知したのかもしれないとそう思う。確かめようにもシャルル皇帝はその辺りの記憶はほとんど残っていない為、無理だ。

しばらく黙ったままだったゼロが、寝転がっているゲンブの胸へと頭をすりよせる。
「……ゼロ」
「ん……」
「殿下」の言葉がゲンブから消えるまで、何度頂点を迎えたことだろう。だが、ゼロも「ゲンブが好きだ」と告白するにも同じくらいかかっていたから、似たようなものであろう。
ぴったりくっついて見上げれば、ゲンブの顔からはあの獰猛さは消え、精悍さだけが残っていた。
自分とは全く違う、綺麗な筋肉がついた滑らかな肌に頬を当てる。

この場所にいれば何も怖いことなどない。

きっとルルーシュもスザクに同じように安心を感じているだろう。そう考えれば、スザクに対して嫉妬心は沸き上がらなかった。大事な弟を任せられる唯一の人物だ。
ゲンブの顔が近づいて、口づけが与えられるのを、ゼロもそのまま受け取る。甘い熱が再び満ちてくるまでに時間は僅かしかかからなかった。


「ゲンブ!」
後ろから声がかかり、スザクへと振り向いた。
「医務室?」
「今行ってきた。ラクシャータさんが何も言わないのがかえって怖い……」
傷の様子を見て「ふうん?」と言ったきり、黙って処置するのは止めて欲しい。
あの日以来、ゼロはゲンブの部屋で眠っている。ルルーシュがそれに気付いて、自分もスザクと一緒がいいと言い張り、スザクがルルーシュの寝室へと移動した。おかげでジェレミアの機嫌がすこぶる悪い。
外を眺めれば新しい宮殿の基礎が出来つつあった。
「ゲンブ、明日……」
「うん。スザク、頼むな」
ゲンブはそう言って笑って右手を差し出す。握り返しながら、兄の手をそんな風に握ったことは初めてだなと、スザクは今その感触を思い出していた。
シャルル皇帝の会見だ。
後ろにラウンズが並んでいるが、いつものメンバーには2名足らない。
「次期皇帝にはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを指名する」
声量が戻りつつある父の声を聞きながらゼロは何度も確認している。
───いない。
「ラウンズはそのまま踏襲する。なお、ナイトオブファイブとナイトオブテンの2人は退任となった」
───退任?
その後のことは記憶にない。


「スザク! どういうことだ!」
ゼロに胸ぐらを掴まれたまま、スザクはただ目の前で怒りに満ちている皇子の顔を見ているしかない。
ゲンブはもういない。すでに日本へと帰国の途に就いている。部屋のベッドの上には綺麗に畳まれたラウンズの制服が乗っているだけだ。
「……殿下、ゲンブは騎士を務めることが不可能なんです」
スザクは小さく息を吸い込み、その一番の理由を述べた。
「銃創が僅かですが内臓にまで達していました。あの体ではマリスの負荷に耐えられないんです」








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