Au milieu du monde

あけましておめでとうございます




「L.L.危ない!」
 寸でのところでL.L.への攻撃を一人の青年が防いだ。まさか避けられるとは思っていなかった。僕は驚愕しながら立ち上がろうとしたが――恥ずかしいことに腰が抜けてしまって立てないのだ。
「……なんで、絶対に成功したはずなのに」
「絶対なんて存在しない」
 ふわりとマントを翻し、L.L.を庇うように立つ青年が顔を上げた。優しげな面立ちの中で鋭い瞳の色がこちらを睨み返している。それが背筋がぞっとするような怖さだ。
「……K.K.、大丈夫だ」
 L.L.の呼びかけにその瞳がぱっと柔らかくなるのがわかった。
「本当に? 大丈夫?」
 手を取って立ち上がらせる仕草はどこかの絵の中の世界のようだ。僕は座り込んだままその情景を見ているしかないのだ。
「おいL.L.大丈夫なのか」
 2人の後ろからスカートを翻して少女が現れる。
「大丈夫だ」
 L.L.が少女に向かって笑い、上半身ごと僕へと振り返った。


 C.C.はやれやれと羽織っていたショールをソファに投げ捨てると同時に座り込んだ。
「ギアスのかけらは無事に抜き取ったぞ」
「あれを無事と言えるかどうかはわからないな」
 L.L.――ルルーシュは着ていた衣装はとっくに脱いで、今は荷造り真っ最中だ。その手伝いをしていたK.K.――スザクはずっと渋面を作ったままだった。
「もう少し穏便な抜き取り方ってないのかなあ」
「あるわけないだろう? その人間が望んだ形で現れるものを、簡単に手渡してくれるはずがない」

 今回のギアスのかけらを持っていたのは一人の母親だった。触れた人間の心の声が聞こえるようになった母。占いが当たるとの評判はどんどん広がり、他愛のない恋占いが人の生死までをも変えていく。それを恐ろしいと泣き叫ぶ心を彼女は無くしてしまったのだ。一歩手前で止めることもなく、高笑いしながら他人の運命を弄ぶ。恨まれ、その死が自身に向かってきてようやく気付いたが、時遅し。

「他人の心が読めるっていうのは……難しいね」
 心当たりのある人物を3人が思い描いているのは聞くまでもないだろう。C.C.はそっとソファの上で膝を抱え込む。
「お前に攻撃したのは息子か」
「ああ。警告した際に後ろにいた。母親の変貌にオレが関係していると思ったんだろう」
 細々と暮らしていたのに突然生活が変化していく。なによりも母の変わりように息子も困惑していたに違いない。母を変えたのはあの黒髪の男だと思いこんでも仕方ないのないシチュエーションだった。
「……というかルルーシュ、そう仕向けてたでしょ?」
「…………まあな」
 復讐だけに翻弄されるような人生など過ごして欲しくない――自分たちのような存在を生んではいけないとそう願っていた自分たちであるのだから。
「よし、出来た。帰るぞ」
 手際よく詰められた鞄を手に立ち上がったルルーシュからスザクがさりげなく鞄を奪い取る。
「おいスザク、そっちの小さい方を寄越せ」
 そしてC.C.がスザクの持っている手から鞄を受け取る。
「お前たち!」
「いいからいいから」
「ルルーシュはさっさとチェックアウトしてこい。仕事は終わりだ」
 結局手ぶらとなり、ぶつぶつ言いながら歩くルルーシュの後ろをスザクとC.C.が笑いながら追いかけた。

 L.L.が振り返った時、攻撃をしかけたはずの少年からは覇気が全て消えていた。どうにもならないことを瞬時に理解したのだろう。
「お、お前が、いる、から!」
 おそらくはなんとか言葉を投げつけようとしてひねり出したであろうそれに、L.L.は冷静に言葉を返していた。
「オレがいるからどうなんだ。いいか、お前の世界の中心はお前なんだ、オレは関係ない」
 呆然と立ち尽くした少年に対し、こんどは振り返ることもなくL.L.は歩く。
 
 チェックアウトはルームキーを返して終わりだ。ホテルの玄関に出てきたルルーシュの両側からスザクとC.C.がそれぞれ腕を組んでくる。
「っ、お前たちは何をしているんだ! 3人で並んで歩いたら迷惑だろう!」
「大丈夫だよ、あんまり人も歩いてないし」
 C.C.が絡ませていた腕をほどいて、今度は指をからませ、いわゆる恋人つなぎをする。
「あーっ、C.C.それはずるいよ!」
 すかさずスザクもルルーシュの右手に指を絡ませる。
「……まったくお前たちは何をしているんだ……」
 ため息をつき、同じ言葉を繰り返しつつもふりほどかないのはルルーシュの優しさだろう。そんなルルーシュを真ん中にスザクとC.C.は顔を見合わせて笑いあう。
 間違いなく自分たちの世界の中心はルルーシュなのだから。
「ほら、早く帰って次の作戦だ。ギアスのかけらの情報はまだあるんだぞ!」
「「はーい」」



***
あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。


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