こんな夜 その後

「こんな夜」のその後のお話








「先の話」





 いったいどのくらいの時間、我を忘れて互いをむさぼりあっていたのだろう。
 途中、スザクに抱き上げられて寝室に移動しても途切れることなく続いていた嵐のような熱が過ぎ去り、ルルーシュはくたりとその身体を打ち伏した。
 始めに着ていた衣装はひどい有様になっていた。翡翠の首飾りは隣の部屋の長椅子のあたりに落ちているはずだ。豪華な刺繍は今はルルーシュの白い胸の縁飾りのように肌けられ、裾はしわくちゃであちこちに淫らな汚れが飛んでしまっている。
 ただし、今のルルーシュはそんなこと気にもしておらず、ふわふわとした心地よさに漂うばかりだ。
「……スザク」
「ん? どうかした?」
 伸ばした手にスザクが指を絡めてくる。もう片方の手でルルーシュの汗で張り付く髪をかきあげ、耳元に唇が押しつけられた。
「……あ」
「……甘い匂いがする」
「お前もだ」
 お互いにしかわからない香り。普段でもそれは惹きつけて止まないのだが、こうやって抱き合うとそれはさらに強くなる。抱き合うことで互いの生気に満たされる。決して言葉の比喩ではなく、本当に身も心も溶け合い、一つとなるのだ。こんなことはお互いでしかありえない。
 ちゅと小さな音を立てて、口付けがスザクからルルーシュへ繰り返し与えられる。
 目尻に、頬に、唇に。持ち上げた指の先に、手首の内側、青く透けて見える静脈の上に。
 もうそれだけでスザクから溢れんばかりの想いが流れ込んでくるのだ。幸せすぎるこの想いをルルーシュからもスザクに応えたい。
 手を伸ばせば全てを理解しているスザクの顔が近づき、その頬にルルーシュの手が触れる。唇を寄せ、重ね合わせる。満ち足りた充足感が指先から髪の先まで残り、それは優しくルルーシュを包み込んだ。
 何度かキスを繰り返したところで、キシ、と絹の鳴る音にルルーシュは自分の身体にまとわりついたままの衣装をようやく思い至った。スザクはといえば、すっかり脱いでしまっている。
「お前はいつ脱いだんだ?」
「……んー、いつだっけ? 無意識に脱いでるからね」
 動きにくいと感じた時点で脱ぎ捨てた。大理石のモザイクに一つの模様として残されているはずだ。
「オレのも脱がせろ」
「ごめんね、だってこれルルーシュにすごく似合うし……」
 そこで一旦言葉を止めたスザクに、ルルーシュが「理由を全て述べよ」と首にしがみついた。
「少し窮屈なせいで動きが制限されて身体をやたらひねってたんだよ。それがまた色っぽくて」
 見ていて堪らなかったから、と笑顔で答えられてはルルーシュもそうかとしか言いようがない。スザクはルルーシュがよければそれでいいという考えがあるが、実のところルルーシュもスザクがよければそれでいいのである。
 結構な手間のかかっているだろう刺繍の施された衣装であったゆえに、この惨状はちょっと申し訳ない気分にはなってしまうが、おそらくはここでは想定内なはずだ。
 とりあえずはこの衣装を脱ぎたい。ため息をつきつつ、いまだ倦怠感の残る身体を起こしてみる。半分脱ぎかけ状態とはいえ、全てを脱ぐためにはいくつかあるホックを外さねばならない。これが無理矢理ひねったりした為におかしなことになっているのだ。指一本動かすのも億劫な気分のルルーシュにはかなり面倒ではある。
「貸してごらんよ」
 見かねたであろうスザクからの申し出ではあったが、この脱がす行為だけで言葉にもならない悩ましい時間が流れていく。
 むき出しの肩に、うなじに、小さく口付けを落しつつ、長い指がホックを一つずつ外していく。その指をルルーシュはスザクの胸に凭れながら眺めているのだが、キシと鳴る絹の音に燃え残っていた熱が再びぶりかえしてきているのがわかる。腕を抜いて、スザクはするりとルルーシュの足から衣装を脱がせた。
 肩口に顔を埋めるようにして背後から抱き締められ、耳元に命じる声を聞く。
「さて次は? 何をして欲しい? ルルーシュのお望みのままに」
「ん……わかってるだろう」
 ほっそりとした腕と淫らな裸体でスザクにしなしなと絡みつく。スザクに抱えられて向かうのは浴室だ。

 夜は深い色。明け切るまではまだまだ二人きりの時間が続く。







ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 8

ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
かわいい かわいい かわいい