月なき夜にはあくなき夢を 20.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 20..」







カフェテリアは、朝食の食器の立てる音や、生徒達の話し声のざわめきが広がっている。朝の光の中でのいつもの光景ではあるが、その中の一角が朝の爽やかさとはかけ離れた空気を放っていた。

ルルーシュである。

本人としては『定位置』に座っているだけなのだが、その場所は言わずとしれたスザクの膝の上だ。昨夜から再開されたのだが、周囲がそれに慣れることなどない。スザクの膝に横抱きの状態で座り、腕を首に回して胸にしな垂れ掛る。
スザクはというと、ナナリーとアーニャが運んできてくれた食事をごく普通に食べていた。さすがにルルーシュを抱き上げたままではトレイは運べないし、ルルーシュを降ろすという事はスザクの選択肢にもなかった。そしてそれを当然の事だと分かっている妹二人は、スザクの好みそうな物を選んで持ってきたのだ。スザクは食事をしているが、ルルーシュはお茶を少し口にしただけだ。もともと食事自体、彼らには不要なものであり、嗜好品程度として口にする程度。大体、食事以上のものをスザクから摂取されているのだから、食事をするというところでいくと、こんなところで座っているよりも、抱き合っている方が割に合っている。
ナナリーとアーニャは、いつもの見慣れた様子に何の反応も示すことなく、スザクと食事をしていた。三人がごく普通の顔でいるので、余計に特異な場として映るのだろう。勿論、ナナリー達も食事は不要であるが、「只人」として人間社会にとけ込む際には必要な行為なのだ。
「それでは、もう回りくどいことをしないということですね」
薬の流通を探って、などと言っていたが全部無視だ。
「うん。大本を壊せばいいから。さっさと片づけようということになったんだ。ほら、ルルーシュも少し食べなくちゃ駄目だよ?」
スザクが差し出したフォークの先の物を、ルルーシュは仕方なさそうに唇で挟んで抜き取る。歯触りはサクサクとしてリンゴのようだが、よく分からない。
「……? 何だこれは……やっぱり口にするなら咲世子のものに限るな」
「僕も咲世子さんのご飯が恋しいよ」
ナナリーとアーニャも同意するように頷いたのだが、次には揃って頬を膨らませた。
「私たちは何もしてはいけないんですね?」
「……せっかく庭を暴こうと思ってたのに」
二人で張り切って計画を立てていたのにとお冠な妹達に、兄二人は苦笑するしかない。
「ナナリーとアーニャには、守ってもらわなくてはいけないからな」
「無関係の人を巻き込む訳にはいかないからね」
現在、シュナイゼルは身の回りの整理中のはずだ。とはいえいつもの終わりを少々早めただけに過ぎないので、急であることを除けば変わりない。全部片づき次第、C.C.と神楽耶も一緒にこちらに向かう手はずになっている。

相手はV.V.。念のみとはいえ、種族一の力を持っていたのだ。完全に消滅、封印させるのは、ルルーシュやスザクだけではなく、C.C.達の力も必要だった。そのC.C.や神楽耶と共に、結界を張るのがナナリーとアーニャだ。

「出来れば……神楽耶は安全な場所にいてほしいんだけどね」
「神楽耶の方こそ、そう思っているだろうな」
原因が分かった時、神楽耶は反狂乱になって二人に戻れと叫んでいた。残って片づけると告げたときには、電話越しではあったが、かなり怒られた。屋敷に戻ったら、お説教をくらうことになるだろうが、その屋敷に戻るために、全てを片づけなくてはならないのだ。
「大丈夫です、神楽耶ちゃんは私たちが守ってますから」
「スザクとルルーシュは自分達のことをして」
妹二人に、兄たちは静かに頷いた。

「でも……厄介な相手だ……」
「ったく、だから最初から壊してしまえばいいと言っているのに」
ルルーシュはスザクの耳の後ろに唇を押し当てる。トクンと脈打つ度に流れ込む生気の芳香に笑みを浮かべ、そのまま視線を伸ばせば、例のマオとかいう男がこちらを睨んでいるのが見えた。視線を合わせると、体ごと前につんのめりそうな様子にルルーシュは半分呆れながら眺めている。
「……絶対にテクなんて無いな、アイツ……早漏の気もあるんじゃないか?」
「ルルーシュ」
自身の片翼に咎められて、ルルーシュは小さく笑うと頬を擦り寄せた。
「あいつともこれでおさらばだ。お前の心配もなくなるから、存分にオレに集中出来るぞ?」
「それは僕の台詞だよ。彼女ともこれで終わる」
目線を上げれば、カフェテリアの反対側から、「いいかげんにしろ!」という顔でカレンが睨みつけている。
「ああ……もう関係ないな。向こうの都合など構っていられるか」
ルルーシュはアメジストの瞳を細くして、もう一度カレンに視線を送れば、相手が僅かに怯んだのが見て取れた。
(オレのスザクに触れるなど、絶対に許さない)
V.V.の念も絡んでいたとはいえ、スザクの心の奥底に触れたという点において、ルルーシュはカレンを許すことは出来なかった。
「ナナリー、アーニャ。おそらく今晩には始まると思う。準備などしておくように」
「はいお兄様」
「はい」



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