月なき夜にはあくなき夢を 15.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 15.」








部屋へと戻る最後の角で、スザクは一度立ち止まり確認してからゆっくりと歩いていく。音は完全に消す。だからドアを必死になって開けようと四苦八苦している連中には、全く気づかれることはない。
「……何してる?」
声をかけた瞬間のその驚きの表情といったら、人間というのはとんでもない顔と動きが出来るのだな、とスザクは冷静に眺める。スザクの目には、スローモーションのようにコマ送りされているように見えているから、余計にそういう感想になるのだろう。

中にはルルーシュがいる。

昼休みにカレンとジノに「マオを仕掛ける」という約束をした、それを実践に移すための準備をしているのだが、マオを引き寄せる為だとかなんとか理由をつけて、ルルーシュはスザクを自分へと絡めとった。午後の授業の間から必要以上に視線を送られて、スザクはため息をつきっぱなしであったし、当然周囲も色めきたつことに苛立ちもする。教師までつられているのだから、本当に困ったものだのだが、相手はルルーシュ。始末が悪いことに、スザクも勝てたためしは一度もない。おかげで、終業の合図とともに、部屋へとなだれ込む羽目になった。服を脱ぐことすらももどかしく、半分脱いだ状態のままでスザクはルルーシュを貪り尽くした。部屋に戻るまでの間にもルルーシュはしっかりマオに網を投げておいたおかげで、現在部屋の前で四苦八苦していた連中とは別に、こちらを伺うマオの姿をスザクは見つけていた。
カフェテリアにマオが姿を見せていたことにカレンもジノもひどく驚いていたな、と思い出す。
他人と上手くコミュニケーションをとることが出来ないという理由で、授業もほとんど免除されているような状態だというが、そもそもそれもおかしいではないか。おそらく、免除されるべき何かがマオにはあるのだ。
(どっちにしても、ホント、凄い目で見るなあ。でもルルーシュはあげないよ)
スザクは思い切り煽るかように、微笑んで部屋へとするりと入っていく。

「……スザクにしては珍しいな」
部屋の中ではくしゃくしゃのシーツの中で、座り込むルルーシュがいる。未だふるいつきたくなる空気はそのままに、タブレットを弄っていた。
「さっさと片づけたいのは、僕も同じだよ」
誰にも見せずに仕舞い込んでおきたい。学校へは行きたいなとは思っていたし、たまには外でもいいかと話を聞いたときは思ったが、ここまでルルーシュが危うい存在になるとは想像を越えている。スザクがルルーシュと館の外に出たのは、数えるほどしかない。その前の出会いの時には、ルルーシュはすでに力はほぼ無く、このまま消えゆくのではないかとそんな状態であった為に、それほど周りへ影響が無かった。確実に罠を張り巡らされた時はさすがにスザクも堕ちかけたが、言われてみればクラスも皆普通だったような気がする。
立ち上がるルルーシュに手を貸して、スザクも支度を手伝っていく。白いシャツ一枚羽織るだけの仕草にもそそられて、スザクは背中から肩を支えながら、そっと項に唇を落とした。
「こら、その気にさせるな」
「ルルーシュがそう言うの?」
スラックスに足を突っ込みながら、ルルーシュは振り返って笑う。
「お前相手では、オレはいつでも応戦可能だ。いつでも来い」
「そんな事言われたら、いますぐベッドにダイブしちゃうよ?」
ルルーシュは「艶っぽい」という表現以外思い浮かばない、その表情と動きでスザクへと体を向き直すと、そのまま唇を寄せてくる。
「……早く終わらせる。ここでは飢え死にしそうだ」
「僕もだ」
しばらく口付けを何度も交わしあう。その合間に連絡用の携帯仕様の機械が小さく何度も震えたが、あえて無視してキスを続ける。そのうちに、その震えが長く続くようになってきた。これ以上はまずいかと、2人とも名残惜しそうに互いの顔を眺める。
「……ルルーシュといるのに時間に追われるなんて、考えてもみなかったよ」
「すべてが野暮にしか感じないな。仕方ない、本気で取りかかるか」
シュン、と音を立てて2人で部屋を揃って出てくる。マオの執拗な視線の向こうに、苛々としたオーラを感じる。確認しなくとも、カレンであろう。連絡も無視していたのだ、相当怒っているに違いない。
「絶対にあの女はカルシウムが足りない」
美しく眉を顰めるルルーシュに、スザクが笑う。たったそれだけの事にさえ、嫉妬の視線が突き刺さることに、今度はスザクは苦笑を禁じ得ない。
「……ルルーシュ、やっぱりやり過ぎだったんじゃない?」
「罠は派手なほうがいいさ」


ルルーシュからの連絡を確認したシュナイゼルは、一瞬足下から這い上がってくる悪寒を感じて思わず振り返る。
「なんだ、シュナイゼル」
「いや、なんでもないよ。最近こういうことが多くてね」
そういえば、前にもこんなことを言っていたな、とC.C.は笑う。
「敵ばかり作るからだろう。自業自得だ」
「ルルーシュ様じゃないかしら? 怒り心頭のご様子だったし」
そう話すのは作成していたデータを持ってきたカノンだ。
確かに、いつもの凄い勢いで連絡を寄越すルルーシュは、今回のことには本気で怒っている様子ではあった。だが、C.C.はルルーシュではないだろう、とカノンに答えた。
「あの俺様坊やはどちらかというと、直接攻撃してくるぞ? そうだな、陰でこっそり計画をして知らぬ間に毒を盛るという感じでいくと……あ」
「……C.C.、お願いだから今思いついたお名前を口にしないでくれるかしら」
C.C.の頭の中にあるのは、何も知らないように微笑むナナリーである。当然、カノンが思い浮かべたのも同一人物。
そのナナリーは、あの手この手で長兄を口説き落として、兄ルルーシュにも送っているデータのすべてを自分たちにも送るよう指示を出していた。
「やっぱり、お庭が怪しいようです」
「迷ったふりして、暴く?」
ちょん、とピンクの髪を揺らしてそう物騒なアイディアを出すアーニャに、ナナリーも素敵!と手を叩く。
「明日、ランチの時にでもしてみましょう」
なんだか「大人」の事情があるようだが、そんなもの「子供」の私たちには関係ない。ナナリーもアーニャも思っていることは一つだ。

「お兄様とスザクさんにあんな顔をさせてシュナ兄様にはお仕置きです」

ナナリーとアーニャは向き合って立つと、互いの首筋へと手をあてる。途端に流れ込む互いの生気。本来はこの方法で循環させれば済むのだが、兄たちはそれでは足らないようだ。でも皆は、コトが済んだあとの2人が幸せそうに顔を寄せ合って眠っている姿を見ると、それだけで本当に安心出来るのだ。
ルルーシュとスザクにはいつも笑っていて欲しい。

お互いにしか分からない芳香を吸い込んで、ナナリーとアーニャは微笑みあうと腕をからませて部屋を出るため扉を開けた。
「ひゃあああ」
すっとんきょうな叫び声を上げて、カリーヌが逃げていく。たぶん、扉に引っ付いていたのだろう。ナナリー達が物音一つ立てずに扉に近づいたおかげで、腰を抜かさんばかりに驚いたようだ。
「……何?」
「さあ?」
すっかりクラスでも孤立しているようになったカリーヌだ。また文句でも言いに来たのだろうか。

でも、何かおかしい。





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