月なき夜にはあくなき夢を 25.

君の罪は僕の罰 第二章 「月なき夜にはあくなき夢を 25.」






驚愕に目を見開いていた男は、慌てて拳を構えスザクへと向かっていく。だが、スザクはあまりにも軽すぎる身のこなしでまるで子供の拳を避けるが如くかわすと、無造作に手首を掴んだ。そのままぐいっと後ろへと投げ飛ばす。言っておくが、相手はかなりガタイのいい体の持ち主だ。その体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。ジノはその技にぽかんとしているだけだが、カレンはその様子を眺めているルルーシュの表情の方にぞっとしたものを感じる。

何の感情もみえない美貌。

その中でカレンにも見覚えのある冷たい瞳が、底冷えするほどの怒りを宿していることが分かる。

「行くぞ、スザク」
「うん」
暗証番号を打ち込む必要のあるはずの扉が立ちふさがったが、ルルーシュとスザクが同時に右腕をあげて掌を扉に向かいあう。
何をしているんだと聞く間もなかった。
二人の背に白い翼が現れ、次に扉は簡単にぱたんと前に倒れた───ように見えたのだが、実際はドアの枠から完全に扉部分だけが抜け落ちていた。翼はもう見えず、幻覚であったのかと思うほどだ。
「……なに……?」
当然、内部から人が駆けつけてくる。それを視線の端でとらえたルルーシュがスザクに扉を立てろ、と指示をする。
「OK」
倒れたままの扉の下端を踵で踏み込めば、反動によって扉が一瞬立った状態になる。
「今だ」
合図と共に、体を反転させたスザクが扉を蹴り飛ばすと通路の奥まで吹っ飛んでいき、ついでにこちらに向かっていた人間達をも吹き飛んだ。
「行くぞ」
何をしているという顔のルルーシュにカレンは叫ぶしかない。
「あんた達、一体何なの!?」
「説明している時間はない」
そうは言っても、次から次へと信じられないものを見せられて説明無しでは、こちらだって納得がいかない。だいたい、マオを追いかけている時も急に消えて、人として考えられない動きを見せていたのだ。ぎゃんぎゃん喚くカレンに煩いと顔をしかめたルルーシュは、仕方なさそうにこう言った。
「お前達にわかりやすい言葉で言い表せば、ヴァンパイアが近い」
「ヴァン……!?」
とてもではないが予想外の説明が出てきて思わず後ずさるカレンに、ルルーシュは笑みを深くする。
「安心しろ。オレ達は血など吸わない。オレにはスザクがいればいい。だいたいお前みたいな不味そうな奴相手にするか」
「な、失礼なヤツね!」
「なんだ、襲わない方が失礼になるのか?」
「そういうことじゃないわよ! え、それじゃあんた……も?」
「僕は、」
スザクが答えようとしたその時、再度爆発音が響きわたる。ここではなく、研究所の方だ。そちらの方を見やったルルーシュの目がさらに細められる。
「……データごと消すつもりらしいな。バカ兄にしては行動が早まった」
「兄さん達もナナリーとアーニャの心配をしているんだよ」
とにかく二人をこの手に取り戻さねばならない。ただ、気配は先ほどよりもずっとはっきりしている為、二人の存在が無事なことは確かだ。
「カレンとジノは、研究所に向かってよ。二人は僕達で助け出すから」
「何言っているのよ! あの子達が攫われたのはわたしの責任でもあるのよ!」
「足手まといだ」
「何ですって!?」

ここでルルーシュとスザクの言うとおり、カレンがジノと研究所に向かっていたのならば何か違ったのかもしれない。カレンは、スザクとジノと共にマオに攫われたルルーシュのところへ急ぎながら、何度も後悔の念に駆られていた。
だが、今はまだ気づいてさえいなかった。

「言い争っていても時間の無駄になるだけだ。いい、俺が向かう。君の兄上とは面識もあるし、大丈夫だろう」
ジノ一人が研究所に向かい、ルルーシュとスザク、そしてカレンの三人が奥へと走っていく。色々聞きたいことは山のようにあるのに、この2人の空気から完全に拒絶されていることが分かるために、カレンも言い出せない。

───人間、じゃない、の?

思い返せばおかしな点は多かったし、カレンもルルーシュのことを何度も「人間じゃないみたいだ」と考えた。だが、それをこんな風にあっさり言われてしまうと、嘘にしか聞こえないのだ。
「ねえ、無事ってわかる……ものなの?」
ようやく口にしたのは、相手の事ではなく攫われた妹たちの心配だ。
「分かるよ。波動を感じるんだ」
「……波動……」
ルルーシュはともかくとして、スザクは完全に変化を遂げた後で色々な物に気づくようになっている。契った後では風さえも見えると、シュナイゼルの片翼であるカノンから何度も聞いていた。
「無事は分かるが……早くしないと拙いな」
スザクが次々と現れる男達を蹴り飛ばしていき、時にはルルーシュが片手を上げるだけでいきなり男が吹き飛ばされるのを横目で眺めながら、カレンは走っていくしかない。その奥で、再び爆発音が響きわたった。
「ちょっとっ!」
奥は二人の妹たちがいる。
「……間に合わなかったか……?」





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