The biter is bit

The biter is bit












 トイレの個室に駆け込んでスザクは頭を抱え込む。
──あんなの反則だろ!


「修行だと思って行ってこい」
 自分の父親だが、尊敬は出来かねる。そんな父親の跡は継ぎたくないがそれほど世間は甘くない。
「あそこの社長はなかなかのやり手だ。勉強をさせると言ってある。技でも盗んでくるんだな」
 こういう事を口に出すところが苦手な部分だ。それに加え息子の考えも薄々気付いているのだろう。うまく丸め込まれた感も否めないが、それ相応のものを出せなければ、認めて貰うことすらも無理な話だというのはスザクにも分かる。
「枢木スザクです。よろしくお願いします」
 系列会社への出向として移動した先は敏腕社長シュナイゼルがいる貿易会社だ。
(どうせボンボンだと思っているだろうな。あまり重要なことも頼んでこないよね)
 父親の顔を潰すことさえしなければ何とかなるだろう。キャリア育成という名目での出向扱い、向こうが油断しないか、それをうまく使えないかと考えていたスザクの前に現れたのはシュナイゼルの異母弟だというルルーシュ・ランペルージだった。

「あっ……」
 思わず漏れてしまった声に顔が真っ赤になる。絶対に声を出すものかと思っていたところへの不意打ちは酷すぎる。グッと睨んだところでその相手──ルルーシュはスザクの顔を見てにやりと笑うだけだ。
「なかなか頑張るな」
 第一印象の儚げに見えたのは幻であった。メディアなどでも有名なシュナイゼルも美丈夫であったが、ルルーシュはまた違う方向での美形であった。白い肌に美しい黒髪。それに加えて細い身体、細い腰、細い指。
──絶対に落とす。
 一目見てスザクはそう誓った。そしてこの想定以上に中核に近く、それでいて初で恋愛などに鈍そうなルルーシュを落としてやろうとそうひらめいたのだ。伊達にタラシと言われていた訳ではない。優しく微笑んで、ちょっと甘く囁いてみればそれで女の子は頬を染めていたその技を、まだ十七歳だというルルーシュに仕込んでみた。こちらの想定通り、頬を赤らめていたルルーシュをもう少し落としてやろうと資料室にひっぱりこんだところで、壁に押しつけられたのはスザクの方だった。
 細い腕を傷つけそうで怯んだのがまずかった。
 先に唇を押しつけられ、絡めようとした舌を先に絡め取られ、スーツのスラックスの上からしなやかな指にまさぐられる。
「ル、っ」
「動くなよ?」
 ヒンヤリと感じる程の低い声。しかも巧みな指使いにスザクもどうしようもないほどに追いつめられる。
(いや、これマズい!)
 必死に耐え抜いていると、感心したように「へえ」とルルーシュが笑う。
「ここまで耐えられているのは初めてだな」
「……っ」
「枢木が黙って入ってくるとはこちらも思っていないさ。どうしようかと思っていたが、このオレで釣れるとは」
 形を確かめるように指先が動き、スザクの目の前でピンクの舌が唇を舐める。
(……ダメ、かも……)
 必死で耐えて耐え抜いていると、通路に人の気配がある。
「……残念、タイムリミットだ」
 ルルーシュが手を離し、スザクは思い切り息を吐き出した。
(……なんとか、なった……)
 だが次の瞬間、ルルーシュの腕がそっとスザクの首に回った。

「……なかなかいいな、これ。今度は直に楽しませろ」

 それだけ言うと、ルルーシュはクスと笑いながら部屋を出て行く。その後ろからスザクはトイレへと走り抜けることになったのだ。
「くそっ、あれはない!」
 余りに細い体を押しつけられて、このスザクが動けなかったのだ。マズい、これは完全にマズい。色々ばれているのもマズいが、まとわりつく甘い香りが消えないのもマズい。
「……落とされたのは僕か」
 スザクは再び大きくため息をつくが、次第に楽しくなってきた自分に笑い出す。
「いいなあ、完全に惚れた。今度はもうちょっと考えよう」

 実は厄介な狼に手を出したとルルーシュが後悔するのはもう少し後。







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