月なき夜にはあくなき夢を 17.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 17.」








カレンがカフェテリアに向かえば、ルルーシュとスザクは何食わぬ顔で座っている。
「ルルーシュ、はい」
隣にはスザクがいて、フォークに突き刺した苺をルルーシュの口に運んでおり、すでに見慣れた、でも決してその空気には慣れることのない風景がそこにあった。
「あんたたちっ!」
「どうした。何をカリカリしているんだ。お前やっぱりカルシウムが足りないぞ。食事にミルクを欠かすな」
「うっさいわね!」
さっきまで、目の前にいたのだ。確かに中庭で、目の前を歩いていたはずなのに、いつの間にか消え失せ、ずっとここにいます的な顔で座っていちゃいちゃしている。
「それで、首尾はどうだ。確認したんだろうな」
「……したわよ。見つけたわ」
こんなところに、とそう思う場所に隠し扉があった。パスコードも読みとりに成功した為、侵入は簡単だろう。

夢中で追いかけていた姿が忽然と消え去り、そこでようやくマオは自分が最重要機密の場所にまで来ていたことを知る。
ルルーシュの仕掛ける罠は残酷だ。自分の欲求を満たすだけの為に仕掛ける為、散々誘惑しておいて、用済みとなればその場で終わり。
いつもであれば、人影がいないか細心の注意を払ってここまで辿り着く秘密の場所であるはずなのに、いきなり断ち切られた為、本人まるで無意識のまま次の行動に移ったという訳だ。ただ、欲しかったものが消えたことにおかしいというそれだけの気持ちを残したまま。

「だから、一番厄介なのは終わったわ、一応礼だけは言っておく」
「へえ。常識は持ち合わせているようだな」
ルルーシュが鼻で笑い、こいつ、やっぱり腹立つ!とカレンは拳を握り、それをジノが宥める。だが、ルルーシュの隣に座るスザクは一人顔を曇らせた。
「おい、スザク?」
「……一番厄介なのはマオだ」
「だから、それが終わったじゃない」
違うとスザクは首を横に振り、ルルーシュを見つめる。

ルルーシュが罠を張り巡らせるとき。それはルルーシュにとって獲物を得るための『狩り』だ。
誘惑は所詮その為の餌でしかない。
自らに押し込ませたものから、快楽と共に生気を搾り取るだけの手段。何しろ、それがルルーシュにとっての生きる為の糧であったのだから。
そして、獲物側にしてみれば妖艶な姿形をしたルルーシュを思う存分抱くことが出来た。

「彼はまだ達成していない。君の罠にかかったままなんだ、放置は危険すぎるよ」
「そんなもの、オレがいなくなれば終わる」
ルルーシュにはもう『獲物』など必要ない。自らの半身であり、魂の片方をもつスザクが隣にいるからだ。
「すぐに片づけるさ」
スザクに向かって腕を伸ばせば、スザクはルルーシュの体を引き寄せ、横抱きの状態で膝の上に乗せる。いつもの屋敷での通常スタイルだ。
「お前心配しすぎだぞ?」
「でもルルーシュ、君の引力ってとんでもないんだ……」
艶やかな黒髪に見え隠れするこめかみに唇を押しつけると、スザクを誘う芳香が立ち上る。罠にかかれば、この細い肢体を押し倒すことしか頭になくなるのは、自らも経験済みだ。自分の意志とは関係なく、貪ろうと体が動く。
───これだけ長く罠にかかったままであると、マオはどうなるのか。
「……気が気じゃない」
「スザク以外に触れさせることもさせないさ」
ルルーシュは顔を傾けてキスを強請り、それにスザクは応える。
2人だけの空間が出来ているが、ここは学校である。
カフェテリアにいる生徒達がその光景に目を丸くしている中、可愛らしい声が「お兄様」と呼んだ。
「あら、元に戻りましたね。スザクさん、デザートとってきましょうか?」
「デザートはいいから、お茶おかわりもらってきてもらえる?」
くすくすと笑ってナナリーがスザクの空のカップを受け取る。そのスザクの向かいにアーニャが腰掛けた。そして、ナナリーと自分の分のトレイを並べる。ぽかんとしたままそれを眺めていたカレンだったが、そこでようやく口を聞く余裕が生まれたが、まず糾弾すべきことはこのバカップルだ。
「あんた達、何してるのよ!」
「煩い。ぎゃんぎゃん騒ぐな、別に何もしていない。家ではここがオレの座る場所だ」
そう言ってルルーシュはスザクの首へと腕を回す。邪魔するなとばかりに睨むルルーシュの目が、また酷く冷たいものに感じてカレンの勢いは僅かに怯んだ。
───だから、何なのよコイツら。

さっきのいきなり消えたことといい、罠だの、聞きたいことは山のようにあるというのに、聞くなという完全に拒絶する空気があって、聞けない。

お茶を運んできたナナリーが、スザクの前にカップをことんと置いた。有り難うとスザクはカップを口にする。
「ここのも悪くはないけど、やっぱりナナリーの煎れてくれたお茶がいいなあ」
膝の上のルルーシュがスザクにしなだれかかった状態であるにも関わらず、自然な様子でお茶を飲むことにジノが半ば呆れたように「慣れてるな」と感想を述べた。
「スザクとルルーシュはいつもこうだから」
「スザクさんはその格好でお食事も出来ますよね」
「食事!?」
「食事って言っても、ほらサンドイッチとか」
談笑しているジノ達を見ながらカレンだけは、何も言わずに座るルルーシュとスザクを見る。スザクの膝に座るルルーシュからの鋭い視線を感じながら。


カレンがスザクの存在に対し、更なる懸念を感じたのはその夜のことだった。
深夜、互いの情報をさらにすり合わせようと待ち合わせたジノとカレンは、スザクとルルーシュの部屋に侵入を試みた連中をスザクが竹刀で蹴散らしている場面に遭遇する。マオのおこぼれに与った連中がしょっちゅう覗きにくるのだ。勿論、スザクは本気ではなく半分脅しであるし、数回竹刀を振っただけで連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「しつこいよね」
そう言ってこちらを見て笑ったスザクではあったが、カレンはただ呆然と立ち尽くす。

スザクの剣の型が───祖父から伝わった「藤堂の型」だったのだ。それはその道場に通っている者でも、選ばれた人間しか知らないものだ。素人にはわからない、ちょっとした違いだが、カレンは知っている。
「……どうして、それを……」

あなたは一体何者なの!?


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